そもそも、近代科学が今のように発展する前は永久機関を作ろうと研究に没頭していた「科学者」がたくさんいたとされる。しかしです、その全ては失敗に終わったんだよ。
これらの研究に失敗したという反省から熱力学の諸法則は生まれたといっていのです。それらが熱力学第1法則と第2法則なのです。今回は熱力学の法則についてタッケさんと解説していきます。
ライター/タッケ
物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。第1種永久機関が不可能なのは子供でもわかるレベルだが、第2種永久機関は熱力学第1法則に反していないのでわかりにくい。真剣に研究している人もいるとのこと。
ジュール
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ジュールという人を知っていますか。
あまり馴染みはなくても、単位の J [ジュール] にその名を残しているので、ああ、あのジュールか、と思う人は多いでしょう。
ジュールはイギリスの科学者です。大学教育等は受けていなくてほぼ独学で物理学など科学の研究をしていました。ジュールは実家の醸造所の脇に研究室を建設して研究に勤しみました。
彼の実家が醸造業を営んでおり豊かだったので、彼の研究を支えることができたと言われています。
やはり研究を続ける上で、研究費とかの財政面は大事ですね。
熱素説
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当時、熱現象と仕事は別のものだと考えられていました。
「熱素」と言われるものが物質中に存在し、それが移動することによりものが温まったり冷えたりすると考えられていました。
高温部から低温部へ熱素が移動するというわけですね。
そして熱平衡に達すると熱素の移動は止まる。
例えば、熱い物質中には熱素がたくさんあり、それに接触した物体は熱素を受け取ることにより、温められると考えられていたのです。
この考え方だと、物質中の熱素がなくなった時点で熱の移動は終了し、それ以降は物体は温められなくなると考えられます。
ところが当時、大砲を製造するとき、ドリルで砲身をくり抜く作業をし続ける限り大砲の砲身はずっと熱くなっていることから、熱素説は否定されたのです。
つまり、作業(仕事)することでいくらでも熱は作り出されると言うことに気がついたというわけですね。
ジュールの実験
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ジュールは、仕事が熱へ変換可能だという仮定のもと、ある実験を行いました。
上の図が彼の実験装置です。
両端にぶら下げた重りが重力により下がることを利用して、断熱槽の中の水をかき回します。その結果、かき回された水は温度が上昇しました。
その結果、加えた仕事と水の得た熱の比率はいつも一定であることを見出したのです。
ジュールはこの実験装置を使って、重力のする仕事が水の熱に変化することを証明しました。
そして、1[ J ] の仕事が、約 4.19 cal (カロリー) に匹敵することを突き止めたのです。
これを熱の仕事当量といいます。
つまり、従来別だと思われていた、熱と仕事は等価であることが明らかになったということですね。
他にも、運動、化学反応、電気反応などについても熱と交換可能であることが示されたのです。
このように見た目や状態が全く異なる現象が交換可能であったという事実から、物事の本質として、すべての熱を伴う現象に共通する「何か」があると科学者たちは考えました。
そして、これを広く一般に「エネルギー」と名付けたのです。
こうして、仕事や熱などの現象はエネルギーという概念でつながりました。
熱力学第1法則
ここでは気体について考えます。
気体は小さくてたくさんある気体分子からできていますが、これらは飛び回っているため運動エネルギーを持っていますね(熱力学的にはこれらが気体の圧力の正体です)。
また、気体分子どうしは引きつけ合ったり反発し合ったりしていますから、位置のエネルギーも持っています。
気体でこれらをすべて足し合わせたものが、その気体の持つ内部エネルギーと言われるものです。通常はこれを U で表します。
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