摩擦の問題が出て来た時、何を使おうとする?そう、あの公式。(最大静止or動)摩擦力=(最大静止or動)摩擦係数x垂直抗力なる式です。

確かに問題でよく使うのは上記の式。けれど、いつもいつもそればかりで乗り切ろうとすると間違えるリスクがある。最大静止摩擦力は出てくるが、最大じゃない時は?

本記事では、静止摩擦と動摩擦を比較しながら間違いやすいポイントを理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

理科教員を目指すライター。エンジニアの経験を活かして、理科現象を「実際の現象」と結び付けることを意識して解説していく。

1.どんな時もついてまわる摩擦力

image by iStockphoto

摩擦力は「物体同士が滑るor滑ろうとしていれば」必ず発生します。動いているか止まっているかは関係ありません。

摩擦力は物体の動きを(または動き出そうとするのを)妨げます。動くのを妨害。こう聞くと邪魔者のように思えますがそうでもありません。

例えば、ねじが抜けないのも紐がほどけないのも摩擦力のお陰。もっと言えば歩くにも摩擦力は必要。私たちの生活に欠かせない存在です。

摩擦力は動いている物体同士にも、止まっている物体同士、どちらにも発生します。前者が「動摩擦力」、後者が「静止摩擦力」。上記の例なら、ねじに働くのが「静止摩擦力」、歩いている時足の裏に働くのが「動摩擦力」です。

「動摩擦力」と「静止摩擦力」、どちらも物体の動きを妨げるには違いありませんが、若干異なる点があります。

この記事では、動摩擦力と静止摩擦力の違いに焦点を当てながら間違いやすいポイントを解説。公式だけで乗り切るのは危険な単元ですので是非一読下さい。

2.静止摩擦力

2.静止摩擦力

image by Study-Z編集部

静止摩擦力とは前述の通り、止まっている物体同士に働く摩擦力。物体が「運動しようとしている」のを妨げる力です。

特徴はいろいろな値になり得るというところ。物体がどれだけ頑張って動こうとしているかで静止摩擦力の大きさは変わってくるもの。

例えば、ざらざらした地面にブロックが置いてあるとします。押せども押せどもびくりともしません。このブロックを1Nで「ちょい押し」したとき、地面からブロックにかかる静止摩擦力はちょい押し分の力1N。一方力いっぱい500Nで「がち押し」した時も同様、ブロックにかかる静止摩擦力はガチ押し分と同じ500N。1Nにも500Nにもなり得ます

1Nちょい押しでブロックが全然動きそうにないときも、500Nガチ押しでブロックが一生懸命動こうとしているときも止まっていることには違いありません。

静止摩擦力は動こうとしている力をまるまる阻止するもの。動こうとしている力が大きいほど静止摩擦力も大きくなります。

2-1.最大静止摩擦力

あれれ、摩擦力は摩擦係数x垂直抗力じゃないんですか?1Nだったり500Nだったり、コロコロ変わってどういうことでしょうか。摩擦力の公式はどこにいったんですか?

前項の静止摩擦力の記事を読んでそう思われた方も多いと思います。

静止摩擦力を係数x垂直抗力の式で計算するのは実は特別な場合です。動きかけのタイミングの静止摩擦力(最大静止摩擦力)が静止摩擦係数x垂直抗力で表される見慣れた式で計算できます。滑り出すかどうかの瀬戸際なので、物理学的には重要。だから教科書でも強調気味だし、テストにも頻出。しかし、実は公式で計算する静止摩擦力は特別な場合の計算だったのです。

静止摩擦力 ○x問題

ここに来るまで敢えて摩擦力の大きさについてはあまり解説しませんでした。なぜなら、「摩擦力=係数x垂直抗力」という式を強調したくなかったから。その公式ありきで解説が進むと、静止摩擦力は実は色んな値をとるという解説がしづらくなるので避けました。

〇×問題

”静止摩擦力は常に垂直抗力に比例する”

