等速円運動は等速だから加速運動じゃねえ!と思っているキミ。
この運動には加速度があり、したがって力もあるんです。

加速度がどの方向にはたらくのか?なんて思っている人、理系ライターのタッケさんと一緒に解説してゆくぞ!

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。

加速度とは?等速円運動に加速度はない・・・のか?

image by iStockphoto

そもそも加速度とは何でしょうか?

あなたの乗る乗り物の加速度が大きいときと速度が大きいとき、どちらが危険でしょうか。
新幹線やジェットコースターに乗っているときを思い出すとわかりやすいと思います。

新幹線の時速が250km/hだとしましょう。これは駅で静止している人から見ると相当なスピードです。しかし、車内の人は等速度運動している限りにおいては、静止のときとなんら変わりなくすごすことができます。

しかし、新幹線が急激に減速したときのことを考えてみると・・・
そうですね、中でコーヒーを飲んでいた人はきっとこぼしてしまうでしょう。それどころか中には、ばたりと倒れてしまう人もいるに違いありません。

以上から、速度はどれほど大きくてもそのこと自体に危険はありません。しかし、加速度が大きいときは危険が伴うのです。

加速度でつまづいていると、力学がわからなくなります。
加速度とは単位時間当たりの速度変化量を示すものです。これを式で表しましょう。

今、⊿t 秒の間に速度が⊿v だけ変化したとすると、加速度aは

a=⊿v/⊿t 

で示されます。したがって、今 6 m/s で運動していた物体が 2 s 間で 12 m/s まで加速したとすると、その加速度の大きさ a は

a=⊿v/⊿t 
  =( 12 - 6 )/2
  = 3 m/s2

となることがわかりますね。そのため、速度変化が0であれば当然加速度も0となります。

等速円運動は等速だから加速度も 0 でしょうか。いいえ、等速円運動は実は加速運動なのです。これを正しく理解するために、等速円運動について考えていきましょう。

等速円運動とは

image by iStockphoto

円運動はわかりますね。地球も太陽の周りを円運動しているとみなしていいでしょう(実際は円に近い楕円軌道です)。

このとき、回る速さが一定のときを「等速円運動」としています。だから速さが加速していくような円運動も当然あるわけですが、ここでは扱いません。

等速円運動の加速度

最初に解説したように加速度はその単位時間当たりの速度変化量です。実は、等速円運動のときは等速とは言いながら、速度は変化しています。

速度はベクトル量ですね。 ベクトルとは大きさと向きをあわせもつ量です。したがって、等速円運動のときは、運動している物体は同じ速さですがその運動の向きが変化しているため、速度が変化していることになります。

image by Study-Z編集部

最初の位置で V1 だった速度が t 秒後に V2 に変化したとします。図にあるように、速さは同じでも向きはしっかり変化していますね。

詳しい計算は後述しますが、これで回転運動においても加速度が存在するということは納得いただけましたでしょうか。

\次のページで「等速円運動における速度と加速度の方向」を解説!/

等速円運動における速度と加速度の方向

等速円運動における速度と加速度の方向

image by Study-Z編集部

等速円運動における速度の方向は接線方向です。この方向は常に変化し、1周してまた同じ方向に戻ります。

等速円運動における加速度の方向はどの向きでしょうか。接線向き?いいえ、等速円運動における加速度の向きは回転の中心向きです。ちょっと想像できませんね。

いろいろな考え方があるのですが、ここではニュートンの運動の法則から考えてみます。
ニュートン運動の第2法則を覚えていますか。

ma = F

ですね。加速度aも力Fもその大きさとともに方向をあわせもつ「ベクトル」であることに注意してください。
したがって、この意味は・・・力Fあるところに加速度があり、その向は同じである・・・です。

今、無重量である宇宙船内部で五円玉に糸を結びつけて等速円運動させます。このとき、五円玉にはたらく力は糸の張力だけです。すなわち張力のみが五円玉に働いているので、張力の向きに加速度aを生じることになります。また、張力の向きは必ず回転運動の中心になることがおわかりでしょうか。

これらのことから等速円運動するためには必ず中心に向く力が必要です。これを向心力といいます。
したがって、ニュートン運動の第2法則より、加速度の向きも向心力と同じく回転中心向きです。

つまり、等速円運動における向心力と加速度は必ず円の中心に向いています。力の向きは刻々と変化しますね。したがって、加速度の向きも刻々と変化することになります。

 

角速度ω

image by iStockphoto

回転運動における新しい物理概念に角速度というものがあります。これは非常に重要なのでしっかりと理解しておいてください。

角速度とは単位時間当たりに回る回転角のことです。
ざっくり言えば1秒間に回る角度ですね。このときの角度はラジアン角で表すのが一般的です。例えば、⊿t 秒間に ⊿θ rad 回れば、角速度ωは

ω=⊿θ/⊿t

で示されます。

ωと速さv

回転運動において、1周回転する時間を、周期 T と呼びます。
そうすると、1周で360°= 2π rad 回るから角速度ωは

ω=⊿θ/⊿t  より
ω=2π/T

となりますね。

さらに今、回転半径 r としたときに、1周の長さは 2πr です。ゆえに、物体の速さをvとしたときには、速さ=距離÷時間 だから、

v=2πr/T  

これと上の式の ω=2π/T より

 v = rω

となることがわかります。

\次のページで「等速円運動の加速度の式を出してみよう」を解説!/

等速円運動の加速度の式を出してみよう

image by iStockphoto

等速円運動の加速度の大きさを示す式を導きましょう。
いろいろな方法がありますが、ここでは図から考えることにします。

もう一度、次の図を見てください。

image by Study-Z編集部

等速円運動においては速さは同じでも常に向きが変化しています。(等速円運動における速度の向きは円の接線方向だということに注意してください。)

