今回は力と運動について解説していきます。

物理学の基礎といえばやっぱり古典力学です。力学とはそもそも何をする学問かと言えば、力と運動の関係を調べる学問です。つまり力と運動は物理学の基礎の基礎です。何事も基礎基本は大切です。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

まずは運動について

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運動とは何でしょうか?哲学的にはやっかいな問題もあるのかも知れませんが、物理学にとってそれは難しいものではありません。物理学にとっての運動はずばり位置の変化です。あるAという位置にあった何かが、次の瞬間Bという位置にいた。このような現象を物理学では運動とよびます。

運動を表現するには

運動を表現するには

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運動を表すにはどうすればいいでしょう?科学では何事も実験で確かめなければいけないため、すべて測定できる数字で表す必要があります。位置を表すのは難しくありません。観測する物体のまわりに数直線を張り巡らし、その位置を記していけばいいのです。

運動と速度

運動と速度

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そうすると、運動は位置の羅列として表現されます。位置の羅列で運動が十分に表せているでしょうか?AからBに移動するのに1秒で移動するのと1時間で移動するのとでは同じ運動状態とは思えません。そこで速度という考えがでてきます。移動した位置の大きさを移動でかかった時間で割るのが速度です。

速度と加速度

速度と加速度

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位置と速度だけで完全に運動を表現できているでしょうか?そうとは言えません。なぜなら速度も変化するからです。速度の変化も運動を表現するのに使いたいので、加速度という概念を新たに考えます。これは速度の考え方を参考にして、Aでの速度とBでの速度の変化の大きさをかかった時間で割ると出てくるのが加速度です。

運動と力

位置と速度と加速度で完全に運動を表現できるのでしょうか?できるのです!なぜなら、運動しているものに外から何か変化が加わると変化するのは加速度だからです。逆に、加速度を変化させるものが力となります。運動を変化させるのは力と呼ばれ、力は加速度を変化させるのですから、これで運動は完全に表現されました。

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ニュートンの運動方程式

ニュートンの運動方程式

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力と加速度は比例してるとして、その比例定数を質量とするとニュートンの運動方程式がでてきます。逆に、ニュートンの運動方程式とは物体に加えられる力と加速度は質量を比例定数として比例しているという意味です。古典力学はこの運動方程式についてあれこれ考えることだとも言えますので、この方程式だけは覚えておきましょう。

単位について

単位について

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ここで念のため単位に触れておきます。ここでの議論は本質的には単位に関係ありません。単位というのは人間が勝手に定めるものなので自由に決めていいものなのです。しかし、個々人がバラバラの単位を使っていては非常に不便ですので皆で共通の単位を使うことになっています。古典力学ではmks単位系というものを使うことが多いです。m・kg・sが基本で、他の単位はこれらの単位の組み合わせになります。たとえば力の単位のN(ニュートン)はkg×m/s2と同じものです。

運動方程式と微分

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物理学を学ぶ上でどうしても避けて通れない数学の知識の一つが微積分です。運動方程式から速度と位置を導くには微積分の知識が不可欠になります。微積分は非常に深遠な数学の分野ですが、古典力学の基礎を理解するにはそれほど複雑な概念は必要ありません。ここでは簡単に運動方程式と微積分について説明します。

速度と微分

速度と微分

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距離÷時間が速度ですが時々刻々と速度が変化している場合は、いったいどの時点での速度を速度とすればいいのでしょう。この問題を解決ためには測定する時間の間隔をどんどん短くしていけばよいとわかります。理論的には無限に小さい時間間隔にすると完全に正しい速度が得られるはずです。これが微分という概念になります。無限に小さいというのはとっつきにくい概念ですが、現実的にはすごく小さいと考えておけば問題はありません。

加速度と微分

加速度と微分

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距離は位置の差なので、一般的な言い方にすると位置を時間で微分したものが速度という言い方になります。同じように考えて、無限に小さな速度変化を無限に小さな時間で割ったものが加速度ということです。言い換えると速度を時間で微分したものが加速度になります。ついでにこの二つを繋げることにより、位置を時間で2回微分したものが加速度ということが理解です。

