ここでは仕事の原理について解説しよう。そもそも仕事がわからない者もいるんじゃないか。力学でいう仕事は、物体を動かすのに必要なエネルギーのようなものです。そして、仕事の原理とは、その結果が同じなら、どんなやり方でも仕事量は変わらないことを示している。
ここでは、力学を得意とするライター、ユッキーと一緒に解説していこう。

ライター/ユッキー

大学で建築構造を専攻しており、力学分野の知識を持っているライター。

1 仕事の原理とは

image by iStockphoto

仕事の原理とは、同じ物体を同じ距離だけ動かす(仕事をする)ならば、どのような方法で動かそうとも、仕事量は変わらないことをいいます。過程が異なっても、結果が同じであるならば仕事量はかわらないのです。

これは、仕事について理解を深めれば納得しやすくなるかと思います。

詳しく説明する前に、まずは仕事について説明しましょう。

2 そもそも仕事とは

ここでいう仕事とは、会社で働く仕事とは意味が異なります。

仕事とは、ある力が物体に加わり、物体を移動させたとき、その力が物体にした力学的な値のことです。噛み砕いて言うならば、どれだけの力でどれだけの距離動かしたかを表す値ですね。ただし、仕事は物体が力と同じ方向に動いた場合のみ計算できます。

2-1 仕事を表す式

2-1 仕事を表す式

image by Study-Z編集部

仕事を表す式はこのようになります。

この式からわかるように、仕事は力と距離の掛け算で求められますね。また、このcosθは、力Fの向きと物体の動く向きとのなす角θから求めます。

なぜcosθが必要かというと、先程言った、仕事は力と物体の動く方向が同じときのみ計算できる、というルールがあるからです。

\次のページで「2-2 式の解説」を解説!/

2-2 式の解説

2-2 式の解説

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例えば、図の1のように力と物体が移動する方向が同じならば、力と距離の積で求められます。W=Fxとなるのです。

2のように、力の向きと物体が移動する方向が真逆のとき、仕事の値は負となり、W=-Fxとなります。

3の例のように力の向きと物体が移動する方向とが直交する場合はどうでしょう。この場合、力の向きと同じ軸方向には動いていないと言えますね。そのため、x=0となり、W=0となります。

では、4のように力の向きと物体の移動する方向とが斜めの場合はどうでしょうか。これまでの例のように、同軸方向は計算でき、直交方向は0となります。ここで、斜めの力をその2つの成分に分解しましょう。そのうち、移動方向と同じ成分だけを求めればいいので、cosθをかけることで同軸方向の成分を取り出します。そのため、先の式のようにW=Fxcosθとなりますね。

なお、1の例のように力と物体の移動する向きが同じ場合、θ=0と言えます。cosθ=1であるため、W=Fxcosθが成り立ちますね。

以上が仕事の説明です。

仕事の原理は、同じ物体を同じ距離だけ動かすとき、どのような方法でもこのWの値が変わらないことを示します。

3 仕事の原理を詳しく

3 仕事の原理を詳しく

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例えば、重いボールを高い位置にある台に動かすことを考えましょう。動かす方法としては、まず、持ち上げることが考えられます。

しかし、重い物を持ち上げることは疲れますね。そこで、台に板を立てかけてそこを転がして移動させましょう。こうすれば、そのまま持ち上げるよりも楽に移動させられると思います。

しかし、実はこの2つの方法はどちらも仕事Wは変わりません。それが仕事の原理です。

3-1 実際に計算してみよう

3-1 実際に計算してみよう

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具体的に数値を決めて計算してみましょう。

20kgのボールを2mの高さまで持ち上げる場合の仕事を考えましょう。鉛直上向きに持ち上げる場合と、長さ4mの坂を作って転がして移動させる方法を比較しましてみます。なお、計算しやすいよう重力加速度は10[m/s^2]で摩擦はないものとしますね。

まず、そのまま持ち上げる場合について考えましょう。W=Fxcosθを用います。力Fは、ここではF=mgと釣り合う力であるので、

F=20×10=200[N]

です。また、2mの高さまで持ち上げ、力の向きと移動する方向は同じなので、求める仕事Wは、

W=Fxcosθ=200×2×cos0=400[J]

と求められます。

では、次に斜面を転がす場合を考えましょう。

ここでの力も重力F=mgが関係してきますが、ボールが斜面を動くため、力の成分は斜面方向と同じ向きになります。ここで、斜面は30度ですので三角比より、

F=mg×2/4=20×10×1/2=100[N]

です。

また、移動距離は斜面の長さに等しいため、x=4[m]となります。

よって、W=100×4=400[J]です。

\次のページで「過程がどうあれ結果は同じ」を解説!/

ここでは、考えやすいよう力の向きを斜めの成分に変換して計算しました。

公式に当てはめて計算しようとすると、

W=Fxcosθ=mgcos60=20×10×4×1/2=400[J]です。

このように、cosθは自分で考え60°と出す必要があります。

公式にとらわれず図より力の成分を変換するか、公式に当てはめて計算するかは問題によって解きやすさが変わるため、どちらかを選択してください。

以上のように、そのまま持ち上げても、斜面を転がしても仕事量は変化しませんでした。これが仕事の原理です。

持ち上げる場合は移動距離が短いぶん、大きな力が必要で、対して転がす場合は力が小さくて済むが、転がす必要のある距離が長いため、このようなことが起こります。

過程がどうあれ結果は同じ

仕事の原理は、過程が違えども仕事量が変わらないということを理解してもらえましたか。

同時に仕事の計算方法についても学んでもらいました。ここを間違えずに考えてみてください。

" /> 力学における「仕事」と「仕事の原理」を例を交えて理系ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
物理物理学・力学理科

力学における「仕事」と「仕事の原理」を例を交えて理系ライターがわかりやすく解説!

ここでは仕事の原理について解説しよう。そもそも仕事がわからない者もいるんじゃないか。力学でいう仕事は、物体を動かすのに必要なエネルギーのようなものです。そして、仕事の原理とは、その結果が同じなら、どんなやり方でも仕事量は変わらないことを示している。
ここでは、力学を得意とするライター、ユッキーと一緒に解説していこう。

ライター/ユッキー

大学で建築構造を専攻しており、力学分野の知識を持っているライター。

1 仕事の原理とは

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仕事の原理とは、同じ物体を同じ距離だけ動かす(仕事をする)ならば、どのような方法で動かそうとも、仕事量は変わらないことをいいます。過程が異なっても、結果が同じであるならば仕事量はかわらないのです。

これは、仕事について理解を深めれば納得しやすくなるかと思います。

詳しく説明する前に、まずは仕事について説明しましょう。

2 そもそも仕事とは

ここでいう仕事とは、会社で働く仕事とは意味が異なります。

仕事とは、ある力が物体に加わり、物体を移動させたとき、その力が物体にした力学的な値のことです。噛み砕いて言うならば、どれだけの力でどれだけの距離動かしたかを表す値ですね。ただし、仕事は物体が力と同じ方向に動いた場合のみ計算できます。

2-1 仕事を表す式

2-1 仕事を表す式

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仕事を表す式はこのようになります。

この式からわかるように、仕事は力と距離の掛け算で求められますね。また、このcosθは、力Fの向きと物体の動く向きとのなす角θから求めます。

なぜcosθが必要かというと、先程言った、仕事は力と物体の動く方向が同じときのみ計算できる、というルールがあるからです。

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