今日は気体の発生についてです。

気体といっても単体の気体だと、水素、塩素など数が限られていますね。しかし、化合物となるとたくさんの気体の種類があるのは知っているでしょう。

そして今回は化学に詳しいライターどみにおんと一緒に代表的な気体の生成方法について解説していきます。

ライター/どみにおん

高校時代から気体の発生の実験も経験してきた化学に詳しい現役大学生。

気体って何?

image by iStockphoto

みなさん、気体と聞くと簡単にイメージすることができると思いますが、言葉で説明するのは難しくないですか?しかし、実は簡単に説明できるんです!気体とは物質の状態のひとつであり、分子または原子が自由に動きまわれる状態のことを言うんですね!

どの物質にも圧力や温度の条件を変えれば気体になりますが、今回は常温で気体のものについて解説していきましょう。

単体の気体の種類について

常温で気体である物質のうち単体であるものは、種類が限られています。周期表を見れば一目瞭然ですが、すべて挙げてみましょう。水素、窒素、酸素、フッ素、塩素と希ガスのヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンだけなんですね。

希ガスは反応性が乏しく、空気中にもともと希ガスとして存在しているため、当然希ガスに生成方法は存在しません。

単体の生成方法で重要なのは、水素と塩素くらいなので、それぞれ見ていきましょう。

水素の発生について

水素は希硫酸に亜鉛などのイオン化傾向が水素よりも大きい金属を加えると水素が発生します。

亜鉛を例にとって化学反応式をかくと、

Zn+H2SO4→ZnSO4+H2

となり、水素が発生するんですね。

このように実験的に水素を発生させることが可能ですが、工業的には水の電気分解や石油の熱分解からつくっているんです。

塩素の発生について

塩素の発生について

image by Study-Z編集部

塩素の発生方法は主に3つあります。

その1 酸化マンガンに濃硫酸を加えて加熱

          MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2↑

その2 さらし粉に希塩酸を加える

   CaCl(ClO)・H2O+2HCl→CaCl2+2H2O+Cl2↑

その3 高度さらし粉に希塩酸を加える

   Ca(ClO)2+4HCl→CaCl2+2H2O+2Cl2

\次のページで「さらし粉って何?」を解説!/

さらし粉って何?

さらし粉は塩化カルシウムCaCl2と次亜塩素酸カルシウムCa(ClO)2の混合物のことを言うんですね。

塩化カルシウムと次亜塩素酸カルシウムの混合の割合が1:1だとすると、Ca:Cl:ClO=1:1:1となり、水和しているH2Oを考えると、CaCl(ClO)・H2Oとなります。

高度さらし粉は、塩化カルシウムと次亜塩素酸カルシウムの割合に関して、次亜塩素酸カルシウムが多いものを指すんです。

さらし粉と塩酸の反応について

では、さらし粉に塩酸を加えるとどうして塩素が発生するのでしょうか?

HClを加えると、さらし粉に含まれているClO-と弱酸の遊離反応を起こし、HClOが遊離するんですね。

すると、HClとHClOが酸化還元反応を起こし、

HClO+HCl→H2O+Cl2↑

という反応が起き、高度さらし粉と希塩酸の反応も同じ原理で塩素が発生します。

化合物の気体について

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単体の物質は当然数が限られていますが、化合物となると、様々元素の組み合わせとなり無数に存在します。そのため、化合物の気体は大量に存在するので、全てを細かく紹介することはできません。しかし、気体の種類を大まかに分類すると、有機化合物と無機化合物の2種類だけなんですね。今回は、有機化合物の気体は本当にたくさんの種類があるので、無機化合物の代表的な気体について解説していこうと思います。

無機化合物の気体

無機化合物の気体を大きく分けると、非金属水素化合物と非金属酸化物の2種類あるんですね。

非金属水素化合物は例えば、HClやHFやNH3などがあり、非金属酸化物だとCO2やNOやNO2、SO2などがあります。

非金属水素化合物と非金属酸化物をそれぞれ見ていきましょう!

