力のつり合いは、その言葉のとおり、物体にかかっている力がつり合っており、均衡の取れている状態のことです。そのため、傍目から見ればなにも動いていないように見える。例えば綱引きで両チームがすごい力で引っ張っても綱が動いていないときがそうです。逆にいえば、綱が動くときはどちらかの力の方が大きくなり、力のつり合いがとれなくなったときなんです。

今回は、力学を専攻しているライター、ユッキーと一緒に解説していこう。

ライター/ユッキー

建築構造力学を専攻している現役学生。中高での物理の知識を応用するため、それらの解説を行っている。

1 力のつり合いとは

image by iStockphoto

力のつり合いは、力学において基礎的な事柄です。この力のつり合いを理解しておかなければ力学分野の大半の問題を考えることはできません。つまり、中高大とより専門的な内容となってもこの力のつり合いを理解していなければ、その大半の問題は解けないことを意味します。

力のつり合いとは、ある物体に対して用いる言葉です。そのとおり、物体に加わっている力がつり合っている状態を示しています。では、力がつり合っている状態とは、どういう状態かを説明しましょう。

1-1 つり合いがとれるもの

1-1 つり合いがとれるもの

image by Study-Z編集部

物体には、様々な力が加わっています。例えば、身近なものでいえば重力がありますね。そのほか主に物理の問題として出てくるのは、ばねや糸の張力が加わっているものもあります。また、シンプルに物体に力が加わっている場合もありますね。これらの共通点はF=maで表される点です。

それら、さまざまな力が物体に加わっているとき、それら力の総和が0になる状態を、力がつり合っていると表現します。

2 例をみながら解説...横向きの力

2 例をみながら解説...横向きの力

image by Study-Z編集部

では、力のつり合いについて考えます。ここで覚えておいてほしいことは、力のつり合いを考える際は力の向きが同じものどうしで考えることです。

例えばこの図のように、両方から同じ力で引っ張られている物体を考えます。同じ力で反対方向から引っ張られているため、物体が動かないことは想像できるでしょうか。これを式で表すと以下のようになります。なお、ここでは右向きが正です。

F-F=0

力の大きさが等しいため、計算をすれば0となりますね。このように、物体に加わっている力の和が0になっている状態のことを、力がつり合っているといいます。

2-1 縦方向にも

ここでは2つの力を加えていますが、実はまだ力が加わっています。そう、重力です。重力は鉛直方向に加わっているため、水平方向に加わっている力とは向きが異なるため計算できません。ここで、作用反作用の法則を思い出してください。この物体には重力と同じ大きさで垂直抗力Nが働いていますね。そのため、

mg-mg=0

と、こちらの向きでも力の和が0になっています。これで、水平方向、鉛直方向共につり合っていることが確認できました。

基本的に、力がつり合っているというと、このように水平方向と鉛直方向の力の和がそれぞれ0になっている状態をいいます。

\次のページで「3 力がつり合っているとき、運動状態は変わらない」を解説!/

なお、注意してほしいのですが、単位をそろえることに気をつけてください。力はF=maで表されます。そのため、この例のように重力を考える際はmの値ではなく、mgと計算する必要があります。同様に、ばねの力を考える際もF=kxとして考えることに気を付けてください。

3 力がつり合っているとき、運動状態は変わらない

3 力がつり合っているとき、運動状態は変わらない

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力がつり合っているとき、物体の運動状態は変わりません。例えば物体が静止していればそのまま静止し続けており、また一定の速度で運動しているものはそのまま運動し続けるのです。

少し詳しく言い換えましょう。物体の運動状態が変化するときは力が加わるときです。静止している物体が動き始めるときや、動いている物体が加速するときは物体に力が加えられてそうなります。ボールを蹴って転がすときなどがそうです。

ここで、力がつり合っている状態は、力の和が0になっていることを思い出してください。そのため、力がつり合っている物体は、ニアリーイコールで力が加わっていないようなもので、その運動の状態が変化しないと言えるのです。

4 力がナナメのうえに大きさがわからない

4 力がナナメのうえに大きさがわからない

image by Study-Z編集部

先ほどは水平方向と鉛直方向それぞれに力が加わっている状態を例に出しました。しかし、力の全てが全て水平鉛直に加わっているわけではありませんよね。そのうえ、実際の問題では力の大きさを求めるものもあります。

以上を踏まえて、次に発展的な例を示しましょう。

天井から重さmの球が2本の糸で吊られています。この糸が45°の角度で静止しているときの、糸の張力S1とS2を求めてみましょう。

4-1 解く前の取っ掛かり

ここで考えるべき事柄はふたつあります。ひとつは、先ほどのように水平方向と鉛直方向のつり合いを考えることです。静止し続けているので、これらの力はつり合っていることがわかります。

もうひとつは、図形の性質です。この図は左右対称であるので、加わっている力も同様に左右対称になります。球を吊っている2本の糸は左右対称ですので、鉛直成分であるmgをそれぞれ2等分して受け持っていることがわかるでしょうか。

球を吊っている2本のナナメの糸に着目すると、水平成分はつり合っているので、S1(x)=-S2(x)ということがわかります。また、糸がなす角が45°であることから、直角三角形の辺の比1:1:√2を思い出してください。ここから、S1またはS2の鉛直成分を求めれば、辺の比からそれぞれの水平成分も求められます。

\次のページで「4-2 実際に解いてみよう」を解説!/

4-2 実際に解いてみよう

以上のことから、S1に着目すると、

S1(y)=mg/2

辺の比よりS1(x)=mg/2となり、同様に

S1=(√2)mg/2

となります。また、左右対称なので、

S2=(√2)mg/2

です。なお、Sの向きは水平鉛直それぞれに対して斜めなので、大きさで表しています。

このように、考え方さえみつけてしまえば計算自体は難しくありません。

力のつり合いは、足して0になる

例題を通して力のつり合いについてイメージを持てましたか。何度か説明したように、足して0になることを守ってください。

力だけでなく、モーメントなど、つり合いを意識する要素は他にもありますので、これを応用していただければと思います。  

" /> 力のつり合いについて力学専攻ライターが例を交えて5分でわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

力のつり合いについて力学専攻ライターが例を交えて5分でわかりやすく解説

力のつり合いは、その言葉のとおり、物体にかかっている力がつり合っており、均衡の取れている状態のことです。そのため、傍目から見ればなにも動いていないように見える。例えば綱引きで両チームがすごい力で引っ張っても綱が動いていないときがそうです。逆にいえば、綱が動くときはどちらかの力の方が大きくなり、力のつり合いがとれなくなったときなんです。

今回は、力学を専攻しているライター、ユッキーと一緒に解説していこう。

ライター/ユッキー

建築構造力学を専攻している現役学生。中高での物理の知識を応用するため、それらの解説を行っている。

1 力のつり合いとは

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力のつり合いは、力学において基礎的な事柄です。この力のつり合いを理解しておかなければ力学分野の大半の問題を考えることはできません。つまり、中高大とより専門的な内容となってもこの力のつり合いを理解していなければ、その大半の問題は解けないことを意味します。

力のつり合いとは、ある物体に対して用いる言葉です。そのとおり、物体に加わっている力がつり合っている状態を示しています。では、力がつり合っている状態とは、どういう状態かを説明しましょう。

1-1 つり合いがとれるもの

1-1 つり合いがとれるもの

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物体には、様々な力が加わっています。例えば、身近なものでいえば重力がありますね。そのほか主に物理の問題として出てくるのは、ばねや糸の張力が加わっているものもあります。また、シンプルに物体に力が加わっている場合もありますね。これらの共通点はF=maで表される点です。

それら、さまざまな力が物体に加わっているとき、それら力の総和が0になる状態を、力がつり合っていると表現します。

2 例をみながら解説…横向きの力

2 例をみながら解説...横向きの力

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では、力のつり合いについて考えます。ここで覚えておいてほしいことは、力のつり合いを考える際は力の向きが同じものどうしで考えることです。

例えばこの図のように、両方から同じ力で引っ張られている物体を考えます。同じ力で反対方向から引っ張られているため、物体が動かないことは想像できるでしょうか。これを式で表すと以下のようになります。なお、ここでは右向きが正です。

F-F=0

力の大きさが等しいため、計算をすれば0となりますね。このように、物体に加わっている力の和が0になっている状態のことを、力がつり合っているといいます。

2-1 縦方向にも

ここでは2つの力を加えていますが、実はまだ力が加わっています。そう、重力です。重力は鉛直方向に加わっているため、水平方向に加わっている力とは向きが異なるため計算できません。ここで、作用反作用の法則を思い出してください。この物体には重力と同じ大きさで垂直抗力Nが働いていますね。そのため、

mg-mg=0

と、こちらの向きでも力の和が0になっています。これで、水平方向、鉛直方向共につり合っていることが確認できました。

基本的に、力がつり合っているというと、このように水平方向と鉛直方向の力の和がそれぞれ0になっている状態をいいます。

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