\次のページで「すべてを記号に変換しよう」を解説!/

すべてを記号に変換しよう

すべてを記号に変換しよう

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いままで全て式を言葉で表現してきましたが、数式は慣例的にアルファベットと記号で表現する決まりになっています。数学嫌いの人には嫌かもしれませんが、慣れるとこっちの方がわかりやすいので今まで出てきたものを全てアルファベットに置き換えましょう。ここで注意したいのはdという記号で、これは凄く小さいことを表しdxで微小なxという意味になります。

一般的な運動方程式の表記

一般的な運動方程式の表記

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では一般的な表現を使って運動方程式を表してみましょう。一般的な表記では普通の×が省略されることに注意してください。よってこの式は力は質量と加速度を掛けたものに等しく、それは質量と速度を時間で微分したものを掛けたものに等しく、またそれは質量と位置を時間で2回微分したものを掛けたものに等しいという意味です。微分が方程式に含まれている式を微分方程式といいます。

微分と積分

微分と積分

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微分がでてきたので積分にも触れておきます。基本的には微分の逆演算が積分になりです。つまり、位置の時間微分が速度で速度の時間微分が加速度ですので、加速度の時間での積分が速度になり速度の時間での積分が位置になります。細かいことをいえば積分には不確定性があったりするのですが、基本的なイメージとしては微分の逆だと考えて問題ありません。

運動方程式を解く

運動方程式を解く

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最後に運動方程式を解いておきましょう。微分方程式から微分を消去することを微分方程式を解くといいます。微分方程式を解くには基本的に積分しなければなりません。簡単のために力は定数Fcとします。v0は初めの速度、x0は初めの位置です。上から下の式に変形するには時間で積分下から上の式に変形するには時間で微分します。

古典力学の広大な世界へ

力と運動と題して古典力学の基礎について解説しました。古典力学とは現代力学から量子論と相対論を抜いたものですが、我々が日常的に目にする運動のほとんど全ては古典力学の範囲で解析できます。運動は位置と速度と加速度で記述できること、運動方程式は力と加速度が比例することを表現していること、運動方程式は微積分を使って解析できることを説明しました。

これらのことが理解できましたら、古典力学がいったい何をやっているかを理解することが比較的容易にできるはずです。この記事で学んだ知識を持って是非古典力学の広大な世界に足を踏み入れてみてください。

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古典力学物理物理学・力学理科

「力と運動」とは?古典力学の基礎を理系ライターがわかりやすく解説

今回は力と運動について解説していきます。

物理学の基礎といえばやっぱり古典力学です。力学とはそもそも何をする学問かと言えば、力と運動の関係を調べる学問です。つまり力と運動は物理学の基礎の基礎です。何事も基礎基本は大切です。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

まずは運動について

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運動とは何でしょうか?哲学的にはやっかいな問題もあるのかも知れませんが、物理学にとってそれは難しいものではありません。物理学にとっての運動はずばり位置の変化です。あるAという位置にあった何かが、次の瞬間Bという位置にいた。このような現象を物理学では運動とよびます。

運動を表現するには

運動を表現するには

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運動を表すにはどうすればいいでしょう?科学では何事も実験で確かめなければいけないため、すべて測定できる数字で表す必要があります。位置を表すのは難しくありません。観測する物体のまわりに数直線を張り巡らし、その位置を記していけばいいのです。

運動と速度

運動と速度

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そうすると、運動は位置の羅列として表現されます。位置の羅列で運動が十分に表せているでしょうか?AからBに移動するのに1秒で移動するのと1時間で移動するのとでは同じ運動状態とは思えません。そこで速度という考えがでてきます。移動した位置の大きさを移動でかかった時間で割るのが速度です。

速度と加速度

速度と加速度

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位置と速度だけで完全に運動を表現できているでしょうか?そうとは言えません。なぜなら速度も変化するからです。速度の変化も運動を表現するのに使いたいので、加速度という概念を新たに考えます。これは速度の考え方を参考にして、Aでの速度とBでの速度の変化の大きさをかかった時間で割ると出てくるのが加速度です。

運動と力

位置と速度と加速度で完全に運動を表現できるのでしょうか?できるのです!なぜなら、運動しているものに外から何か変化が加わると変化するのは加速度だからです。逆に、加速度を変化させるものが力となります。運動を変化させるのは力と呼ばれ、力は加速度を変化させるのですから、これで運動は完全に表現されました。

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