エネルギーと仕事の違いはわかるかな?
仕事をすればエネルギーが増減するということなのですが、逆に言えばエネルギーを使うと仕事をさせることができる、ともいえるな。

エネルギーと仕事という概念を理系ライターのタッケさんと一緒に解説してゆくぞ!

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。ところで保存力って何なのか?ここで少し解説する。

エネルギー

image by iStockphoto

世の中のエネルギーにはいろいろあって、熱、電気、化学、光、核、位置、運動などがあります。これらのエネルギーは従来は別々だと考えられていたこともありました。しかし、現在ではこれらのエネルギーは姿を変えただけでその本質は同じだということがわかっています。

運動エネルギー

運動エネルギーから解説していきましょう。
運動エネルギーについては物理に興味がある皆さんにはおなじみだと思いますが、なぜ運動エネルギーの前に係数1/2がつくのでしょうか。みなさんはどう思われますか?

ニュートンの運動の第2法則はわかりますね。加速度 a 、力 F、質量 m とします。そうすると、

ma = F

です。これを変形していきましょう。物体が x だけ移動した場合、初速度 Vo が速度 V になったとします。
ここで、よく知られている運動の式、V2 - Vo2 = 2ax を ma = F へ代入していきましょう。

image by Study-Z編集部

そうすると、左辺にあらわれる式から運動エネルギーを定義します。

つまり、運動エネルギーは、

image by Study-Z編集部

ですね。

これは物理を学習している人にとっては、おなじみですね。ここで1/2がつきました。

また、運動方程式 ma = F に V = Vo + at を代入することで運動量 mv に関する関係式を得ることができます。

このように運動方程式を適当に変形すると運動量、運動エネルギーが導かれるのですね。これらの経緯は、過去「活力論争」として科学史でも有名な事柄です。

このあたりのことは次の記事も参考にしてください。

\次のページで「仕事と運動エネルギー」を解説!/

仕事と運動エネルギー

それでは次の図を見てください。先ほどの式の意味です。

image by Study-Z編集部

これは質量 m の物体に力 F を変位 x の間作用させたときに、その速度が Vo から Vに変化したことを示しているのです。

以下に、先ほど変形したエネルギーに関する式をもう一度示します。

image by Study-Z編集部

この式はエネルギーと仕事の関係を示しています。この式の左辺を運動エネルギー。右辺の Fx を仕事とよぶのです。
つまり仕事をすればその分だけ運動エネルギーが増減するといっています。

これをちょっと見方を変えると、最初にもっていた運動エネルギーが仕事を与えられて新しいエネルギーに変化したとも読み取ることができるのです。

image by Study-Z編集部

つまり

運動エネルギー + 仕事 = 新しい運動エネルギー

ですね。エネルギーの引き算が仕事だとしてもかまわないのですが、引き算の順序を間違えるととんでもないことになってしまいますね。その点、足し算で考えれば、間違いは格段に減ります。試してみてください。

エネルギーとは

地球温暖化問題に伴って、エネルギーが最近話題ですね。でもそもそもエネルギーとはなんでしょうか。

今まで見てきたように、エネルギーの増減は仕事によるのでしたね。逆にいって、エネルギーを出し入れすると仕事(力×距離)をすることができる、ともいえるのです。

例えば、運動する物体はその運動を停止し、その運動エネルギーを失うまでの間に他の物体に対して仕事をすることができます。

また、高いところにある物体はその位置を失うかわりに他に仕事ができるということです。このとき高いところにある物体が持っているのが位置エネルギーですね。ちなみに、運動エネルギーと位置エネルギーを足したものを力学的エネルギーとよんでいます。