最初の位置で V1 だった速度が t 秒後に V2 に変化したとします。
単位時間(1秒)あたりの速度変化 V2-V1 を考えるのが加速度です。

image by Study-Z編集部

したがって、速度変化としては右図の三角形の辺 V2 - V1 を考えなければなりません。よって加速度aは

a=( V2 - V1 )/t

で示されますが、その V2 - V1 の大きさは図の三角形の赤の部分です。

このとき、t 秒間回転したので回転角θは θ = ωt ですね。(ω=θ/t より)

等速円運動の速さ v (= V1= V2) とします。t が微小であるとき 三角形が 半径 v の扇形であるとすると、ラジアン角×半径=円弧長さ ですね。
角度θが微小なとき、円弧長さ=( V2 - V1) ですから、(注意:V2 - V1 はベクトルですから 0 にはなりませんよ! 大きさは図の赤い矢印で示されている長さです!)

( V2 - V1) = v × θ
        = v × ωt 

です。加速度の大きさは a = ⊿v/⊿t ですから ⊿v → V2-V1、⊿t → t として

a = ( V2 - V1)/ t
   =v × ωt / t
 a =  vω

となりますね。ここで v = rω を代入することであと2つの式を得ることができます。

image by Study-Z編集部

等速円運動は加速運動だ

等加速度運動は加速度が一定です。したがって加速度の大きさ・方向がずっと同じですね。つまり一直線上を運動します。当然ですが速度も変化しますね。

等速円運動は、速度・加速度の大きさは同じですが、方向が変化します。したがって、「等速」とはうたっていますが、加速運動です。よって、ニュートンの運動の第2法則に従います。

等速円運動を理解するために重要なことは、まず、回転系の新しい概念「角速度ω」を理解することです。その上で周期T、加速度や向心力など回転系特有の考え方にも慣れましょう。そうすることで、他の式も導きやすくなります。

" /> 「等速円運動」を基礎から理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理物理学・力学理科

「等速円運動」を基礎から理系ライターがわかりやすく解説

等速円運動は等速だから加速運動じゃねえ!と思っているキミ。
この運動には加速度があり、したがって力もあるんです。

加速度がどの方向にはたらくのか?なんて思っている人、理系ライターのタッケさんと一緒に解説してゆくぞ!

ライター/タッケ

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。

加速度とは?等速円運動に加速度はない・・・のか?

image by iStockphoto

そもそも加速度とは何でしょうか?

あなたの乗る乗り物の加速度が大きいときと速度が大きいとき、どちらが危険でしょうか。
新幹線やジェットコースターに乗っているときを思い出すとわかりやすいと思います。

新幹線の時速が250km/hだとしましょう。これは駅で静止している人から見ると相当なスピードです。しかし、車内の人は等速度運動している限りにおいては、静止のときとなんら変わりなくすごすことができます。

しかし、新幹線が急激に減速したときのことを考えてみると・・・
そうですね、中でコーヒーを飲んでいた人はきっとこぼしてしまうでしょう。それどころか中には、ばたりと倒れてしまう人もいるに違いありません。

以上から、速度はどれほど大きくてもそのこと自体に危険はありません。しかし、加速度が大きいときは危険が伴うのです。

加速度でつまづいていると、力学がわからなくなります。
加速度とは単位時間当たりの速度変化量を示すものです。これを式で表しましょう。

今、⊿t 秒の間に速度が⊿v だけ変化したとすると、加速度aは

a=⊿v/⊿t 

で示されます。したがって、今 6 m/s で運動していた物体が 2 s 間で 12 m/s まで加速したとすると、その加速度の大きさ a は

a=⊿v/⊿t 
  =( 12 – 6 )/2
  = 3 m/s2

となることがわかりますね。そのため、速度変化が0であれば当然加速度も0となります。

等速円運動は等速だから加速度も 0 でしょうか。いいえ、等速円運動は実は加速運動なのです。これを正しく理解するために、等速円運動について考えていきましょう。

等速円運動とは

image by iStockphoto

円運動はわかりますね。地球も太陽の周りを円運動しているとみなしていいでしょう(実際は円に近い楕円軌道です)。

このとき、回る速さが一定のときを「等速円運動」としています。だから速さが加速していくような円運動も当然あるわけですが、ここでは扱いません。

等速円運動の加速度

最初に解説したように加速度はその単位時間当たりの速度変化量です。実は、等速円運動のときは等速とは言いながら、速度は変化しています。

速度はベクトル量ですね。 ベクトルとは大きさと向きをあわせもつ量です。したがって、等速円運動のときは、運動している物体は同じ速さですがその運動の向きが変化しているため、速度が変化していることになります。

image by Study-Z編集部

最初の位置で V1 だった速度が t 秒後に V2 に変化したとします。図にあるように、速さは同じでも向きはしっかり変化していますね。

詳しい計算は後述しますが、これで回転運動においても加速度が存在するということは納得いただけましたでしょうか。

\次のページで「等速円運動における速度と加速度の方向」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: