今回は「上方置換法」について勉強していこう。

水上置換法、下方置換法については理解できたか?この3つはセットで覚えておきたい気体の収集法です。

気体の性質に注目して考えてみよう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.上方置換法とは

上方置換法-svg.svg
By すじにくシチュー - 投稿者自身による作品, CC0, Link

上方置換法は上図を見てもわかるように、逆さにした捕集びんや試験管に集める気体の捕集方法です。水中で気体を集める水上置換法、捕集びんや試験管の底に気体を集める下方置換法とは異なり、容器の上部に気体を集める方法になります。

2.捕集する気体の条件を考える

それでは、実際に上方置換法を用いて捕集する気体の条件と例を見ていきましょう。

2-1.水に溶けやすい

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ここで少し復習です。気体捕集法でまず初めに解説したのは水上置換法でしたね。水中で気体を集めることで、より純度の高い気体を集めることのできる方法でした。しかし、これが使えるのは水に溶けにくい気体であることが最大の条件でしたよね。

上方置換法を選択するためのチェックポイントは、水に溶けやすい気体であるかどうかです。水に溶けやすい気体に水上置換法は使えません。そこで、次に2つめの条件を考える必要があるのです。

\次のページで「2-2.空気よりも軽い」を解説!/

2-2.空気よりも軽い

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水上置換法が使えないとなれば、前回解説した下方置換法が候補の1つになってきます。しかしこれは空気よりも重い気体にのみ使える方法でしたよね。

反対に空気よりも軽い気体である場合に使えるのが、今回解説する上方置換法なのです。

上方置換法を用いる気体の条件

(1)水に溶けやすい気体であること (2)空気よりも軽い気体であること

2-3.アンモニアに最適

上記の条件に当てはまる上方置換法に最適な気体はアンモニアです。アンモニアを溶かし込んだアンモニア水という水溶液があるように、アンモニアは非常に水に溶けやすい性質を持っています。また、空気よりも軽い気体の中の1つです。

水に溶けやすく、かつ空気より軽い気体はアンモニアだけと覚えておけばいいでしょう。水に溶けやすい気体はたくさんありますが、どれも空気よりも重い気体です。そもそも空気より軽い気体自体、それほど数があるわけではないので、上方置換法 イコール アンモニアで覚えておくといいですね。

\次のページで「3.アンモニアの生成実験」を解説!/

3.アンモニアの生成実験

アンモニアを発生させる実験としては、塩化アンモニウムと水酸化カルシウムを加熱する実験が知られています。

2NH4Cl + Ca(OH)2 → CaCl2 + 2H2O + 2NH3

または塩化アンモニウムと水酸化ナトリウムを混ぜ、少量の水を混ぜるという方法もありますね。

NH4Cl + NaOH → NaCl + H2O + NH3

もしくはアンモニア水を加熱するという方法もあります。

3-1.アンモニアの性質

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実験によりアンモニアを発生させて捕集した後は、その気体が本当にアンモニアであるかを確認する必要がありますね。アンモニアは特有の刺激臭があるので、においを嗅いでみるという方法もあります。しかし安全性を考慮するのであれば、別の方法を試したいところですね。

アンモニアといえばアンモニア水。アルカリ性水溶液の代表するものの1つです。このアルカリ性という性質を指示薬で確認しましょう。

・水で濡らした赤色リトマス紙を気体に近付けると、リトマス紙の色が赤から青に変わる

・気体を水に溶かし、フェノールフタレイン溶液が反応することを確認する

この2つが一般的に用いられます。

4.なぜ水素は上方置換法を使わない?

ここでよく聞かれる上方置換法に関する質問を見てみましょう。それは「空気より軽い水素は上方置換法を使っちゃだめなの?」というものです。

確かに空気より軽いという条件は、上方置換法を使うべき気体の条件に当てはまっていますね。水素は水に溶けにくい気体なので水上置換法でもいいのはわかるけれど、上方置換法でもいいのでは?」と考える人も多いでしょう。

それには2つの理由があるのです。

4-1.安全上の理由

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アンモニアが本当にアンモニアであるかどうかを確かめる方法は先述しましたね。それでは、気体が水素であることを確かめる方法が何であったか覚えていますか?

そうですね。このポンという音は、実は小さな爆発が生じている証拠なのです。

2H2 + O2 → 2H2O

このように、酸素と混じり合うことで引火し、大きな爆発を起こす可能性があります。この水素爆発実験を学校で行い、大きな被害が出たこともあるほどです。

少量の水素であればごく小規模な爆発で済みますが、そのリスクを減らすためにも、酸素と混じり合うことのない水上置換法が選ばれています。

4-2.捕集した気体の純度

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2つめの理由は、より純度の高い気体を得るためです。先述したように、上方置換法によって集めた気体は空気と混じり合う可能性が大きく、それでは目的の気体のみを捕集することが困難になります。

一方で水上置換法はまず捕集びんや試験管の中を水で満たすことにより、その後捕集びんや試験管に集められた気体は実験によって生成した気体だけになるはずです。もちろん実験に使用した器具の中に含まれていた空気が混じり合う可能性もゼロではありませんが、上方置換法に比べればはるかに純度の高い気体であることは間違いありません。

 

たしかに空気より軽い水素ですが、安全性や実験の精度を上げるためには上方置換法よりも水上置換法を使うべきなのがわかりますね。同様に、もし空気より重い気体であっても水に溶けにくい性質を持つのであれば下方置換法ではなく水上置換法を使うのがよいと理解できるでしょう。

アンモニアの捕集は上方置換法!

水上置換法、下方置換法に続く3つめの気体捕集法は上方置換法です。上方という名前の通り、気体が上に集まる、つまり空気よりも軽い気体を集める方法ですね。

水に溶けやすく水上置換法が使えない。空気よりも軽いために下方置換法が使えない。両方の条件を満たすアンモニアの捕集に最適の方法です。

さらに、水素のように空気より軽い気体であっても、安全性や実験の精度を考えるのであれば上方置換法が不向きである場合があります。あくまでも、水に溶けやすい気体で空気より軽い気体である場合に用いられる方法であることを覚えておきたいですね。

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化学

空気より軽い気体の捕集法「上方置換法」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「上方置換法」について勉強していこう。

水上置換法、下方置換法については理解できたか?この3つはセットで覚えておきたい気体の収集法です。

気体の性質に注目して考えてみよう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.上方置換法とは

上方置換法-svg.svg
By すじにくシチュー投稿者自身による作品, CC0, Link

上方置換法は上図を見てもわかるように、逆さにした捕集びんや試験管に集める気体の捕集方法です。水中で気体を集める水上置換法、捕集びんや試験管の底に気体を集める下方置換法とは異なり、容器の上部に気体を集める方法になります。

2.捕集する気体の条件を考える

それでは、実際に上方置換法を用いて捕集する気体の条件と例を見ていきましょう。

2-1.水に溶けやすい

image by iStockphoto

ここで少し復習です。気体捕集法でまず初めに解説したのは水上置換法でしたね。水中で気体を集めることで、より純度の高い気体を集めることのできる方法でした。しかし、これが使えるのは水に溶けにくい気体であることが最大の条件でしたよね。

上方置換法を選択するためのチェックポイントは、水に溶けやすい気体であるかどうかです。水に溶けやすい気体に水上置換法は使えません。そこで、次に2つめの条件を考える必要があるのです。

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