今回は、DNAとRNAの構造と働きについて解説していく。設計図であるDNAと、その設計図を基にタンパク質合成に関わるRNAは生物にとって重要な要素です。

生物学に詳しいライターyamatoと一緒に解説していきます。

ライター/yamato

大学と大学院で生物学を専攻。修士課程卒業後、塾講師としての経験を持つ。生物学の面白さを伝えたいと思っている。魚を飼うのが趣味で特にフグが好き。

DNAとRNAの構造

DNAとRNAの構造

image by Study-Z編集部

DNAはdeoxyribonucleic acidの略で、デオキシリボース(糖)とリン酸と塩基から成り立っています。一方、RNAはribonucleic acidの略で、リボースとリン酸と塩基から成り立っていますよ。塩基の種類が一部異なりますが、基本構造は糖の酸素の数が違うのみです。

1.DNAとは?

DNAは生物の設計図であり、各細胞の中心の核内に存在。二重らせん構造で、一見複雑に見えますが模式図で理解すると分かりやすいです。

DNAは糖、リン酸、塩基の3つの物質から成り立ちます。塩基はA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類です。二重らせん構造をまっすぐ伸ばした時、2本の棒とそれをつなぐ物がある事が分かるでしょう。2本の棒は糖とリン酸が交互につながった物です。2本の棒をつなぐ部分は塩基。糖とリン酸、AとT、GとCがつながりやすい構造になっています。

DNAは設計図が記されているだけであり、RNAが無いとタンパク質合成はできません。

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2.RNAとは?

Peptide syn.png
By Boumphreyfr - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, Link

RNAの構成要素は糖、リン酸、塩基の3つでDNAとよく似ています。違うのは糖の構造と塩基の種類。塩基はチミンの代わりにウラシルで構成されています。RNAで特に重要な役割を担うのはメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)の3つ。

mRNAはDNAの情報を転写します。設計図と対になる配列を作り、タンパク質合成の場所まで運ぶ役割ですね。tRNAは3つの塩基配列を1つのセットとしてアミノ酸と結合。mRNAと対を作り、アミノ酸情報へと翻訳します。

rRNAはmRNAとtRNAをつなぐ細胞小器官です。

DNAとタンパク質の関係

image by iStockphoto

DNAの設計図をもとにタンパク質が合成されます。塩基配列3つとアミノ酸1つの情報が対応しており、コドンといいましたね。このコドンと対応するアミノ酸が合成され、タンパク質が作られます。

1.DNAからタンパク質が合成されるまでの流れ

DNAの情報はすべてが使われるわけではなく、使われる部分と使われない部分があります。タンパク質情報が書かれている部分がエキソン。タンパク質情報が書かれていない部分がイントロン。タンパク質合成の際には開始コドンからスタートし、必要な部分だけの情報を読み取って合成されます。

DNAからコピーを取ったmRNAはリボソームでtRNAと共にタンパク質合成を行うのでしたね。

tRNAはmRNAと塩基部分で一時的に結合し、すぐに離れます。塩基部分の反対側にアミノ酸がありますが、アミノ酸は次々と結合していき、鎖状になるのです。これがタンパク質ですね。

原核生物にはイントロンがありませんが、真核生物にはそれがあります。エキソンやイントロンを含めてタンパク質合成が開始され、必要のないイントロンや一部のエキソンは省かれる。これが選択的スプライシングと呼ばれ、免疫機能などに用いられる重要な機能なんですよ。

2.コドンとタンパク質

DNAの情報は塩基配列により記されています。塩基配列とはA・T・G・Cの配列。この塩基の並びを3つで1組の情報として扱うのがコドンです。無秩序に並んでいるように見えるDNAも、この3つの並びにより意味を持っているんですね。

転写は必ず開始コドンから始まります。開始コドンとはAUGの並び。これはメチオニンというアミノ酸を指定。一方、終始コドンは3種あり、UAA・UAG・UGAがこれにあたります。

4種類の塩基の配列パターンは64通りですが、20種類のアミノ酸が対応しているんですよ。つまり、複数の配列が同じアミノ酸を指定していることがあるんですね。例えば、最初の2つがGUの場合、残り1つは何であってもバリンを指定します。

20種のアミノ酸は鎖状につながりますが、鎖が立体構造を成し、修飾されてから機能するという流れです。

DNAの複製

DNA replication en.svg
By LadyofHats Mariana Ruiz - 投稿者自身による作品 (Original text: Own work. Image renamed from File:DNA replication.svg), パブリック・ドメイン, Link

