今回は「先カンブリア時代」について学習していこう。

地球誕生から古生代が始まるまでのとても長い時代です。この間は、生命の誕生という現象が起こったドラマチックな時代ですが、わかっていないことも多くあるようです。

今回は地学の中でも特に地球の歴史が一番好きだというライター、対馬やまねこと一緒に学習していきます。

ライター/eastflower

大学院で教育学と地理学と地球科学(地学)を学んだ。特に地球の歴史と宇宙について興味があり、古生物や地質時代の図鑑を何時間でも眺められる地学マニア。

「先カンブリア時代」で1つの時代

先カンブリア時代のことについて学ぶ前に、地質時代の分け方についておさらいしておきましょう。

少しでも地学を勉強された方なら「カンブリア紀」とか「白亜紀」とかの地質区分を聞いたことがあると思いますが、「暁新世」「更新世」などのもっと細かい区分や、一方でその上位区分として「古生代」、「中生代」、「新生代」という区分もあります。今回ご紹介する「先カンブリア時代」は、「古生代」「中生代」などと同じ「」という時代区分です。

一般的に、時代区分は「」「」「」の3つで分けられますが、先カンブリア時代の時代区分は少し特殊になっていることを覚えておきましょう。

先カンブリア時代だけで地球が誕生してから現在までのおよそ9分の8の時間を占めているといいますから、いかに長い時間なのかわかりますね。

上記の筆者作成のグラフは、数字が「年数(単位:億年)」を表し、だいたい100%になるように積み上げたものです。「冥王代」「太古代」「原生代」だけで8割以上を占めていることがわかるでしょう。

先カンブリア時代とはどんな時代か

地球が誕生した先カンブリア時代のことがわかってきたのはここ数十年のことで、それまでは先カンブリア時代のことはほとんどわかっていませんでした。今でもよくわかっていない時代があるのですが、化石などによって時代がわかる顕生代に対して隠生代と呼びます。

先カンブリア時代の最初の約5億年間を冥王代と呼び、そのあとの約40億年前よりあとの生命が誕生していたのではないかといわれる時代が、太古代です。冥王代と原生代の境は地球上で発見された世界最古の岩石が見つかった時代に基づいているので、数十年後には変化しているかもしれません。

太古代のあと、酸素発生型光合成により酸素が発生した25億年前よりあとが原生代といわれ、そのあと、5億4100万年ごろに殻がある生物が現れる(化石がはっきりとしてくる)と時代が、古生代のカンブリア紀となります。

地球が誕生した冥王代ってどんな時代?

先カンブリア時代の冥王代のことは実は1970年代までほとんど謎のままでした。しかし、1970年代に入ると宇宙の開発が進み、月から持ち帰られた岩石や、ほかの天体の調査などから当時の地球の様子が少しずつ分かってきました。

地球が誕生したのはおよそ46億年前だといわれています。原始太陽系微惑星が互いに衝突を繰り返して原始惑星の1つとして地球が誕生し、その際に二酸化炭素などが微惑星に含まれていたため、気体になって水蒸気や二酸化炭素の原始大気を構成しました。

ところで、地球の誕生がなぜ46億年前かとわかるのかというと、隕石中にあるウラン129由来のキセノン129という物質を放射性同位体検査という検査で調べた結果で、火星や木星といった太陽系のほかの惑星もほぼ同時期に形成されたことがわかります。

マグマオーシャンを経て、原始海洋が形成された!

image by iStockphoto

そして、原始地球に微惑星が次々と衝突し、二酸化炭素による温室効果によって地球はマグマの海、いわゆるマグマオーシャンと化し、この際、地球内部にあった軽い物質は地表面に押し出され、重い物質が地球の中に沈み込み、地球のマントルを形成したと考えられています。
そのあと、地球に衝突する微惑星は次第に減り、地球は冷却され、水蒸気は液体となって原始海洋となりました。大気中の二酸化炭素は海洋に溶け込み、マグネシウムイオンカルシウムイオンと結びついて炭酸塩となって海底に堆積しました。

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最古のプレートの沈み込みが起こるなど、地球のシステムができあがった

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地球で現存するもっとも古いものが、西オーストラリアで発見された44億年前のジルコン粒子です。ジルコンは地球のあらゆる環境でも耐えられる鉱物なので、今日まで残っています。