つまり、エネルギーとは仕事をする能力なのです。そして、熱、電気、化学、光、核、位置、運動なのエネルギーは姿を変えただけでその本質は同じなのでしたね。

ということは、運動エネルギーと同様、他のエネルギーも仕事により増減し、また、エネルギーを仕事に変えることもできるのです。

\次のページで「保存力とは」を解説!/

image by iStockphoto

例えば、自動車で止まるときに運動エネルギーは今まで熱として捨てていました。回生ブレーキシステムはこれを電気エネルギーに変換して回収再利用するものです。

火力発電所や原子力発電所ではお湯を炊いて、その蒸気の勢いでタービンを回し、電気エネルギーに変換しています。

また、電気モーターは電気エネルギーを車などを動かす仕事に変えているということですね。

このように、仕事とエネルギーは兄弟のようなものといえます。
エネルギーは、なされた仕事の分だけ増減するのです。仕事はエネルギーを出し入れするためのツールですね。

保存力とは

image by iStockphoto

保存力という語句があります。仕事と密接な関係があるのでここで解説しましょう。

保存力と

保存力ではなぜ、経路を変えても仕事が変化しないか

重力は保存力です。重力の場合について考えて見ましょう。

たとえば、質量 m の物体を A 地点から B 地点まで重力にしたがって物体を移動することを考えましょう。重力加速度をgとします。

まず、図の A ⇒ A' ⇒ B の経路で移動していくことにしましょう。

image by Study-Z編集部

A 地点から A' 地点まで、鉛直に高さhだけ物体を降ろすときに重力のする仕事 Wo は、仕事=力×距離 より

Wo = Fh
      =mgh 

ですね。次に、A' から B までの重力のする仕事は 0 になります。これは重力が、物体の移動する方向と垂直に向いているからです。仕事=力 × 距離 = 重力 × 0 = 0
したがって、A 地点から B 地点までの物体を移動させるための重力による総仕事量W1は

W1 = Wo + 0
      = mgh

となります。

image by Study-Z編集部

次に、図のようにA地点からB地点まで、物体が斜面に沿って移動するときの重力による仕事 W2 を考えます。この仕事も 仕事=力×距離 より、斜面の長さを x 、重力の斜面方向の力 F' とすると、

W2 = F' x

ですが、ここで、F' = mgsinθ 、x=h/sinθ です。これらを代入すると、

\次のページで「仕事とエネルギー」を解説!/

image by Study-Z編集部

となるので、W2 = W1 となり、仕事は結局一緒になります。斜面が直線状だけでなく、どのような状態でも同じなのです。

つまり、重力による仕事は高さだけで決まります。途中どのような経路をたどっても変化しないのです。こういう力のことを保存力といいます。

仕事とエネルギー

エネルギーは仕事ができる能力です。つまり、仕事はエネルギーを増減できます。

物体が負の仕事を受けると物体のエネルギーが減少し、正の仕事を受けるとエネルギーが増加するのですね。

一般的に次のような考え方が成り立ちます。

旧エネルギー量 + 仕事(正負を含めて考える)=新エネルギー量

さらに、保存力とは、物体の運動の経路に無関係に、2地点の位置だけで仕事が決まる力のことです。

" /> 仕事とエネルギーそして保存力を理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

仕事とエネルギーそして保存力を理系ライターがわかりやすく解説

エネルギーと仕事の違いはわかるかな?
仕事をすればエネルギーが増減するということなのですが、逆に言えばエネルギーを使うと仕事をさせることができる、ともいえるな。

エネルギーと仕事という概念を理系ライターのタッケさんと一緒に解説してゆくぞ!

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。ところで保存力って何なのか?ここで少し解説する。

エネルギー

image by iStockphoto

世の中のエネルギーにはいろいろあって、熱、電気、化学、光、核、位置、運動などがあります。これらのエネルギーは従来は別々だと考えられていたこともありました。しかし、現在ではこれらのエネルギーは姿を変えただけでその本質は同じだということがわかっています。

運動エネルギー

運動エネルギーから解説していきましょう。
運動エネルギーについては物理に興味がある皆さんにはおなじみだと思いますが、なぜ運動エネルギーの前に係数1/2がつくのでしょうか。みなさんはどう思われますか?

ニュートンの運動の第2法則はわかりますね。加速度 a 、力 F、質量 m とします。そうすると、

ma = F

です。これを変形していきましょう。物体が x だけ移動した場合、初速度 Vo が速度 V になったとします。
ここで、よく知られている運動の式、V2 - Vo2 = 2ax を ma = F へ代入していきましょう。

image by Study-Z編集部

そうすると、左辺にあらわれる式から運動エネルギーを定義します。

つまり、運動エネルギーは、

image by Study-Z編集部

ですね。

これは物理を学習している人にとっては、おなじみですね。ここで1/2がつきました。

また、運動方程式 ma = F に V = Vo + at を代入することで運動量 mv に関する関係式を得ることができます。

このように運動方程式を適当に変形すると運動量、運動エネルギーが導かれるのですね。これらの経緯は、過去「活力論争」として科学史でも有名な事柄です。

このあたりのことは次の記事も参考にしてください。

\次のページで「仕事と運動エネルギー」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: