

確かに問題でよく使うのは上記の式。けれど、いつもいつもそればかりで乗り切ろうとすると間違えるリスクがある。最大静止摩擦力は出てくるが、最大じゃない時は?
本記事では、静止摩擦と動摩擦を比較しながら間違いやすいポイントを理系ライターのR175と解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/R175
理科教員を目指すライター。エンジニアの経験を活かして、理科現象を「実際の現象」と結び付けることを意識して解説していく。
1.どんな時もついてまわる摩擦力

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摩擦力は「物体同士が滑るor滑ろうとしていれば」必ず発生します。動いているか止まっているかは関係ありません。
摩擦力は物体の動きを(または動き出そうとするのを)妨げます。動くのを妨害。こう聞くと邪魔者のように思えますがそうでもありません。
例えば、ねじが抜けないのも紐がほどけないのも摩擦力のお陰。もっと言えば歩くにも摩擦力は必要。私たちの生活に欠かせない存在です。
摩擦力は動いている物体同士にも、止まっている物体同士、どちらにも発生します。前者が「動摩擦力」、後者が「静止摩擦力」。上記の例なら、ねじに働くのが「静止摩擦力」、歩いている時足の裏に働くのが「動摩擦力」です。
「動摩擦力」と「静止摩擦力」、どちらも物体の動きを妨げるには違いありませんが、若干異なる点があります。
この記事では、動摩擦力と静止摩擦力の違いに焦点を当てながら間違いやすいポイントを解説。公式だけで乗り切るのは危険な単元ですので是非一読下さい。

実はややこしい静止摩擦
「止まっている時の摩擦だから、動摩擦より単純なんじゃないか?」直感的にそう思ってしまいそうだが、実はこっちの方がややこしい。
敢えて読書体力が残ってる記事前半でゆっくり解説していくから、しっかり理解しよう。
2.静止摩擦力

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静止摩擦力とは前述の通り、止まっている物体同士に働く摩擦力。物体が「運動しようとしている」のを妨げる力です。
特徴はいろいろな値になり得るというところ。物体がどれだけ頑張って動こうとしているかで静止摩擦力の大きさは変わってくるもの。
例えば、ざらざらした地面にブロックが置いてあるとします。押せども押せどもびくりともしません。このブロックを1Nで「ちょい押し」したとき、地面からブロックにかかる静止摩擦力はちょい押し分の力1N。一方力いっぱい500Nで「がち押し」した時も同様、ブロックにかかる静止摩擦力はガチ押し分と同じ500N。1Nにも500Nにもなり得ます。
1Nちょい押しでブロックが全然動きそうにないときも、500Nガチ押しでブロックが一生懸命動こうとしているときも止まっていることには違いありません。
静止摩擦力は動こうとしている力をまるまる阻止するもの。動こうとしている力が大きいほど静止摩擦力も大きくなります。
2-1.最大静止摩擦力
あれれ、摩擦力は摩擦係数x垂直抗力じゃないんですか?1Nだったり500Nだったり、コロコロ変わってどういうことでしょうか。摩擦力の公式はどこにいったんですか?
前項の静止摩擦力の記事を読んでそう思われた方も多いと思います。
静止摩擦力を係数x垂直抗力の式で計算するのは実は特別な場合です。動きかけのタイミングの静止摩擦力(最大静止摩擦力)が静止摩擦係数x垂直抗力で表される見慣れた式で計算できます。滑り出すかどうかの瀬戸際なので、物理学的には重要。だから教科書でも強調気味だし、テストにも頻出。しかし、実は公式で計算する静止摩擦力は特別な場合の計算だったのです。
静止摩擦力 ○x問題
ここに来るまで敢えて摩擦力の大きさについてはあまり解説しませんでした。なぜなら、「摩擦力=係数x垂直抗力」という式を強調したくなかったから。その公式ありきで解説が進むと、静止摩擦力は実は色んな値をとるという解説がしづらくなるので避けました。
〇×問題
”静止摩擦力は常に垂直抗力に比例する”
正解は×。静止摩擦力は垂直抗力に関係なく、押している力の反作用そのものが静止摩擦力(ただし、最大静止摩擦力を除く)。
静止摩擦力(最大静止摩擦力以下のとき)=滑らそうとする力
最大静止摩擦力=静止摩擦係数x垂直抗力
です。
垂直抗力に比例するのは、最大静止摩擦力のみであって常には比例しませんね。
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