今回は「飽和水溶液」について勉強していこう。

水溶液というワードは何度も出てきたが、飽和とつくからには特別な意味がある。それを理解するために必要なのが、前回解説した「溶解度」の知識です。

1つ1つ理解を深めていこう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.溶解度を理解したら次のステップ!

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前回溶解度について解説をしましたね。簡単におさらいをしてみましょう。

溶解度とは、ある溶媒に対して溶解できる溶質の限界量で、一般的に溶媒100gあたりに溶ける質量gで表される。

同量の溶媒における溶解度は温度によって増減し、物質によってその傾向は異なる。

塩は温度による溶解度の変化が少ないのに対し、砂糖は温度が上がるにつれて溶解度も大きくなる性質を持つ。

砂糖水で考えた場合、20℃の水には約200g、100℃のお湯には約500gの砂糖が溶けるという話しとしましたね。この場合、どちらが甘い砂糖水になるかは明白でしょう。

溶解度を理解することが、飽和水溶液への理解を深めることにつながります。それでは、飽和水溶液について詳しく見ていきましょう。

2.飽和水溶液とは

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飽和水溶液とは、一定量の水に溶ける限界量の溶質を溶かした溶液のことをいいます。これは溶解度まで溶質を溶かした水溶液のことで、水溶液における濃度の限界です。

言い換えれば、これ以上溶質を入れても溶けないよ!というギリギリまで溶液を濃くした状況といえるでしょう。ここに溶質を加えても溶けきらずに沈殿として残ってしまい、これ以上濃度が上がることはありません。

もし溶媒である水を増やした場合、確かに溶ける溶質の量は増えますが、濃度は下がりますね。さらに溶質を追加して溶けるようになるということは溶液に対する溶解度に達していないということです。水を増やしたのに伴って溶質を追加して濃度を上げていけば、結局のところ、濃度は同じ数値を示すのがわかるでしょう。

\次のページで「3.グラフから濃度を読み解く」を解説!/

3.グラフから濃度を読み解く

SolubilityVsTemperature.png
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こちらは前回も使用した溶解度のグラフ、溶解度曲線です。縦軸に溶解度、横軸に温度を示したもので、温度変化に伴う溶解度の増減を見ることができましたね。これを使って飽和水溶液の濃度を計算することができるのです。

ここで濃度計算についても復習しておきましょう。

質量パーセント濃度 = 溶質(g) / 溶液の全体量(g) × 100

このとき 溶液の全体量(g) = 溶質(g) + 溶媒(g) である

溶解度曲線より、塩化ナトリウム水溶液が20℃の場合の飽和水溶液濃度を計算してみましょう。

水溶液が20℃のとき、塩化ナトリウムの溶解度は36g/100gですね。(※通常の演習問題ではこういった数値が読み取りにくいグラフを使うのではなく、表や目盛りの入ったグラフから数値を引用する場合がほとんどです。)

つまり、溶質は36g、溶液全体の重さは136gなので、上記の式に当てはめると約26.5%という計算になります。つまり、20℃の塩化ナトリウム水溶液における限界濃度は約26.5%であり、この濃度の水溶液が飽和状態で、飽和水溶液であるということができるのです。

さらに100℃のときの溶解度を40g/100gとして考えると、約28.6%という飽和水溶液の濃度が求められます。これを見ても温度による濃度差はわずか2%と小さく、塩化ナトリウムの溶解度が溶液の温度に左右されないことがわかるでしょう。

4.実践的な演習にチャレンジ

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では、実践的な演習問題に挑戦してみましょう。どんな問題も基本的な解き方を1つずつマスターしていくことが何よりも大切です。コツがつかめてきたなと思ったら、教科書や参考書の応用問題にもチャレンジしていきたいですね。

1.100gの水に75gの砂糖を溶かして水溶液を作った。このときの質量パーセント濃度を求めよ。

2.濃度が26%の水溶液が150gある。この水溶液における溶質と溶媒の質量をそれぞれ求めよ。

3.塩36gを全てを使い、濃度6%の水溶液を作りたい。このときに必要な水の質量を求めよ。

答え

1.20%
 質量パーセント濃度 = 溶質(g) / 溶液の全体量(g) × 100 を用いて 25 / 125 × 100 = 20 となる。

2.溶質39g 溶媒111g
 質量パーセント濃度 = 溶質(g) / 溶液の全体量(g) × 100 を用いると溶質の質量が不明なので
 X / 150 × 100 = 26 つまり X = 26 × 150 ÷ 100 = 39
 溶質が39gとわかったので、150 - 39 = 111 で溶媒が求められる。