細胞は分裂して数が増えるため、DNAもそれにともなって複製しなければなりません。DNAの複製技術はDNA鑑定にも応用されているんですよ。また、生殖細胞の減数分裂は特殊な分裂を行うので頭に入れておく必要があります。

1.DNAの複製

DNAはヒストンというタンパク質に巻き付けられて、絡まらないようになっています。折りたたまれたDNAはヒトの場合、各細胞に23対(46本)収納されているんですよ。

この46本は染色体です。細胞は2倍に増え続けるため、分裂の前に染色体を2倍にしておく必要があります。これが複製ですね。

DNAには複製起点があり、ここから複製が始ます。複製にはポリメラーゼという酵素とプライマーが必要です。プライマーとは、複製起点の塩基配列と対になる配列のこと。二重らせんは2つに裂かれ、それぞれの鎖と対になるDNAが結合して2本に分かれます。

DNA鑑定という言葉は広く知られていますが、塩基配列を調べるには大量のDNAが必要。そこで用いられるのがPCR。PCRはポリメラーゼチェーンリアクションのことであり、上記のポリメラーゼを指します。DNAの複製原理を応用して、ポリメラーゼやプライマーを混ぜて増殖させる方法がPCRであり、DNA鑑定には必須の作業です。

2.減数分裂

Chromosomes in mitosis and meiosis.png
By Electric goat - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, Link

細胞分裂で注意しなければならないのは減数分裂です。減数分裂とは生殖細胞を作るために行われる特殊な分裂のこと。体細胞分裂では染色体が2倍になり分裂、また2倍になり分裂と繰り返しましたが、減数分裂は少し違います。

2倍になった染色体は母由来の染色体と父由来の染色体が一部入れ替わる。これが組み替えです。組変わった染色体は引き離され、別々の細胞に入ります。この時点で元の染色体量に戻っていますが、ここで複製せずにさらに分裂。よって、最初と比べて染色体は半分になります。

この半分のDNA量になった精子や卵が受精して、元のDNA量に戻るのです。

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DNAとRNAの働きが分かると生物が分かる

DNAは生物学の核心です。その構造や機能を知ることで生物の多くのことを知る事ができるんですよ。ヒトゲノム計画が完了し、ヒトのDNA配列は解読されましたが、エキソン以外の領域の意義や寿命など、まだわかっていないことが多くあることも事実です。

地球上のすべての生物は同じ祖先を持つと考えられ、すべての生物がDNAに遺伝情報を記しています。一方、地球外生物での遺伝物質がDNAであるとは限りません。ウイルスもDNAを持つものと持たないものがいます。DNAを持たない場合はRNAに遺伝情報が記されているんですよ。

DNAやRNAを調べることにより、現在の生物の機能だけでなく、生命の起源や進化の謎に迫れます。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

DNAとRNAとは?構造の違いや働きを理系ライターが簡単にわかりやすく解説

今回は、DNAとRNAの構造と働きについて解説していく。設計図であるDNAと、その設計図を基にタンパク質合成に関わるRNAは生物にとって重要な要素です。

生物学に詳しいライターyamatoと一緒に解説していきます。

ライター/yamato

大学と大学院で生物学を専攻。修士課程卒業後、塾講師としての経験を持つ。生物学の面白さを伝えたいと思っている。魚を飼うのが趣味で特にフグが好き。

DNAとRNAの構造

DNAとRNAの構造

image by Study-Z編集部

DNAはdeoxyribonucleic acidの略で、デオキシリボース(糖)とリン酸と塩基から成り立っています。一方、RNAはribonucleic acidの略で、リボースとリン酸と塩基から成り立っていますよ。塩基の種類が一部異なりますが、基本構造は糖の酸素の数が違うのみです。

1.DNAとは?

DNAは生物の設計図であり、各細胞の中心の核内に存在。二重らせん構造で、一見複雑に見えますが模式図で理解すると分かりやすいです。

DNAは糖、リン酸、塩基の3つの物質から成り立ちます。塩基はA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類です。二重らせん構造をまっすぐ伸ばした時、2本の棒とそれをつなぐ物がある事が分かるでしょう。2本の棒は糖とリン酸が交互につながった物です。2本の棒をつなぐ部分は塩基。糖とリン酸、AとT、GとCがつながりやすい構造になっています。

DNAは設計図が記されているだけであり、RNAが無いとタンパク質合成はできません。

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