今回は、多電源回路の問題を解くときに非常に便利な「重ね合わせの原理」について解説していきます。

「重ね合わせの原理」をマスターすれば、多電源回路の問題を直感的かつ楽に解くことができる。また、「重ね合わせの原理」は高校物理の教科書には載っていないが、大学入試の問題でもこれを使うと楽に解ける問題が数多く存在する。ぜひとも、この記事を読んで、「重ね合わせの原理」を理解してくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

重ね合わせの原理とは?

image by PIXTA / 41643153

2つ以上の電源(電池)を含む電気回路のことを多電源回路といいます。多電源回路の問題はキルヒホッフの法則を使えば解くことができますね。しかし、キルヒホッフの法則を使って解く場合、必ず連立方程式の計算をしなければならないのですが、この連立方程式の計算が煩雑になってしまうことが多いのです。同じ経験をされた方はきっと共感してくださることでしょう。

そのようなときに便利なのが、重ね合わせの原理という計算方法です。一般に多電源回路を流れる電流は、それぞれの電源が単独で存在するときに流れる電流の合計値であるというものが重ね合わせの原理になります。この方法は直感的でわかりやすいと同時に、方程式の計算を一度もしなくてもよいのでなのです。

多電源回路の問題は大学入試でも、頻繁に出題されます。ところが、高校物理の教科書にはキルヒホッフの法則についての説明はあっても、重ね合わせの原理についての説明はありません。したがって、多くの高校生は多電源回路の問題をキルヒホッフの法則を使って解くのです。

もしあなたが受験生で、重ね合わせの原理を自由自在に扱えたら、他の受験生よりも一歩リードできること間違いありません。

「多電源回路」の問題を解いてみよう!

「多電源回路」の問題を解いてみよう!

image by Study-Z編集部

では、早速問題です!「上の回路図において、各抵抗に流れている電流を求めよ」という問題になります。この回路は、2つの電源が含まれていますので、多電源回路です。ということは、重ね合わせの原理を使って問題を解くことができますね!それでは、解説をはじめていきます。

\次のページで「任意の電源を1つ残し、他の電源はなかったことにする」を解説!/

#1 任意の電源を1つ残し、他の電源はなかったことにする

任意の電源を1つ残し、他の電源はなかったことにする

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まず、任意の電源を1つ残し、他の電源はなかったことにします。ここでは、2Vの電源を残し、4Vの電源はなかったことにしましょう。この状態で各抵抗に流れている電流を求めます。この回路全体の抵抗値を考えてみましょう。3Ωの抵抗と4Ωの抵抗は並列接続されているので、これらは

(3×4)/(3+4)=12/7Ω

の抵抗で置き換えることができます。さらに、今置き換えた12/7Ω抵抗と2Ωの抵抗は直列接続されているので、これらは

2+12/7=26/7Ω

の抵抗で置き換えることができるのです。したがって、回路全体の抵抗値は26/7Ωだとわかります。次に、2Ωの抵抗に流れる電流を考えましょう。オームの法則より、回路全体で

2÷26/7=7/13A

の電流が流れていることがわかります。したがって、2Ωの抵抗を流れる電流は7/13Aです。また、このことから、2Ωの抵抗にかかる電圧は

2×7/13=14/13V

であることがわかります。さらに、3Ωの抵抗と4Ωの抵抗は並列接続されているので、同じ電圧がかかりますよね。ですから、3Ωの抵抗と4Ωの抵抗には、それぞれ

2-14/13=12/13V

の電圧がかかるのです。では最後に、3Ωの抵抗と4Ωの抵抗を流れる電流を考えます。こちらも、オームの法則で計算しましょう。なお、電流の向きは図に示した通りになります。

3Ωの抵抗に流れる電流:12/13÷3=4/13A
4Ωの抵抗に流れる電流:12/13÷4=3/13A

#2 他の電源に対しても、同様に計算する

他の電源に対しても、同様に計算する

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今度は、4Vの電源を残し、2Vの電源がなかったことにすればよいですね。この状態で各抵抗に流れている電流を求めましょう。先ほどと計算方法は同じなので、ここでは一部の説明を省略します。

並列接続された2Ωの抵抗と3Ωの抵抗は6/5Ωの抵抗で置き換えることができますね。さらに、この抵抗が4Ωの抵抗と直列につながれていて、回路全体の抵抗値は26/5Ωだとわかります。

