地域活性化のために国内観光旅行を推進
By Michigan Department of Transportation – Michigan Department of Transportation, Public Domain, Link
アメリカ政府は雇用を創出するためにさまざまな公共事業を展開。そのひとつが高速道路を含めた道路の建設です。アメリカ国内のすみずみなで道路を拡張したらそこを通る車が必要になります。そこで国内環境旅行を推奨しました。
シー・アメリカ・ファースト(See America First)
アメリカでは19世紀末よりヨーロッパを観光する人が増えていきます。そこでアメリカ国内の旅行会社や鉄道会社は「ヨーロッパに行くのなら、まずアメリカを見よう」という趣旨で「シー・アメリカ・ファースト」運動を展開します。とくに鉄道沿線を中心に観光名所を作り、それを紹介するガイドブックを出版。「シー・アメリカ・ファースト」運動の趣旨は愛国心。アメリカの風景や文化を見ることで「アメリカを知る」ことを強調。ニューディール期の国内観光政策はこの延長上にあります。
ニューディール政策を通じてさらにマニアックな国内観光が提案
ニューディール政策による道路の建設は、観光地とは程遠い田舎にまで至ります。そこに旅行に行く人を増やすために、その地域の歴史を案内するガイドブックを数多く出版。その地域にある自然や、そこに住む普通の人々の生活を見ることに意味を見出そうとしました。
実際、その観光ガイドブックを見て地方に赴いた人がどれだけいたのかは疑問。それほど大きな効果はなかったと思われます。しかし、ガイドブックを編纂するために行われた各種調査は、アメリカの地方史を明らかにすることに貢献しました。
貧民や労働者を主役とする写真や文章を収集
By Unknown or not provided – U.S. National Archives and Records Administration, Public Domain, Link
ニューディール政策における一連の政策のなかで、現在もっとも評価されているのは芸術分野なのかもしれません。そのひとつがFSA(農業安定局)による写真収集のプロジェクトです。
農村地帯の惨状を記録することが試みられた
世界恐慌による不景気でとくに深刻な影響を受けたのが農村地帯。その惨状を記録するためのプロジェクトが立ち上げられました。その中心となったのがFSAに歴史ディレクターとして雇用された経済学者のロイ・ストライカーです。
ロイ・ストライカーのもと、ウォーカー・エヴァンズをはじめとする写真家が集められました。彼らには多くの資金が与えられ、とくに影響が大きかった南西部の農村地帯で写真撮影を行います。また、ルイス・ハインは貧民街に住む人々の記録を試みました。
苦難に立ち向かうアメリカ人の姿をPR
このように貧困に苦しむ農村地帯や貧民街を記録したことには明確な理由が。世界恐慌の影響で苦しむ人々が、力強く生きる姿を写真に記録することで「苦難に立ち向かうアメリカ人」をアピールしようとしたのです。
フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策に賛同する流れを作り出したかどうかは別にして、実際、これらの写真は大きな反響を呼びました。1942年までに27万点以上もの写真を撮影。これまで記録されることがなかった人々の姿が写真として保存されました。
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