今回は生活に大きく関わる「石油化学」について勉強していこう。

石油は燃料として使われる以外にも多くの製品作りに利用されているのを知っているか?我々の生活に欠かせないものだからこそ、地球環境にも配慮した利用が大切なんです。

どんな製品に石油化学が使われているのか見てみよう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.石油化学とは

image by iStockphoto

石油は炭化水素を主成分とした液状の油です。石油というのは精製していない天然の原油を指すのが一般的ですが、天然ガスや固体のアスファルトなどを含める場合もあります。日常生活では灯油のことを石油と呼ぶこともありますよね。

石油化学は石油化学工業とも呼ばれ、石油を主たる原料として様々な製品加工へ応用する化学工業の中の1つです。石油には様々な化合物が含まれているので、それらを精製することで用途に応じた利用が可能になります。その中でもナフサを用いて化学製品を作りだすのが石油化学です。

2.石油の精製

2.石油の精製

image by Study-Z編集部

油田から採掘した直後の原油には、ガスや異物、水分などの不純物も多く含まれています。製品への応用にはこれらを取り除くことが必須です。分留技術を利用してこれらを取り除き、さらに天然ガスやナフサ、灯油、軽油、重油などに分けることができます。車の燃料として欠かせないガソリンも石油が原料です。

2-1.石油化学の原料となるナフサ

日本国内の石油製品の需要はガソリン及びナフサが高い水準を示しています。このナフサについて見ていきましょう。

ナフサは石油を精製することで得られる比較的沸点の低い液体です。天然ガスに次いで沸点が低いので、蒸留を用いた精製の段階では初期に得ることができます。

ナフサの主成分は分子構造に炭素を持つ炭化水素です。この炭化水素には様々な種類があり、それぞれの性質に合った製品作りへと活かされていきます。しかし日本で精製されるナフサの量では製造に不十分です。そのため、必要量の約6割をアラブ首長国連邦をはじめとする中東からの輸入に頼っている現実があります。

3.身近な石油化学・製品

では、実際にどのような製品が石油化学によって製造されているかを見ていきましょう。あなたが普段使用しているもの、身に着けているものの多くが石油化学によって作られているのだと気付くはずですよ。

3-1.プラスチック

プラスチックは軽く、水や薬品に強いうえにさびないことから、長持ちするのがメリットです。石油製品の大多数をこのプラスチックが占めています。

様々な容器や外装に使われるほか、熱や衝撃への耐性、柔軟性を利用した医療品の材料にもなっていて、非常に身近な石油製品といえるでしょう。

3-2.合成繊維

image by iStockphoto

ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維は馴染みがあるでしょう。普段身に着けている洋服のタグを見てみれば、合成繊維が多く使われているのがわかりますよ。

既存の天然繊維と組み合わせることでそれぞれのメリットを活かしつつ、デメリットを補える洋服作りに活用されています。

3-3.塗料

現在使用されている塗料の大部分が石油化学によって開発された合成樹脂を使用した塗料です。建築や自動車製造に広く用いられ、さびなどによる劣化を防ぎ、塗装することでそのものの強度を上げることも可能になります。

風雨にさらされる環境でも完全なコーティングを保つことのできる強度が合成樹脂塗料の特徴です。

3-4.合成洗剤

image by iStockphoto

普段使用している食器用洗剤やボディソープは大部分は合成洗剤でしょう。石鹸はアルカリ性ですが、肌に優しい弱酸性のソープを作れるのがメリットです。

泡立ちやすく使い勝手の良さは生活に欠かせない便利さがありますね。

\次のページで「3-5.合成ゴム」を解説!/

3-5.合成ゴム

ゴムの木から得られる天然ゴムとは異なり、耐熱性や耐老化性など求める特色に応じて開発されたのが合成ゴムです。これまでに紹介したプラスチックや合成繊維以上に豊富な種類があり、中でもシリコンゴムは有名でしょう。

天然ゴムはアレルギーが出やすいことから、ラテックスアレルギーのある研究者や医療従事者、患者への治療に使われるゴム手袋の原料としても使われています。

4.化学製品だからこそのメリット

天然素材を利用した製品は古くから使用されてきたものです。そのため、天然でないもの、人工的なものである化学製品に対しては環境や人体への影響を心配するあまりマイナスなイメージを持っている人もいるでしょう。年齢層が上がるほどその傾向が高くなるかもしれませんね。しかし、人工的なものだからこそのメリットを忘れてはいけません。

例えば、石油化学の技術を用いて作られた「合成繊維」に対し、天然の原料を用いて作られた繊維である「天然繊維」というものがあります。木綿や麻、絹に代表される天然繊維は、量産が難しいというのが大きな課題でした。しかし、合成繊維の登場により製品の量産が可能になったのは大きなメリットです。さらに、天然繊維にはない機能性を追加したことにより洋服選びの選択肢は広がりました。防水や撥水加工、速乾加工、UVカット効果のある洋服など、今では当たり前のように感じてしまいますよね。

このように、天然の原料を用いた製品に不足していた部分を補いつつ、さらに機能性を高めていけるのが化学製品の大きなメリットです。それぞれの良さを理解したうえで、製品・商品選びが上手にできる消費者になりたいものですね。

5.環境と石油化学

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原油から様々な原料へと精製する過程、実際に製品へと加工する過程で発生するガスや汚染水、廃棄物の処理はどの工場も多額の費用をかけて対策を取っています。さらに、プラスチックのように自然分解されない製品の海洋流出の問題は世界中で大きな問題になっていますよね。そのため、生分解性プラスチックと呼ばれる土壌に埋めても自然に分解されるプラスチックの開発や、使い捨て品にプラスチックを使わない活動も進められています。

そもそも限りある資源である石油ですから、環境へ配慮しつつ、いかに生産効率を上げるかはどんな企業にとっても永遠の課題になるでしょう。

では、わたしたちにできることは何でしょうか。

化学物質のメリットはリサイクルできることです。プラスチックなど、きちんと分別してゴミを捨てることで、リサイクル業者によって再度原料として生まれ変わります。全く化学製品を使わずに生活することは難しいでしょう。しかし、ゴミの分別は今日からでも始めることができますよね。過剰包装されている商品や使い捨て品を買わないという選択もできるでしょう。

地球にいる全ての人がゴミの分別に協力し、資源の無駄使いをなくすことは、限りある資源の有効活用につながります。それは結果として地球環境の保護にもつながるのです。

生活をより豊かにしてくれる石油製品ですから、それによって大切な地球というみんなの家を汚してしまうことのないように1人1人が心がけましょう。

\次のページで「環境に配慮した技術発展が今後の課題!」を解説!/

環境に配慮した技術発展が今後の課題!

石油製品と聞くと第一にガソリンなどのオイルを想像する人が多いでしょう。しかし石油という原料は、製造過程で様々な物質に分離精製され、それぞれの用途に合わせて使用されています。プラスチックや合成繊維など、オイルのイメージとはかけ離れた製品もたくさんありますね。

食品素材や化学原料など、「天然」というだけで良いイメージを持つ人も少なくありません。しかし合成・加工したものだからこそ、より機能性を高めた製品作りが可能になります。一方で環境に影響が出てしまうのも事実です。だからこそ、作る側も使用する側も環境に配慮する気持ちを大切にしたいですね。

" /> 暮らしを支える「石油化学」について元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

暮らしを支える「石油化学」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は生活に大きく関わる「石油化学」について勉強していこう。

石油は燃料として使われる以外にも多くの製品作りに利用されているのを知っているか?我々の生活に欠かせないものだからこそ、地球環境にも配慮した利用が大切なんです。

どんな製品に石油化学が使われているのか見てみよう。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.石油化学とは

image by iStockphoto

石油は炭化水素を主成分とした液状の油です。石油というのは精製していない天然の原油を指すのが一般的ですが、天然ガスや固体のアスファルトなどを含める場合もあります。日常生活では灯油のことを石油と呼ぶこともありますよね。

石油化学は石油化学工業とも呼ばれ、石油を主たる原料として様々な製品加工へ応用する化学工業の中の1つです。石油には様々な化合物が含まれているので、それらを精製することで用途に応じた利用が可能になります。その中でもナフサを用いて化学製品を作りだすのが石油化学です。

2.石油の精製

2.石油の精製

image by Study-Z編集部

油田から採掘した直後の原油には、ガスや異物、水分などの不純物も多く含まれています。製品への応用にはこれらを取り除くことが必須です。分留技術を利用してこれらを取り除き、さらに天然ガスやナフサ、灯油、軽油、重油などに分けることができます。車の燃料として欠かせないガソリンも石油が原料です。

2-1.石油化学の原料となるナフサ

日本国内の石油製品の需要はガソリン及びナフサが高い水準を示しています。このナフサについて見ていきましょう。

ナフサは石油を精製することで得られる比較的沸点の低い液体です。天然ガスに次いで沸点が低いので、蒸留を用いた精製の段階では初期に得ることができます。

ナフサの主成分は分子構造に炭素を持つ炭化水素です。この炭化水素には様々な種類があり、それぞれの性質に合った製品作りへと活かされていきます。しかし日本で精製されるナフサの量では製造に不十分です。そのため、必要量の約6割をアラブ首長国連邦をはじめとする中東からの輸入に頼っている現実があります。

3.身近な石油化学・製品

では、実際にどのような製品が石油化学によって製造されているかを見ていきましょう。あなたが普段使用しているもの、身に着けているものの多くが石油化学によって作られているのだと気付くはずですよ。

3-1.プラスチック

プラスチックは軽く、水や薬品に強いうえにさびないことから、長持ちするのがメリットです。石油製品の大多数をこのプラスチックが占めています。

様々な容器や外装に使われるほか、熱や衝撃への耐性、柔軟性を利用した医療品の材料にもなっていて、非常に身近な石油製品といえるでしょう。

3-2.合成繊維

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ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維は馴染みがあるでしょう。普段身に着けている洋服のタグを見てみれば、合成繊維が多く使われているのがわかりますよ。

既存の天然繊維と組み合わせることでそれぞれのメリットを活かしつつ、デメリットを補える洋服作りに活用されています。

3-3.塗料

現在使用されている塗料の大部分が石油化学によって開発された合成樹脂を使用した塗料です。建築や自動車製造に広く用いられ、さびなどによる劣化を防ぎ、塗装することでそのものの強度を上げることも可能になります。

風雨にさらされる環境でも完全なコーティングを保つことのできる強度が合成樹脂塗料の特徴です。

3-4.合成洗剤

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普段使用している食器用洗剤やボディソープは大部分は合成洗剤でしょう。石鹸はアルカリ性ですが、肌に優しい弱酸性のソープを作れるのがメリットです。

泡立ちやすく使い勝手の良さは生活に欠かせない便利さがありますね。

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