古典力学物理物理学・力学理科

空洞放射を古典物理学的に描いた「レイリー・ジーンズの法則」を元理系大学教員がわかりやすく解説

よぉ、桜木建二だ。今回はレイリー・ジーンズの法則について解説していくぞ。

レイリー・ジーンズの法則は空洞放射のエネルギーがどのような分布をしているかについて示したものだ。レイリー・ジーンズの法則に詳しいライター、ひいらぎさんと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ひいらぎさん

10年以上にわたり素粒子の世界に携わり続けている理系ライター。中でもニュートリノに強い興味を持っており、その不思議な性質を日夜追いかけている。今回は空洞放射に関する古典的な法則である、レイリー・ジーンズの法則についてまとめた。

空洞が蓄えるエネルギーはどのようになるのか

image by iStockphoto

レイリー・ジーンズの法則は、「絶対温度Tの黒体から放射されるエネルギーの密度分布を示す法則」の一つです。黒体というのは「完全放射体」とも呼ばれ、あらゆる波長を持った電磁波(光)を吸収して、熱を電磁波として放出する(熱放射と呼びます)ことができる理想的な物体になります。

この法則はニュートン力学とマックスウェルの電磁気学といった古典物理学から導かれるのですが、それがどのようなものなのか、具体的にみていきましょう。

空洞放射

黒体は理想的な物体なので、それに近いものとして空洞の物体を考えます。大きな鉄の塊を加工して、中心をくり抜き、中を真空状態にしたとしましょう。これをある温度にまで上昇させると、当然、中の真空も同じ温度の平衡状態に達するはずです。すなわち、真空中には放射エネルギーが満たされている状態になります。これが空洞放射と呼ばれる現象です。

現実にはこの空洞に近いものとして、製鉄所の溶鉱炉などがあります。18世紀後半に起きた産業革命以降、製鉄業などで用いられる炉の中の温度を知りたいという需要がありました。そのため、この空洞放射が議論されるようになったのです。

科学者たちは炉の中の温度を調べるために、中の状態を乱さないほど小さい孔を開け、その内部から放射される光を観測しました。これは温度によって放射される光のエネルギーが変化すると考えたためです。そして、この流れの中で発見されたのが、レイリー・ジーンズの法則でした。1900年、イギリスの物理学者であるヘンリー卿が発表し、その後、1905年に同じくイギリスの物理学者ジェームズ・H・ジーンズによって修正されたため、法則には二人の名前が入っています。

レイリー・ジーンズの法則

image by PIXTA / 50792679

マックスウェルの電磁気学によると、真空中の光は電場と磁場が交互に繰り返された波のように振動しているので、バネのような弾性体として扱うことができます。そこでこの仮定を使って、空洞中の光のエネルギーを見積もっていきましょう。

まず簡単のために、一次元のバネが長さLの筒で振動する状態を考えてみます。バネは両端で固定されているとすると、許される振動数ν(固有振動数と言います)は波長λが2L、2L/2、2L/3……となるので、ν=c/λ=nc/2L(n=1, 2, 3,……)です。

これを光の場合に適用してみましょう。光の振動数をνとして、νからν+dνの間に存在する固有振動数の数はバネの考察から(2L/c)dνです。さらに空洞は三次元なので、少し複雑な計算を経由しつつこれを拡張すると、空洞の体積をVとして(8πV/c^3)ν^2 dνと表現することができます。

ここで統計力学から、バネの固有振動一つ一つにはkT(kはボルツマン定数)というエネルギーが等分配されることが知られていました。これを光にも適用するとレイリー・ジーンズの法則と呼ばれる式が得られます。

単位体積あたりνからν+dνの間の振動数をもつ光のエネルギー = (8π/c^3)ν^2kTdν

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空洞内の光を「振動するバネ」として扱うことで、光のエネルギー分布について知ることができたな。では、実際に観測した結果とこの法則がどの程度一致するのか、見ていこう。

\次のページで「古典物理学の限界」を解説!/

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