原子同士の「共有結合」について化学系学生ライターがわかりやすく解説
いま俺たちが吸っている酸素は、2つの「酸素原子」が「共有結合」することでできた分子です。この「共有結合」とは何を共有しているのか?他の結合とは何が違うのか?この考え方は化学を理解する上で非常に大切な基礎になってくる分野です。
さあ、化学に詳しいライターずんだもちと一緒にわかりやすく解説していきます。
ライター/ずんだもち
化学系の研究室で日々研究を重ねる理系学生。共有結合は大学での研究においても欠かせない基礎事項のひとつ。ゆっくりと着実に理解していこう。
1.原子の構造は?
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共有結合を理解するためにはひとつひとつの原子がどのような構造をしているかを確認しておく必要があります。
上の図のように、原子は中心部にあるのは「原子核」と原子核の周りを回る「電子」の2つ。さらに中心部の原子核は、正電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子からできています。
原子には水素、窒素、酸素などの多くの種類がありますが、これらの違いは原子核の中にある陽子、中性子、電子の3つの粒子の数の違いです。3種類の粒子の数が変わるだけで原子の種類が変わるなんて面白いですね。
2.共有結合では、原子は「電子」を共有している!
「共有結合」という名前を聞くと、いったい何を共有しているのか気になりますよね。この共有しているものの正体は「電子」です。原子と原子は、お互いが持っている電子を共有することで強く結びついています。
ここで共有する電子の数は1つずつとは限りません。水素分子は2つの水素原子が電子を1つずつ出し合ってできたものですが、酸素原子では2つずつの電子、窒素原子では3つずつの電子と、共有する電子の数はさまざまです。
3.イオン結合との違いは?
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実は、原子と原子の結合には共有結合の他にも「イオン結合」があります。そして、イオン結合も共有結合と同じような「電子」を介した結合です。この違いがわかりにくいために理解を諦めてしまったという人も少なくないでしょう。これからこれらの結合の違いがわかるように、しっかり説明していきます。
1.電気陰性度
先ほど説明したように、イオン結合も共有結合もお互いの電子を出し合うことによる結合です。では、これらの違いはどこにあるのでしょうか?
この違いを理解するためには、「電気陰性度」という考え方を知る必要があります。これは、その原子がどれだけ電子を引きつけやすいか、という値です。「1.原子の構造は?」では、原子によって陽子や電子の数が異なることを説明しました。陽子や電子は電荷を持つので、これらの数が違うということは共有された電子を引きつける力も違うということになりますね。
この電気陰性度について理解すると、原子間で共有された電子はより電気陰性度の大きい原子の方に引き寄せられることが想像できると思います。さらに、2つの原子の電気陰性度の差が大きければ大きいほど、極端に一方の原子の方に引き寄せられるのです。
2.イオン結合と共有結合の違い
共有結合とイオン結合の違いは、共有された電子の引き寄せられ方の違いです。2つの原子の電気陰性度の値が同じくらいのときは共有結合と呼ばれ、電気陰性度の値の差が大きい時はイオン結合と呼ばれます。非常におおまかな説明ですが、一般にはだいたいこのようん傾向があるという程度に抑えておいてくださいね。
さて、このように説明されると、2つの結合の境目はどこなのかが気になりますよね。実は、共有結合とイオン結合には明確な境目はありません。というより、この2つの結合を明確に分類する必要がないのです。
この特徴がよく表れている表現として、「この結合は共有結合性が大きい」などの言い回しがあります。この表現にも、イオン結合と共有結合はしっかりとした基準のあるものではなく「性質」だということが表れていますね。
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