地球最古の岩石といわれているのが、現在より約40億年前に形成されたカナダのスレーブ安定地塊で見つかったアカスタ片麻岩です。しかし、変成作用が大きいため、あまり参考になりません。

当時の様子を知ることができる岩石としてデンマーク領のグリーンランド(カナダの北東の方にあるあの大きな島です)のイスア地域で見つかった約38億年前の堆積石があります。

この岩石は、液体の水があり侵食・運搬・堆積の作用が働いていて、海洋が形成されていたことを示す証拠となっているのですが、これを発見したのは日本の丸山茂徳らの研究でした。この堆積岩は同時におそらくその当時からプレートテクトニクスがあったであろうことを示しています。

太古代には最初の生命が誕生した

冥王代の終わりから原生代の初めにかけて生物が誕生したといわれています。最初に存在した生物は強い酸性や高温の水中でも生きられる嫌気性の生物だったと考えられており、太陽からの紫外線を避けて生活していたそうです。

直接的な生命の化石ではありませんが、38億年前のイスア地域の岩石には生物由来と思われる炭素が含まれていることがわかっています。

生命が確かに存在した直接的な証拠は、35億年前の岩石からオーストラリアで発見された堆積岩(チャート)から見つかっており、これは、長さ数十マイクロメートルのフィラメントに似た化石です。

現存しているバクテリアによく似た構造をしていますが、これは熱水排出孔や隕石由来のアミノ酸をもとにして誕生したのではないかといわれていて、熱水噴出孔では、高温高圧化の状況でメタンや硫化水素、アンモニアや水素を含む熱水が噴出していて、そこでアミノ酸が合成されたのではないかと考察されています。

太古代末から原生代には光合成をする生物が現れた!

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時代は下り、太古代の末、そして約27億年前の原生代に入るとシアノバクテリアなどが光合成を始めました。これらの生物は太陽からの光エネルギーを使って有機物を分解できるように進化したのです。

このシアノバクテリアが集まり炭酸カルシウムが堆積したものがストロマトライトで、今でもオーストラリアのシャーク湾で見ることができます。そして、我々ヒトのような酸素を利用して呼吸をする好気性の生物が現れ、嫌気性の生物は深海に追いやられました。

地球が凍る!全球凍結(スノーボール・アース)とは?

原生代の初めには、地球が氷の塊のような全球凍結状態(スノーボール・アース)になりました。

このような状態は原生代初期(約23~22億年前)と後期(約7.5~6億年前)の2回起こっていることが確認されています。このことは当時の赤道付近の低緯度地域にも氷河の痕跡が残っていることからわかるのですが、全球凍結に至った詳しい経緯についてはわかっていません。

およそ23億年前に酸素の量が飛躍的に増大した!

約23億年前ころから酸素の量が飛躍的に増大し、海中の鉄と結びつき沈殿し、縞状鉄鉱層を形成しました。こんにち私たちが利用している鉄のほとんどはこの縞状鉄鉱層で採掘されたものです。そして、それと引き換えに酸素を嫌うウランの鉱床はこれ以後見られなくなりました。

そして、酸素が紫外線と反応してオゾンが形成され、オゾン層が形成されたのです。このおかげで今日の私たちは太陽からの強烈な紫外線から守られているのですね。

この酸素増加の要因は、光合成をおこなう生物の増殖だけではなく、生物の死骸などの有機物の分解に酸素が消費されなくなったこともあり、いったん炭素の循環から切り離された有機物は石油石炭となって私たちの暮らしを支えています。

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真核生物が登場した!

1回目の全球凍結の後、DNAを核内に持つ生物(真核生物)が登場しました。約21億年前のアフリカ・ガボンで見つかった最古の多細胞生物の可能性がある化石は数センチもありました。

2回目の全球凍結とエディアカラ生物群

2回目の全球凍結の後、約5.8億年前の地層からは、胚(受精卵)が発見されています。そして、体長1mを超える生物も現れ始めました。

これをエディアカラ生物群といい、ディキンソニア、キンベレラ、カルニオディスクスなどがその代表例です。現在の生物とは構造が大きく異なっており、やわらかい体をしていたと考えられており、世界各国から見つかっていますが、現在の生物とは別系統とされています。そして、原生代末に絶滅しました。

長すぎて語りつくせない先カンブリア時代

地球の8/9を占める先カンブリア時代はわからないことが多いですが、ここ数十年で分かってきたこともたくさんあります。これからの研究によってこれらの歴史の一端が明らかになるかもしれません。こうして我々が生きているのも全球凍結などの厳しい環境を生き抜いてきた生物たちがあるからなのですね。地球と宇宙を知ることによって自分たちがどのような歩みをたどってきたのか辿るのも地学の重要なテーマです。

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地学地質・歴史理科

「先カンブリア時代」ってどんな時代?地学マニアが5分でわかりやすく解説!

今回は「先カンブリア時代」について学習していこう。

地球誕生から古生代が始まるまでのとても長い時代です。この間は、生命の誕生という現象が起こったドラマチックな時代ですが、わかっていないことも多くあるようです。

今回は地学の中でも特に地球の歴史が一番好きだというライター、対馬やまねこと一緒に学習していきます。

ライター/eastflower

大学院で教育学と地理学と地球科学(地学)を学んだ。特に地球の歴史と宇宙について興味があり、古生物や地質時代の図鑑を何時間でも眺められる地学マニア。

「先カンブリア時代」で1つの時代

先カンブリア時代のことについて学ぶ前に、地質時代の分け方についておさらいしておきましょう。

少しでも地学を勉強された方なら「カンブリア紀」とか「白亜紀」とかの地質区分を聞いたことがあると思いますが、「暁新世」「更新世」などのもっと細かい区分や、一方でその上位区分として「古生代」、「中生代」、「新生代」という区分もあります。今回ご紹介する「先カンブリア時代」は、「古生代」「中生代」などと同じ「」という時代区分です。

一般的に、時代区分は「」「」「」の3つで分けられますが、先カンブリア時代の時代区分は少し特殊になっていることを覚えておきましょう。

先カンブリア時代だけで地球が誕生してから現在までのおよそ9分の8の時間を占めているといいますから、いかに長い時間なのかわかりますね。

上記の筆者作成のグラフは、数字が「年数(単位:億年)」を表し、だいたい100%になるように積み上げたものです。「冥王代」「太古代」「原生代」だけで8割以上を占めていることがわかるでしょう。

先カンブリア時代とはどんな時代か

地球が誕生した先カンブリア時代のことがわかってきたのはここ数十年のことで、それまでは先カンブリア時代のことはほとんどわかっていませんでした。今でもよくわかっていない時代があるのですが、化石などによって時代がわかる顕生代に対して隠生代と呼びます。

先カンブリア時代の最初の約5億年間を冥王代と呼び、そのあとの約40億年前よりあとの生命が誕生していたのではないかといわれる時代が、太古代です。冥王代と原生代の境は地球上で発見された世界最古の岩石が見つかった時代に基づいているので、数十年後には変化しているかもしれません。

太古代のあと、酸素発生型光合成により酸素が発生した25億年前よりあとが原生代といわれ、そのあと、5億4100万年ごろに殻がある生物が現れる(化石がはっきりとしてくる)と時代が、古生代のカンブリア紀となります。

地球が誕生した冥王代ってどんな時代?

先カンブリア時代の冥王代のことは実は1970年代までほとんど謎のままでした。しかし、1970年代に入ると宇宙の開発が進み、月から持ち帰られた岩石や、ほかの天体の調査などから当時の地球の様子が少しずつ分かってきました。

地球が誕生したのはおよそ46億年前だといわれています。原始太陽系微惑星が互いに衝突を繰り返して原始惑星の1つとして地球が誕生し、その際に二酸化炭素などが微惑星に含まれていたため、気体になって水蒸気や二酸化炭素の原始大気を構成しました。

ところで、地球の誕生がなぜ46億年前かとわかるのかというと、隕石中にあるウラン129由来のキセノン129という物質を放射性同位体検査という検査で調べた結果で、火星や木星といった太陽系のほかの惑星もほぼ同時期に形成されたことがわかります。

マグマオーシャンを経て、原始海洋が形成された!

image by iStockphoto

そして、原始地球に微惑星が次々と衝突し、二酸化炭素による温室効果によって地球はマグマの海、いわゆるマグマオーシャンと化し、この際、地球内部にあった軽い物質は地表面に押し出され、重い物質が地球の中に沈み込み、地球のマントルを形成したと考えられています。
そのあと、地球に衝突する微惑星は次第に減り、地球は冷却され、水蒸気は液体となって原始海洋となりました。大気中の二酸化炭素は海洋に溶け込み、マグネシウムイオンカルシウムイオンと結びついて炭酸塩となって海底に堆積しました。

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