波動という現象は色々あるんですが、そもそも光も音も波動であることに関しては違いがない。つまりどちらも基本的な波動の理論で理解できるはずなんです。物理学とは、一般的普遍的な理解を目指していると言ってよい。

全反射という現象も波動現象の一つであるから波としての統一理解が可能なはず。全反射の式を丸暗記してやり過ごしてきたキミ!
一緒に考えていこうぜ。

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。ときどき全反射の式を丸暗記している人がいるが、実は屈折の式そのもの。今回はこの全反射について、なぜかを大事にして一緒に考えていく。

屈折率と屈折の法則

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波が進むとき、その進む方向が変化することがあります。
これが波の屈折です。

光や音は波の仲間ですね。すなわち、世の中は波で満ちあふれています。
だから、こういった現象は普段気付かないだけで、私達の日常あちこちでみることができるのです。

波の振動数は屈折しても不変

波の振動数は屈折しても不変

image by Study-Z編集部

図を見てください。
波が媒質1と媒質2の境界面で曲がっている(屈折している)のがわかります。

注意すべき点は、屈折に際して波の数の増減がないということです。

振動数とは1秒間に生成される波の数とも言えます。
したがって、屈折や反射の際には波の数は変化しないことから、屈折しても波の振動数は不変だと言えるのですね。

入射角と屈折角

波の速さが異なる媒質が隣り合っているとき、その境界面で波は屈折します。
波が屈折する理由は波の進む速さが変わるためです。

上の図の例では、境界面を堺にして波の速さが遅くなっています。

このとき、境界面に対して垂直な線(法線)に対して入射する波がなす角を入射角といいます(図)。また、屈折する波が同様に法線となす角が屈折角です。

屈折率とは

屈折率とは

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この図のように境界面を堺にして波の速さが遅くなる場合は屈折波は法線方向に曲がります。
逆に屈折して波が速くなる場合は屈折波は法線方向と反対側に曲がるのです。

入射角 i と屈折角 j の間には次の屈折の法則がなりたつことがわかっています。

媒質1から媒質2へ波が進み、屈折したとき、

\次のページで「臨界角とは」を解説!/

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このとき、n12 を媒質1に対する媒質2の屈折率(相対屈折率)と呼びます。
これは媒質1から媒質2へと波が入る場合の屈折率という意味です。

逆に、媒質2から媒質1へ波が進行する場合の相対屈折率は n21 と表現します。

屈折率とは、波の屈折に際しての曲がり具合を数字で示したということです。

また、光の場合は真空に対する屈折率を考えることがあり、そのときの屈折率を絶対屈折率といいます。

これは、真空から光を照射した場合の屈折率ということですね。

式で考えてみましょう。
媒質1の絶対屈折率をn1
媒質2の絶対屈折率をn2
としたとき、光速を c とすれば次式が成り立ちます。

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したがってこれを変形すれば、屈折の式は割り算の式から絶対屈折率を使った次の掛け算の式になおすことができます。

覚え方は簡単です。
媒質1の絶対屈折率 ☓ 角度のsin =媒質2 の絶対屈折率 ☓ 角度のsin

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高校生の屈折に関する物理の問題の答案を見ていると、光の入射方向が逆になったときに分数の上下を間違えるというミスが非常に多く見られます。

これは掛け算の式を使うことでほぼ 100 % 回避できるのです。

なぜならば、わり算の順序をまちがえると全く違う答えになりますが、掛け算の順序は間違っても答えには影響がないからですね。

したがって、「式を使うときはこの掛け算式を使う」ことを強くすすめます。

臨界角とは

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ここからは主に光の場合についてお話しましょう。

上で述べたように、屈折の際に光がどの方向に曲がるかは、媒質中の光の速さに関係があります。

光を例えば水中から空気中へ照射する場合は、空気中のほうが光の速さが速くなるため、屈折波は法線と逆の方へ曲がっていきます(図)。

そのため、入射角を増やしてやると、ある角度で屈折波の屈折角が90°になってしまい、それ以降は屈折波が存在しないという状況になります。

この角度より入射角を大きくすれば、光は境界面ですべて反射されて境界面より外には出ていけません。これが全反射です。

このときの限界の入射角を臨界角といいます。(ここでは臨界角を ioと表記)

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したがって、全反射現象に関して、先におすすめした掛け算の屈折の法則に従えば次の式が導かれます。
真空の屈折率1(≒空気の屈折率1)、臨界角を io とすると、

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これは、
物質の絶対屈折率 n ☓ sin(臨界角) = 真空の屈折率 1 ☓ sin(90°) 
ということですね。

つまり、

\次のページで「全反射はどのように利用されているのか?」を解説!/

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となり、よく公式集で見かける式と同じになります。

でも、みなさんはこのような式を丸暗記してはいけません。
この全反射の式は、実は屈折の式そのものなのはもうおわかりですね。
要するに屈折角が90° というだけのことなのです。

「全反射の式」、というなにか特別なものがあるわけではありません。

上で推奨した掛け算の屈折の式を考えてやれば、なにも水中から空気中へといったような限定された場合だけではなく、水中からガラス中へとか、水中から油中へとか、いろいろな場合についてさまざまな応用が可能になります。

全反射はどのように利用されているのか?

全反射の現象はいろいろなところで見ることができます。

たとえば,光ファイバーをご存知でしょうか?
光ファイバーはガラスなどの透明な材料を繊維状にしたもので、現代の光インターネット技術をささえる重要な発明です。

この光ファイバーの中では、今まで述べてきたような光の全反射現象が応用されています。

つまり、ファイバーの中を光が進むとき、ファイバーがすこしくらい曲げられても、光はその境界面で屈折して外部へ漏れることなく、全反射を繰り返しながら進んでいくわけですね。

全反射ですから、光は原理的には反射に際して減衰しません。よって、遠くまで光を届けることができ、効率的な情報伝達を可能にしているのです。

ところで、この光ファイバーの実用化には日本の技術が大きな役割を果たしているのをご存知でしょうか?
光ファイバーは世界に誇るべき日本の高い技術の結晶といえます。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

3分で簡単「全反射」! 屈折の式がわかれば怖くないー理系ライターがわかりやすく解説



波動という現象は色々あるんですが、そもそも光も音も波動であることに関しては違いがない。つまりどちらも基本的な波動の理論で理解できるはずなんです。物理学とは、一般的普遍的な理解を目指していると言ってよい。

全反射という現象も波動現象の一つであるから波としての統一理解が可能なはず。全反射の式を丸暗記してやり過ごしてきたキミ!
一緒に考えていこうぜ。

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。ときどき全反射の式を丸暗記している人がいるが、実は屈折の式そのもの。今回はこの全反射について、なぜかを大事にして一緒に考えていく。

屈折率と屈折の法則

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波が進むとき、その進む方向が変化することがあります。
これが波の屈折です。

光や音は波の仲間ですね。すなわち、世の中は波で満ちあふれています。
だから、こういった現象は普段気付かないだけで、私達の日常あちこちでみることができるのです。

波の振動数は屈折しても不変

波の振動数は屈折しても不変

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図を見てください。
波が媒質1と媒質2の境界面で曲がっている(屈折している)のがわかります。

注意すべき点は、屈折に際して波の数の増減がないということです。

振動数とは1秒間に生成される波の数とも言えます。
したがって、屈折や反射の際には波の数は変化しないことから、屈折しても波の振動数は不変だと言えるのですね。

入射角と屈折角

波の速さが異なる媒質が隣り合っているとき、その境界面で波は屈折します。
波が屈折する理由は波の進む速さが変わるためです。

上の図の例では、境界面を堺にして波の速さが遅くなっています。

このとき、境界面に対して垂直な線(法線)に対して入射する波がなす角を入射角といいます(図)。また、屈折する波が同様に法線となす角が屈折角です。

屈折率とは

屈折率とは

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この図のように境界面を堺にして波の速さが遅くなる場合は屈折波は法線方向に曲がります。
逆に屈折して波が速くなる場合は屈折波は法線方向と反対側に曲がるのです。

入射角 i と屈折角 j の間には次の屈折の法則がなりたつことがわかっています。

媒質1から媒質2へ波が進み、屈折したとき、

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