非金属水素化合物の気体について

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無機化合物のうち、非金属水素化合物の気体はHFやHCl、NH3くらいしかありません。

1種類ずつ気体の発生について見ていきましょう。

フッ化水素の発生について

フッ化水素はホタル石(主成分CaF2)に濃硫酸を加えて加熱すると揮発性の酸の遊離反応によって発生し、化学反応式は次のようになります。

CaF2+H2SO4→CaSO4+2HF

\次のページで「HClの発生方法」を解説!/

HClの発生方法

塩化ナトリウムに濃硫酸を加えると塩化水素が発生し、化学反応式は、

NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl↑

この反応は揮発性酸の遊離のように見えますが、加熱しなくても塩化水素が発生するので、そうではないんですね。

詳しくはハロゲンの章で説明していますので、ぜひご覧になってください。

塩化水素は、工業的には水素と塩素のを直接反応させて、

H2+Cl2→2HCl

という化学反応でつくられています。

NH3の発生について

アンモニアは塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを反応させて作ることができます。

2NH4Cl+Ca(OH)2→CaCl2+2H2O+2NH3↑

工業的にはハーバーボッシュ法を用いてつくられているんですね。

窒素と水素が3:1の割合で混じった混合気体を触媒の四酸化鉄Fe3O4を用いて高圧下で反応させるんです。

N2+3H2⇆2NH3+92J

非金属酸化物の発生について

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非金属酸化物はNOやNO2、SO2があり、これらの発生方法は酸化還元の範囲でも出てくると思います。

銅に濃硝酸を加えると Cu+4HNO3→Cu(NO3)2+2H2O+2NO2↑        

銅に希硝酸を加えると 3Cu+8HNO3→3Cu(NO3)2+4H2O+2NO↑

銅に濃硫酸を加え加熱 Cu+2H2SO4→CuSO4+2H2O+SO2↑

となり、どれも酸化還元の反応で発生していますね。

気体の発生は1種類ずつ整理していくしかない!

今回気体の発生について学んできましたが、当然気体の種類はもっとたくさん存在します。しかし、それらを全て覚えても受験では役に立ちません。代表的な気体だけでも発生方法やその化学反応の原理を理解するまで細かく勉強すれば、確実に力がつきます。だから、自分は化学反応の原理について細かく解説するように心がけてこの文章を書いているので、ぜひこれを活用して勉強して欲しいです!

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化学

代表的な「気体の発生」について現役理系大学生ライターがわかりやすく解説

今日は気体の発生についてです。

気体といっても単体の気体だと、水素、塩素など数が限られていますね。しかし、化合物となるとたくさんの気体の種類があるのは知っているでしょう。

そして今回は化学に詳しいライターどみにおんと一緒に代表的な気体の生成方法について解説していきます。

ライター/どみにおん

高校時代から気体の発生の実験も経験してきた化学に詳しい現役大学生。

気体って何?

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みなさん、気体と聞くと簡単にイメージすることができると思いますが、言葉で説明するのは難しくないですか?しかし、実は簡単に説明できるんです!気体とは物質の状態のひとつであり、分子または原子が自由に動きまわれる状態のことを言うんですね!

どの物質にも圧力や温度の条件を変えれば気体になりますが、今回は常温で気体のものについて解説していきましょう。

単体の気体の種類について

常温で気体である物質のうち単体であるものは、種類が限られています。周期表を見れば一目瞭然ですが、すべて挙げてみましょう。水素、窒素、酸素、フッ素、塩素と希ガスのヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンだけなんですね。

希ガスは反応性が乏しく、空気中にもともと希ガスとして存在しているため、当然希ガスに生成方法は存在しません。

単体の生成方法で重要なのは、水素と塩素くらいなので、それぞれ見ていきましょう。

水素の発生について

水素は希硫酸に亜鉛などのイオン化傾向が水素よりも大きい金属を加えると水素が発生します。

亜鉛を例にとって化学反応式をかくと、

Zn+H2SO4→ZnSO4+H2

となり、水素が発生するんですね。

このように実験的に水素を発生させることが可能ですが、工業的には水の電気分解や石油の熱分解からつくっているんです。

塩素の発生について

塩素の発生について

image by Study-Z編集部

塩素の発生方法は主に3つあります。

その1 酸化マンガンに濃硫酸を加えて加熱

          MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2↑

その2 さらし粉に希塩酸を加える

   CaCl(ClO)・H2O+2HCl→CaCl2+2H2O+Cl2↑

その3 高度さらし粉に希塩酸を加える

   Ca(ClO)2+4HCl→CaCl2+2H2O+2Cl2

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