正解は×。静止摩擦力は垂直抗力に関係なく、押している力の反作用そのものが静止摩擦力(ただし、最大静止摩擦力を除く)。

静止摩擦力(最大静止摩擦力以下のとき)=滑らそうとする力

最大静止摩擦力=静止摩擦係数x垂直抗力

です。

垂直抗力に比例するのは、最大静止摩擦力のみであって常には比例しませんね。

\次のページで「2-2.最大静止摩擦摩擦の大きさ計算」を解説!/

2-2.最大静止摩擦摩擦の大きさ計算

2-2.最大静止摩擦摩擦の大きさ計算

image by Study-Z編集部

最大静止摩擦力の公式そのものについても簡単に見ていきましょう。

最大静止摩擦力=最大静止摩擦係数x垂直抗力

係数は物体によって決まっている数字なので気にしなくていいです。ちょっと引っかかるのは垂直抗力摩擦が起きてる面をどれだけ強く押してるかの指標。垂直とは摩擦が起きている面に対し垂直という意味。

要は、面を強く押せば押すほど滑らすのに力が必要ですよということを表しています。2倍強く面を押せば、滑らせる力も2倍必要ということ。

2-3.ありがちなミス

おっと、計算間違い。

公式丸暗記で乗り切ろうとして想定される間違い例。

問題:最大静止摩擦係数がμ0で、床に置かれた物体の垂直抗力がNでした。この物体を力Fで押しましたが動きません。物体に働く静止摩擦力は?

ありそうな間違い:摩擦力は係数x垂直抗力だから、この場合μ0N。どうだ。→x

物体を動かそうと押していますが、動いてないということは、まだ最大摩擦力には至っていません。静止摩擦力は物体を動かそうとする力。正解はF。

3.動摩擦力

3.動摩擦力

image by Study-Z編集部

続いて動摩擦力。「動いている」物体を妨げようとする力のこと。実は動いている時の方が、摩擦力は理解しやすいです。なぜなら動摩擦力は何Nで押そうとも大きさは一定だから。

計算方法はよく見慣れたあの公式。

動摩擦力=動摩擦係数x垂直抗力

\次のページで「4.最大静止摩擦力と動摩擦力の大小」を解説!/

4.最大静止摩擦力と動摩擦力の大小

4.最大静止摩擦力と動摩擦力の大小

image by Study-Z編集部

最大静止摩擦力と動摩擦力どっちが大きいか?

最後にちょっと頭を使う問題。一緒に考えていきましょう。

物体を引きずるべく押していきます。押す力が「最大静止摩擦力」に達したら物体が動く。と同時に「動摩擦力」が発生。

仮定1 動摩擦力>最大静止摩擦力の場合

動き始めると同時に、もともと押していた力(=最大静止摩擦力)より大きな動摩擦力が働きます。妨げる力が動かそうとする力を上回るため、止まってしまいますね。動き始めるとすぐ止まる。動き始めてないのと同じ。おかしいですね。これは成り立ちません。

仮定2 最大静止摩擦力>動摩擦力の場合

動き始めるとともに、動摩擦力によって妨げを受けるが、その大きさは元々押していた力(=最大静止摩擦力)より小さい。つまり動かそうとする力が妨げる力を上回るから動くことが可能。こちらが正しいですね。

公式+αで理解する摩擦力

摩擦力の計算方法をまとめます。

静止摩擦力(最大未満):物体を動かそうとする力

最大静止摩擦力:最大静止摩擦係数x垂直抗力

銅摩擦力:動摩擦係数x垂直抗力

特に静止摩擦に関しては公式丸暗記だと、計算間違いのリスクがあるので注意しましょう。

" /> 公式+αで制覇「静止摩擦力 」と「動摩擦力」の違いを理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

公式+αで制覇「静止摩擦力 」と「動摩擦力」の違いを理系ライターがわかりやすく解説

摩擦の問題が出て来た時、何を使おうとする?そう、あの公式。(最大静止or動)摩擦力=(最大静止or動)摩擦係数x垂直抗力なる式です。

確かに問題でよく使うのは上記の式。けれど、いつもいつもそればかりで乗り切ろうとすると間違えるリスクがある。最大静止摩擦力は出てくるが、最大じゃない時は?

