今回は「化学反応式」について勉強していこう。

原子や分子の結合について解説する前に、今一度化学反応式について理解を深めよう。化学物質の名称や化学式を覚えるのにも役立つぞ。

化学反応における反応前後での物質の変化は、化学反応式で見るとわかりやすいのは明らかです。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.化学反応式とは

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「化学反応式で表せ」「化学反応式からわかることを述べよ」のように、問題でも当たり前のように使われていますよね。化学に対して苦手意識を持ってしまう人は、数字とアルファベットの組み合わせというだけで考えを諦めてしまっているだけかもしれません。

化学反応式とは、物質の様々な変化を化学式という表現方法で記した式のことです。何と何が反応して何ができたのか、何をどうすることでどんな変化が起こったのか。それを表すのが化学反応式です。

2.左辺と右辺

数学の計算式同様、化学反応式にも左辺と右辺があります。例えば X-6 = 9-2X のような計算式があった場合、イコールの左側を左辺、右側を右辺といいますよね。

ただし、化学反応式で異なるのは、式の左辺と右辺の間にあるものはイコールではなく矢印→や⇆です。

化学反応式では左辺が反応前右辺は反応後を示しています。そのために左右が同じ状態、つまりイコールであるとはいえませんよね。

2-1.一方向の矢印

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例えば、塩酸と水酸化ナトリウムの反応の場合で考えてみましょう。

HCl + NaOH → NaCl + H2O …(1)

このとき、強酸である塩酸と強アルカリである水酸化ナトリウムの中和反応により、水と塩(えん)である塩化ナトリウムが生成します。それでは、この反応式を反対にすることができるでしょうか。

NaCl + H2O (→ ?) HCl + NaOH …(2)

答えはNOです。(1)の化学反応式における右辺、つまり反応後は塩化ナトリウムの水溶液の状態となっています。それと同様、(2)のように塩化ナトリウムと水を合わせてできるのは塩化ナトリウム水溶液であり、元の塩酸と水酸化ナトリウムに戻ることはないのです。

\次のページで「2-2.双方向の矢印」を解説!/

2-2.双方向の矢印

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化学反応の中には、物質がイオン化することで反応物と生成物が混ざり合った状態で吊り合うことがあります。これは化学平衡という状態です。

アンモニアは非常に水に溶けやすい気体であることは既に解説していますね。アンモニアが水に溶けるとアンモニア水になります。

NH3 + H2O ⇆ NH4 + OH …(3)

この反応では、左辺から右辺への反応が起こると同時に、右辺から左辺への反応も起こっている状態です。双方の反応速度が釣り合っているために、左右どちらの反応も起こることから双方向の矢印が使われています。また、反応前後も見かけ上はアンモニア水であることに変わりはありませんが、イオン化していない反応前とイオン化している反応後、物質の存在している状態が異なるので、やはりイコールでつなぐことはできません。

3.化学反応式の種類

化学反応式では(1)や(3)の反応に加え、表記方法の異なる2つの反応式があります。中学レベルで使うことは稀ですが、参考までに見てみてくださいね。

3-1.熱化学方程式

化学反応には、光や熱を放出して反応する発熱反応や熱を奪って反応する吸熱反応があります。このとき、反応にはエネルギーの変化が関わっているのがわかるでしょうか。

反応によって光や熱が出る場合、反応物 → 生成物 + (光や熱) となります。そう考えると、熱を奪う反応では反応物 → 生成物 - 熱 となるのがわかるでしょう。反応に関わるこれらのエネルギーを数値で表した式が熱化学方程式です。

例えば、気体の水素と塩素の反応では塩化水素という気体が生じるとともに184kJというエネルギーが生じます。これを熱化学方程式で表したのがこちらです。

H2(気)+Cl2(気) = 2HCl(気)+184kJ …(4)

熱化学方程式では、気体・液体・固体のどの状態の物質が反応したかを表記する必要があります。それぞれの状態によって発生または吸収するエネルギー量が異なるからです。そしてそのエネルギーはkJ(キロジュール)で生成物側の右辺に表記します。

通常の化学反応式との最大の違いは、左辺と右辺がイコールでつながれていることでしょう。これは反応前後で物質の持っているエネルギー量が等しいことを表すものです。決して反応前後の物質が等しいものであるという意味ではないので注意してくださいね。

3-2.半反応式

半反応式酸化・還元の反応において、反応の全体ではなく、酸化と還元のそれぞれ一方のみに着目して考える反応式です。具体例を見てみましょう。

2Mg + O2 → 2MgO …(5)

マグネシウムを酸化させた場合、マグネシウムと酸素が反応する理由を分けて考えることができるのです。

2Mg → 2Mg2+ + 4e …(6)

O2+ 4e → 2O2− …(7)

マグネシウムは4つの電子を失い、酸素は4つの電子を得ることでイオン式として表すことができます。これらが同時に起こるときの反応がこちらです。

2Mg + O2 + 4e → 2Mg2+ + 2O2− + 4e つまり 2Mg + O2 →2Mg2+ + 2O2− …(8)

(5)のようなよくある化学方程式も、その反応の詳細を見てみると(6)(7)のような酸化半反応式・還元半反応式のように分けて見ることができます。そして(8)のような酸化還元の全反応を理解できる式につながるのです。

\次のページで「4.化学反応式の作り方」を解説!/

4.化学反応式の作り方

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さて、化学反応式が苦手という人が気になるのはその作り方ですよね。最初に言っておきましょう。化学反応に必要な化学式は覚えるしかありません。繰り返し解くことで問題に慣れていきたいですね。

4-1.反応物と生成物を書き出す

4-1.反応物と生成物を書き出す

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まずは左辺に来る反応物と右辺に来る生成物がわからなくては式の作りようがありません。文章から読み取り、化学式で表してみましょう。

ヒントとして、気体は ○2 で表されるものが多く、水酸化○○は○○OH、○○酸はH と表記されます。

4-2.反応前後の元素の種類を合わせる

4-2.反応前後の元素の種類を合わせる

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反応物と生成物の中でわからない化学式がある場合、名称から推測してもいいですね。使われていない元素がないかを確認してみましょう。

\次のページで「4-3. 反応前後の元素の数を合わせる」を解説!/

4-3. 反応前後の元素の数を合わせる

4-3. 反応前後の元素の数を合わせる

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反応前後で元素の種類と数は変わらない質量保存の法則というものがありましたね。この法則に従い、両辺の元素の数を合わせる必要があります。最初は絵を描きながら考えるのも良いでしょう。

繰り返しの練習でコツを掴もう!

化学反応式は化学反応を理解するうえで重要な式です。式の見方や作り方がわかることで広がる考え方がたくさんありますよ。

暗記が必要な部分でもありますが、一度コツを掴んでしまえば「こんなに簡単だったんだ!」と思えることでしょう。反応前後で元素の種類と数を合わせること。必要なのはこれだけです。理解できるまで何度でも挑戦してみましょう!

次回からは化学反応が進み、元素同士が結合する理由について解説していきます。

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化学

反応を読み解く「化学反応式」のあれこれを元塾講師がわかりやすく解説

今回は「化学反応式」について勉強していこう。

原子や分子の結合について解説する前に、今一度化学反応式について理解を深めよう。化学物質の名称や化学式を覚えるのにも役立つぞ。

化学反応における反応前後での物質の変化は、化学反応式で見るとわかりやすいのは明らかです。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.化学反応式とは

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「化学反応式で表せ」「化学反応式からわかることを述べよ」のように、問題でも当たり前のように使われていますよね。化学に対して苦手意識を持ってしまう人は、数字とアルファベットの組み合わせというだけで考えを諦めてしまっているだけかもしれません。

化学反応式とは、物質の様々な変化を化学式という表現方法で記した式のことです。何と何が反応して何ができたのか、何をどうすることでどんな変化が起こったのか。それを表すのが化学反応式です。

2.左辺と右辺

数学の計算式同様、化学反応式にも左辺と右辺があります。例えば X-6 = 9-2X のような計算式があった場合、イコールの左側を左辺、右側を右辺といいますよね。

ただし、化学反応式で異なるのは、式の左辺と右辺の間にあるものはイコールではなく矢印→や⇆です。

化学反応式では左辺が反応前右辺は反応後を示しています。そのために左右が同じ状態、つまりイコールであるとはいえませんよね。

2-1.一方向の矢印

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例えば、塩酸と水酸化ナトリウムの反応の場合で考えてみましょう。

HCl + NaOH → NaCl + H2O …(1)

このとき、強酸である塩酸と強アルカリである水酸化ナトリウムの中和反応により、水と塩(えん)である塩化ナトリウムが生成します。それでは、この反応式を反対にすることができるでしょうか。

NaCl + H2O (→ ?) HCl + NaOH …(2)

答えはNOです。(1)の化学反応式における右辺、つまり反応後は塩化ナトリウムの水溶液の状態となっています。それと同様、(2)のように塩化ナトリウムと水を合わせてできるのは塩化ナトリウム水溶液であり、元の塩酸と水酸化ナトリウムに戻ることはないのです。

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