3.564g
 質量パーセント濃度 = 溶質(g) / 溶液の全体量(g) × 100 を用いると溶媒の質量が不明なので
 36 / (36 + X) × 100 = 6 つまり 6(36+X) = 36 × 100 より X = 564

計算方法は理解できたでしょうか。ここで先述した「み・は・じ」ならぬ「く・も・わ」を使った解き方も解説しておきますね。

濃度計算の場合、(く)比べられる量が溶質、(も)もとになる量が溶液全体、(わ)割合・濃度となります。

1.(わ)濃度を求めたいので く÷も= 25÷125 = 0.2 つまり 20%(×100で%表示に変える)

2.(く)溶質の質量を求めたいので も×わ= 0.26×150 = 39

 さらに 150-39 = 111 で溶媒も求められる

3.(も)溶液の質量がわからないので く÷わ= 36÷0.06 = 600

 600gの中には溶質である36gが含まれているので 600-36= 564

基本の解き方に加え、「く・も・わ」を覚えておくと計算がより簡単になることもありますよ。

\次のページで「5.溶解度を利用した再結晶」を解説!/

5.溶解度を利用した再結晶

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一定量の溶媒に溶ける溶質の量は決まっており、飽和水溶液では限界量まで溶質が溶けている状態です。一般的に固体は温度が上がるにしたがって溶解度は大きくなり、それだけ溶液の濃度は高くなっていきますね。

では、その逆を考えてみましょう。たくさん溶質が溶けている状態である高温の飽和水溶液を冷やしていったらどうなるでしょうか。

温度が下がっていけば、その温度に対する溶解度を超えた分の溶質は、溶液のままではいられずに結晶となって析出します。食塩水を加熱して水を蒸発させることで食塩の結晶を得るという方法はご存じですよね。これとは異なる方法で結晶を取り出す手順として、一度結晶を溶かし、再度結晶として析出させる再結晶が用いられるのです。

もし50℃で溶解度70の水溶液が100gあり、20℃では溶解度30であったなら、50℃から20℃に冷却することで溶解度の差である40gの溶質が結晶として析出することが予想できます。もしこの溶液が150gあったなら、溶液100gで溶質40gなので、溶液150gに相当するのは溶質60gであると比の関係でわかりますね。

溶解度まで溶質を溶かした飽和状態の水溶液

物質の溶解度がわかれば、そこから水溶液の濃度を求めることができます。それが溶液・温度における最大の濃度であり、その濃度に達した水溶液が飽和水溶液です。さらに、温度による溶解度の変化を利用すれば、溶液から純物質を結晶として取り出す再結晶も可能になります。

溶解度曲線や表の見方をマスターし、文章問題や計算問題に備えましょう。

計算に困ったら「く(比べられる量・比較対象)・も(もとになる量・全体量)・わ(割合・濃度)」を思い出してくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

限界濃度の水溶液!「飽和水溶液」の演習問題を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「飽和水溶液」について勉強していこう。

水溶液というワードは何度も出てきたが、飽和とつくからには特別な意味がある。それを理解するために必要なのが、前回解説した「溶解度」の知識です。

1つ1つ理解を深めていこう。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.溶解度を理解したら次のステップ!

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前回溶解度について解説をしましたね。簡単におさらいをしてみましょう。

溶解度とは、ある溶媒に対して溶解できる溶質の限界量で、一般的に溶媒100gあたりに溶ける質量gで表される。

同量の溶媒における溶解度は温度によって増減し、物質によってその傾向は異なる。

塩は温度による溶解度の変化が少ないのに対し、砂糖は温度が上がるにつれて溶解度も大きくなる性質を持つ。

砂糖水で考えた場合、20℃の水には約200g、100℃のお湯には約500gの砂糖が溶けるという話しとしましたね。この場合、どちらが甘い砂糖水になるかは明白でしょう。

溶解度を理解することが、飽和水溶液への理解を深めることにつながります。それでは、飽和水溶液について詳しく見ていきましょう。

2.飽和水溶液とは

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飽和水溶液とは、一定量の水に溶ける限界量の溶質を溶かした溶液のことをいいます。これは溶解度まで溶質を溶かした水溶液のことで、水溶液における濃度の限界です。

言い換えれば、これ以上溶質を入れても溶けないよ!というギリギリまで溶液を濃くした状況といえるでしょう。ここに溶質を加えても溶けきらずに沈殿として残ってしまい、これ以上濃度が上がることはありません。

もし溶媒である水を増やした場合、確かに溶ける溶質の量は増えますが、濃度は下がりますね。さらに溶質を追加して溶けるようになるということは溶液に対する溶解度に達していないということです。水を増やしたのに伴って溶質を追加して濃度を上げていけば、結局のところ、濃度は同じ数値を示すのがわかるでしょう。

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