本記事では、静止摩擦と動摩擦を比較しながら間違いやすいポイントを理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

理科教員を目指すライター。エンジニアの経験を活かして、理科現象を「実際の現象」と結び付けることを意識して解説していく。

1.どんな時もついてまわる摩擦力

image by iStockphoto

摩擦力は「物体同士が滑るor滑ろうとしていれば」必ず発生します。動いているか止まっているかは関係ありません。

摩擦力は物体の動きを(または動き出そうとするのを)妨げます。動くのを妨害。こう聞くと邪魔者のように思えますがそうでもありません。

例えば、ねじが抜けないのも紐がほどけないのも摩擦力のお陰。もっと言えば歩くにも摩擦力は必要。私たちの生活に欠かせない存在です。

摩擦力は動いている物体同士にも、止まっている物体同士、どちらにも発生します。前者が「動摩擦力」、後者が「静止摩擦力」。上記の例なら、ねじに働くのが「静止摩擦力」、歩いている時足の裏に働くのが「動摩擦力」です。

「動摩擦力」と「静止摩擦力」、どちらも物体の動きを妨げるには違いありませんが、若干異なる点があります。

この記事では、動摩擦力と静止摩擦力の違いに焦点を当てながら間違いやすいポイントを解説。公式だけで乗り切るのは危険な単元ですので是非一読下さい。

2.静止摩擦力

2.静止摩擦力

image by Study-Z編集部

静止摩擦力とは前述の通り、止まっている物体同士に働く摩擦力。物体が「運動しようとしている」のを妨げる力です。

特徴はいろいろな値になり得るというところ。物体がどれだけ頑張って動こうとしているかで静止摩擦力の大きさは変わってくるもの。

例えば、ざらざらした地面にブロックが置いてあるとします。押せども押せどもびくりともしません。このブロックを1Nで「ちょい押し」したとき、地面からブロックにかかる静止摩擦力はちょい押し分の力1N。一方力いっぱい500Nで「がち押し」した時も同様、ブロックにかかる静止摩擦力はガチ押し分と同じ500N。1Nにも500Nにもなり得ます

1Nちょい押しでブロックが全然動きそうにないときも、500Nガチ押しでブロックが一生懸命動こうとしているときも止まっていることには違いありません。

静止摩擦力は動こうとしている力をまるまる阻止するもの。動こうとしている力が大きいほど静止摩擦力も大きくなります。

2-1.最大静止摩擦力

あれれ、摩擦力は摩擦係数x垂直抗力じゃないんですか?1Nだったり500Nだったり、コロコロ変わってどういうことでしょうか。摩擦力の公式はどこにいったんですか?

前項の静止摩擦力の記事を読んでそう思われた方も多いと思います。

静止摩擦力を係数x垂直抗力の式で計算するのは実は特別な場合です。動きかけのタイミングの静止摩擦力(最大静止摩擦力)が静止摩擦係数x垂直抗力で表される見慣れた式で計算できます。滑り出すかどうかの瀬戸際なので、物理学的には重要。だから教科書でも強調気味だし、テストにも頻出。しかし、実は公式で計算する静止摩擦力は特別な場合の計算だったのです。

静止摩擦力 ○x問題

ここに来るまで敢えて摩擦力の大きさについてはあまり解説しませんでした。なぜなら、「摩擦力=係数x垂直抗力」という式を強調したくなかったから。その公式ありきで解説が進むと、静止摩擦力は実は色んな値をとるという解説がしづらくなるので避けました。

〇×問題

”静止摩擦力は常に垂直抗力に比例する”

正解は×。静止摩擦力は垂直抗力に関係なく、押している力の反作用そのものが静止摩擦力(ただし、最大静止摩擦力を除く)。

静止摩擦力(最大静止摩擦力以下のとき)=滑らそうとする力

最大静止摩擦力=静止摩擦係数x垂直抗力

です。

垂直抗力に比例するのは、最大静止摩擦力のみであって常には比例しませんね。

\次のページで「2-2.最大静止摩擦摩擦の大きさ計算」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: