ポジティブな感想、ネガティブな感想どちらもあろう。いずれにせよ、雪があると不便な時がある。そんな時に活躍するのが融雪剤。雪や氷の融点を下げて、温度が0度以下でも凍らないようにしてくれる。本来凍ってるはず雪が水になってくれるわけです。
そんな、融雪剤について理解ライターR175と解説していきます。
ライター/R175
理科教員を目指すブロガー。前職では高温電気炉を扱っており熱関係に詳しい。教科書の内容と身近な現象を照らし合わせて分かりやすく解説する。
1.なぜ雪を溶かすのか?
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なぜ道路の雪や氷を溶かす必要があるのか?それは、道路を滑りにくくして、より安全に通行できるようにするためです。
当然、氷や雪より水の方が滑りにくいわけですが、そもそも「なぜ雪や氷の上は滑りやすい」のか?次項で見ていきます。
2.雪や氷の上で滑りやすい理由
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雪や氷の上では滑りやすい理由を考えるにあたりまず、氷を分子レベルに拡大してみましょう。
液体の水と同様にH2Oの分子が規則正しく結合しています。四方八方全て他の分子と繋がっている内部の水分子は3箇所で結合しているもの。他の分子によってガッチリ拘束されていて動けません。
しかし、表面の水分子はどうでしょうか?他の水分子と結合しているのは2箇所だけです。
ここで考えてみましょう。物体を3箇所固定するとどうやっても動けませんね。ポスターを壁に貼る場合、3箇所留めれば一応固定できます。
しかし2箇所だけだとどうでしょうか?ポスターがめくれてしまいますね。
つまり、2箇所固定だとクルクル回転することが可能ということ。
それと同じことが氷表面の水分子でも起こっています。2箇所しか結合していない水分子はクルクル回ることが可能。
その上に物体が乗ったら滑りそうですよね。
床の上に真ん丸の小さいB.B弾がいっぱい転がっているようなイメージ。
滑り放題ですね。
3.氷より水の方が滑りにくい
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言うまでもなく雪=氷。
水の融点である0度を下回れば氷になるし、0度より上なら水になります。
2項で述べた通り、氷の上では滑り放題。一方、道路に水があったらどうなるか?またもや分子レベルで見ていきましょう!
液体の水は分子同士は繋がっているものの、配列は入れ替わり放題。そして、最表面は安定しません。氷の時より運動が激しいため、表面にじっとせず他の分子と繋がろうとします。
液体の水分子は表面にはあまり行きたがらず、なるべく内側に行こうするもの。ある程度まとまっている方が安定なので、水滴になるわけです。
液体の水分子は氷表面の水分子のようにコロコロ回ることは不可。周りの水分子や道路、物体と繋がろうとしています。
床の上に飴玉があるようなイメージ。
何もない床の上よりは滑りやすいかもしれませんが、B.B弾ほど滑りやすくはなりませんね。
4.滑ったらなぜ危ないのか?
雪や氷の上でも、車のブレーキを踏めば「いつか」は止まれます。でも「いつか」です。すぐには止まれません。
「しばらく」進まないと止まれないのですが、具体的にどれくらいかかるのか?
どんな道でも、ブレーキを踏み始めてから停止するまでいくらか進んでしまうもの。この時進んでしまう距離を「制動距離」といいます。
滑りやすい(摩擦係数が小さい)道では、この「制動距離」が長くなってしまうから危険なのです。
ブレーキを踏んでもしばらくは止まれませんよということ。
それぞれのコンディションの路面はどれくらい滑りやすいか?
以下、乾いた道、濡れた道、圧雪路の摩擦係数。数字が小さいほど滑りやすいです。
乾いた道:0.7〜0.9
濡れた道:0.4〜0.6
圧雪路:0.2〜0.3
凍結路:0.1
濡れた道は乾いた道の半分程度の値、圧雪路だと1/3くらい、凍結路は1/8くらいの値ですね。
言い換えると、制動距離は
濡れた道:2倍
雪道:3倍
凍結路:8倍
例えば、乾いた道だと30km/hの車は4m程度で止まれます(フルブレーキ仮定)が、濡れた道だと8m、雪道で12m、凍結路だと32m進むまで止まれません。
危ないですね。濡れた道でも制動距離は伸びますが、雪や氷の道よりははるかにマシです。
雪を溶かせば安全性は上がります。
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