そして、オームの法則より回路全体で10/13Aの電流が流れていることがわかりますね。したがって、4Ωの抵抗を流れる電流は7/13Aで、4Ωの抵抗にかかる電圧は40/13V。

また、2Ωの抵抗と3Ωの抵抗にはそれぞれ12/13Vの電圧がかかります。このことから、2Ωの抵抗に流れる電流は6/13A、3Ωの抵抗に流れる電流は4/13Aです。電流の向きについては、図に示した通りになります。

#3 二つの回路を重ね合わせる

二つの回路を重ね合わせる

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図のように、2Vの電源を残し、4Vの電源はなかったことにした回路(左上)4Vの電源を残し、2Vの電源がなかったことにした回路(右上)ぴったりと重ね合わせます。このとき、電流の矢印が各抵抗に2つずつ表記されることになります。ここまで計算できたら、正解はすぐそこです!

#4 電流の足し算をする

電流の足し算をする

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最後に、各抵抗を流れる電流の足し算をします。このとき、電流の向きに注意しましょう。まず、2Ωの抵抗を流れる電流について考えます。左向きを正の方向とすると、

左向きの7/13Aは+7/13A
右向きの6/13Aは-6/13A

だと考えられますね。これらを足し算すると

+7/13-6/13=1/13A

となります。つまり、2Ωの抵抗には、左向きに1/13A(≒0.08A)の電流が流れるのです。同様にして、3Ωの抵抗と4Ωの抵抗を流れる電流についても考えましょう。3Ωの抵抗については、下向きを正の方向とすると、足し算は

+4/13+4/13=8/13A

となり、下向きに8/13A(≒0.6A)の電流が流れることがわかります。また、4Ωの抵抗については、右向きを正の方向とすると、足し算は

+10/13-3/13=7/13A

となり、右向きに7/13A(≒0.5A)の電流が流れるのです。これで、正解にたどり着けました!

重ね合わせの原理で多電源回路の問題を直感的に解こう

重ね合わせの原理を使うことで、多電源回路の問題は直感的に解くことができます。今回のような、2電源の問題だけでなく、3電源以上の問題も同じ方法で解くことができるので、ぜひお試しください。重ね合わせの原理を効果的に使うことで、多電源回路の問題における計算ミスや時間のロスは激減するはずですよ!

" /> 簡単でわかりやすい「重ね合わせの原理」多電源回路の例題を理系学生ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
物理理科電磁気学・光学・天文学

簡単でわかりやすい「重ね合わせの原理」多電源回路の例題を理系学生ライターがわかりやすく解説!

今回は、多電源回路の問題を解くときに非常に便利な「重ね合わせの原理」について解説していきます。

「重ね合わせの原理」をマスターすれば、多電源回路の問題を直感的かつ楽に解くことができる。また、「重ね合わせの原理」は高校物理の教科書には載っていないが、大学入試の問題でもこれを使うと楽に解ける問題が数多く存在する。ぜひとも、この記事を読んで、「重ね合わせの原理」を理解してくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

重ね合わせの原理とは?

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2つ以上の電源(電池)を含む電気回路のことを多電源回路といいます。多電源回路の問題はキルヒホッフの法則を使えば解くことができますね。しかし、キルヒホッフの法則を使って解く場合、必ず連立方程式の計算をしなければならないのですが、この連立方程式の計算が煩雑になってしまうことが多いのです。同じ経験をされた方はきっと共感してくださることでしょう。

そのようなときに便利なのが、重ね合わせの原理という計算方法です。一般に多電源回路を流れる電流は、それぞれの電源が単独で存在するときに流れる電流の合計値であるというものが重ね合わせの原理になります。この方法は直感的でわかりやすいと同時に、方程式の計算を一度もしなくてもよいのでなのです。

多電源回路の問題は大学入試でも、頻繁に出題されます。ところが、高校物理の教科書にはキルヒホッフの法則についての説明はあっても、重ね合わせの原理についての説明はありません。したがって、多くの高校生は多電源回路の問題をキルヒホッフの法則を使って解くのです。

もしあなたが受験生で、重ね合わせの原理を自由自在に扱えたら、他の受験生よりも一歩リードできること間違いありません。

「多電源回路」の問題を解いてみよう!

「多電源回路」の問題を解いてみよう!

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では、早速問題です!「上の回路図において、各抵抗に流れている電流を求めよ」という問題になります。この回路は、2つの電源が含まれていますので、多電源回路です。ということは、重ね合わせの原理を使って問題を解くことができますね!それでは、解説をはじめていきます。

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