今回は、電気回路を解くうえで非常に大事なキルヒホッフの法則について解説していきます。

電気回路のキルヒホッフの法則は、回路内の電流と電圧はそれぞれ足し合わせるとゼロになる、という法則を説明したものです。ですが、言葉だけではイメージが難しいから、実際に解いて慣れてもらうぞ。

高校、大学、大学院と電気を専攻しているライターさとるめしと一緒に解説していきます。

ライター/さとるめし

工業高校電気科卒、大学、大学院と電気工学を専攻している現役大学院生。「電気はよくわからない…」と言う友人や知人に、どうすればわかりやすく電気について理解してもらえるか、日々考えながら過ごしている。

キルヒホッフの法則とは?

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キルヒホッフの法則を調べると、実は電気回路や熱、エネルギーに関する法則など様々なキルヒホッフの法則が出てきます。今回は、その中でも電気回路に関するキルヒホッフの法則について考えていきましょう。

電気回路に関するキルヒホッフの法則は、電気回路を解く際に重要になる考え方です。

キルヒホッフって?

ここまでですでに何度出てきたのか、というくらい出てきた言葉ですが、キルヒホッフとは一体何なのでしょうか。

キルヒホッフの法則と名のつく法則は、すべてグスタフ・キルヒホッフという学者によって発見されました。発見した学者にちなんで、このような名前がつけられたのです。

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電気回路におけるキルヒホッフの法則には、2つのルールが存在します。

第一法則:電気回路の任意の分岐点について、そこに流れ込む電流の和は、そこから流れ出る電流の和に等しい。

第二法則:電気回路の任意の一回りの閉じた経路について、電位差の和は 0 となる。

この二つの法則は、電気回路を解くうえで非常に重要な考え方となります。次に、それぞれの法則が具体的にどのような状態を示すのか、見ていきましょう。

\次のページで「第一法則について」を解説!/

第一法則について

第一法則を改めて確認します。

電気回路の任意の分岐点について、そこに流れ込む電流の和は、そこから流れ出る電流の和に等しい。

第一法則は、電流に関する法則であることがなんとなくわかりますね。この法則では、回路内を流れる電流はどのような回路であろうとも回路内全体の電流は増減しないということを示しています。例えば、並列回路では電流が分岐していきますね。その分岐した電流は、いずれまた元の大きさの電流に戻ることは、感覚的にわかると思います。これを法則として明確に示したのが、このキルヒホッフの第一法則です。

第二法則について

では次に、第二法則について確認します。

電気回路の任意の一回りの閉じた経路について、電位差の和は 0 となる。

第二法則は、電位差(電圧)の話であることが分かるかと思います。供給される電圧、抵抗によって下がっていく電圧は等しいということを示したのが、キルヒホッフの第二法則です。

実は、第一法則も第二法則も言葉は少しややこしいですが、オームの法則に関係する考え方であるということがわかります。オームの法則を拡大解釈することで、より複雑な電気回路をわかりやすく解くことができるのが、キルヒホッフの法則の特徴といえるのです。

電位差って?

電位差とは、電圧とほぼ同じ意味です。電圧とはそもそも、電流を押し出す力のことですが、この押し出す力は抵抗によって徐々に小さくなります。これは、電流のもととなる電荷の持つエネルギーが少なくなることが原因なのですが、このエネルギーの高低差を電位差と呼ぶのです。

\次のページで「キルヒホッフの法則を解きながらマスターしよう」を解説!/

キルヒホッフの法則を解きながらマスターしよう

キルヒホッフの法則を解きながらマスターしよう

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ここまで、言葉でキルヒホッフの法則を説明してきました。しかし、実際に電気回路を解いてみないと、この法則を本当に理解することはできません。この法則がどんな場面でどのように活かせるのか、実際に回路を解きながら考えてみます。

今回例題として考える電気回路は、図の回路です。パッと見た印象では、なかなかとっつきにくい回路ですよね。こんな複雑な回路にこそ、キルヒホッフの法則が適応できるのです。

1. 電気回路の部屋を決める

1. 電気回路の部屋を決める

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回路図を見てみると、一つの電圧と二つの抵抗が直列につながった回路が、合体しているように見えませんか?この考え方は、キルヒホッフの法則を使う上で最も大事な考え方になります。まず回路を見たら、その回路をさらに分解できないか見てみましょう。

といっても、最初はなかなか難しいです。そこで、電圧を扉と考え、その扉がどこの扉の部屋なのかを探してみます。電圧という扉があれば、その扉が区切っている部屋もあるはずです。今回は、青と赤の点線で囲った2つの部屋を考えてみます。

2. 電流の分岐点を決める

2. 電流の分岐点を決める

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では、電流の動きを確認します。図の青い丸で囲った部分が、電流の分岐地点です。この分岐点を基準に、電流がどの向きで流れていくのか式で考えていきます。

分岐点を見ると、I1とI2が合流するとI3になるということがわかりますね。それを式で表すと、図の下のようになります。

3. 部屋の中の電位差を考える

3. 部屋の中の電位差を考える

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さきほど分けた、青い点線の回路を見てみます。この部分だけ見れば、ただの直列回路なのでV1がR1とR3での電位差の合計であることがわかりますね。この時、V2やI2の存在は無視して考えます。式を作るとき、電流の向きに要注意です!電圧の向きを基準に、電流の向きを考えてます。

なお、赤い点線で囲んだ部分も同様に考えることができますので、式を作ってみましょう!

\次のページで「4. 部屋ごとの電位差を連立方程式として解く」を解説!/

4. 部屋ごとの電位差を連立方程式として解く

4. 部屋ごとの電位差を連立方程式として解く

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ここまでで、電流の式と電圧ごとの二つの式ができました。この3つの式すべてを連立方程式とすることで、この回路全体の電圧や電流、抵抗を求めることができます。

ちなみに、場合によっては一つの部屋(閉回路)に電圧が複数ある場合があるので、その場合は左辺の電圧の合計を求めましょう。その際も電圧の向きに注意です。

キルヒホッフの法則で電気回路をマスターしよう

キルヒホッフの法則は、電気回路を解くうえで非常に重要となります。今回紹介した電気回路以外にも、様々なパターンがありますが、このような流れで解けば必ず答えにたどりつくはずです。

電気回路におけるキルヒホッフの法則をうまく使えるようになれば、大部分の電気回路の問題は解けるようになりますよ!

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物理理科電磁気学・光学・天文学

【物理】「キルヒホッフの法則」は「電気回路」を解くカギ!理系大学院生が5分でわかりやすく解説

今回は、電気回路を解くうえで非常に大事なキルヒホッフの法則について解説していきます。

電気回路のキルヒホッフの法則は、回路内の電流と電圧はそれぞれ足し合わせるとゼロになる、という法則を説明したものです。ですが、言葉だけではイメージが難しいから、実際に解いて慣れてもらうぞ。

高校、大学、大学院と電気を専攻しているライターさとるめしと一緒に解説していきます。

ライター/さとるめし

工業高校電気科卒、大学、大学院と電気工学を専攻している現役大学院生。「電気はよくわからない…」と言う友人や知人に、どうすればわかりやすく電気について理解してもらえるか、日々考えながら過ごしている。

キルヒホッフの法則とは?

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キルヒホッフの法則を調べると、実は電気回路や熱、エネルギーに関する法則など様々なキルヒホッフの法則が出てきます。今回は、その中でも電気回路に関するキルヒホッフの法則について考えていきましょう。

電気回路に関するキルヒホッフの法則は、電気回路を解く際に重要になる考え方です。

キルヒホッフって?

ここまでですでに何度出てきたのか、というくらい出てきた言葉ですが、キルヒホッフとは一体何なのでしょうか。

キルヒホッフの法則と名のつく法則は、すべてグスタフ・キルヒホッフという学者によって発見されました。発見した学者にちなんで、このような名前がつけられたのです。

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電気回路におけるキルヒホッフの法則には、2つのルールが存在します。

第一法則:電気回路の任意の分岐点について、そこに流れ込む電流の和は、そこから流れ出る電流の和に等しい。

第二法則:電気回路の任意の一回りの閉じた経路について、電位差の和は 0 となる。

この二つの法則は、電気回路を解くうえで非常に重要な考え方となります。次に、それぞれの法則が具体的にどのような状態を示すのか、見ていきましょう。

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