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喜劇王「チャップリン」映画スターとしてのキャリアと歴史のつながりを元大学教員がわかりやすく解説

徹底した平和主義を貫くチャップリンの作品

くわえてチャップリンの作風として際立っているのが徹底した平和主義。チャーリーは社会的には弱い立場にあり、非がないにも関わらず失業したり警察につかまったります。チャップリンは、そうした状況を批判する態度を示しません。

すべての立場や状況に寛容的で争いを好まない作風は、チャップリンを人気者にすると同時に、映画製作を難しくすることに。共産主義が台頭して赤狩りが激しくなったとき「共産主義を容認している」と解釈されるようになったのです。

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チャップリンの映画は観ていると優しい気持ちになれるものが多い。だからこそ今でもチャップリンのファンが多いのだろう。同時にチャップリンは歴史的な事件に対して言及するかのような映画も作っている。ただの平和主義とは少し違う印象だ。

ゴールド・ラッシュを描いた「黄金狂時代」(1925)

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By United Artists (work for hire) – Doctor Macro, Public Domain, Link

1925年に公開された「黄金狂時代」が取り上げたのが19世紀末にカリフォルニアをわかせたゴールド・ラッシュ。一獲千金をもとめる人々の姿をコミカルに描き出しました。

アラスカ州の金採掘者の写真をヒントに作成

実際にあるアラスカ州の金採掘者の写真をみて「黄金狂時代」のストーリーを思いついたチャップリン。写真をみたのは、当時のアメリカの有名俳優カップルであるダグラス・フェアバンクスとメアリー・ピックフォードの家だったそうです。

1846年から1847年にかけてシエラネバダ山脈で開拓民が遭難した「ドナー隊の悲劇」も発想源のひとつ。開拓民が生きるために人肉を食べたとも噂される出来事です。これもまたチャップリンの映画製作に活かされました。

一獲千金を狙う人々の境遇をコミカルに表現

ゴールド・ラッシュに乗じてカリフォルニアに来た人々の大部分は採掘に失敗して破産しました。金を採掘しているあいだ、食べるものに困って悪事に手を染める人も続出。ゴルールド・ラッシュで輝かしい成功をおさめる人はほんの一握りでした。

チャップリンの「黄金狂時代」はそんな人々の境遇を面白おかしく描きます。上の写真は、おなかを空かせた採掘者が靴をゆでて食べる場面。靴底のくぎを鶏肉の骨に見立て、靴ひもをスパゲティのように食べました。

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靴を食べる場面を撮影するとき、海藻で靴の革を作ったそうだ。また、くぎは飴細工、靴ひもはイカ墨スパゲッティだったらしい。何度も撮影をやり直したので、チャップリンと共演俳優はひどい下痢になったと言われている。

「モダン・タイムス」(1936)はアメリカの機械化を風刺

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By United Artists – ebay, Public Domain, Link

アメリカにおける工業化・機械化の影響を風刺的に描いたのが「モダン・タイムス」。チャーリーがベルトコンベアの流れに巻き込まれる場面を通じて、人間よりも機械のほうが優位であることを示唆しました。

\次のページで「人間が機械の一部になる生産システム」を解説!/

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