今回のテーマは「輻射熱」。直接触れてなくても、電磁波が当たることで、物質自らが発熱する現象です。

身近な例で言うと、太陽からの熱が輻射熱にあたる。熱帯夜、25℃の真夜中か太陽サンサン最高気温25℃の真昼間。どちらが暑く感じるか?

直接触れている「空気」はどちらも同じ温度25℃ですが、太陽光の有無で随分変わりそうです。これに大きく関わっているのが「輻射熱」。理系ライターのR175と解説していくぞ!

ライター/R175

理科教員を目指すブロガー。前職で高温電気炉を扱っていた。その経験を活かし、教科書の内容と実際の現象を照らし合わせて分かりやすく解説する。

1.電磁波による伝熱〜輻射熱〜

image by iStockphoto

熱の伝わり方は大きく分けて3種類。

熱伝導:物質から物質に熱が伝わる現象

熱伝達:流体の移動により熱が伝わる現象

熱輻射:電磁波により熱が伝わる現象

このうち今回、熱輻射について解説します。

熱輻射は電磁波によって物質が微振動することで発生する熱のことです。

2.電磁波とは

電磁波とは、電場と磁場の変化によって形成される波。

まず電場がある限り、その周りに磁場があり、磁場がある限りその周りに電場が存在。いわゆる「右ねじの法則」or「右手の法則」です。

\次のページで「2-1.電磁波の発生」を解説!/

2-1.電磁波の発生

2-1.電磁波の発生

image by Study-Z編集部

電磁波が具体的にどのような様子になるか見てみましょう。あるところに電場があるとその周り右手の法則に従って磁場が出きます。

その磁場の周りにもまた電場が出来、その周りに磁場といった具合で以下繰り返しです。

どこかに電場or磁場がある限り、離れた場所にも磁場or電場が連なって存在しています。

ある電場or磁場の向きや大きさが変わればその周りの電場or磁場も向きや大きさが変わるもの。1つの電場or磁場が変化すると、一連して出来ている電場or磁場も変化し波となります。これが電磁波です。

2-2.電磁波の伝播

2-2.電磁波の伝播

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一番左の矢印の電場を元々ある電場とし、便宜上「発生源」と呼ぶことにします。

左の電場が存在することでそれより右側に磁場や電場が出来ていると仮定。もちろん他の方向にも出来ますが、見やすくするためイラストでは右側だけ描いています。

さて、発生源の電場が刻一刻と変化していたとしましょう。その時周りの電場や磁場はどうなるでしょうか?

(1).電場の向きが逆向きになった場合

その周りの磁場と電場の向きも逆になりますね。発生源の電場を逆向きに描いて、右手の法則に従って磁場、電場を作図すると全ての電場、磁場が逆向きになることが確認出来ます。

(2).電場の大きさが半分の場合

その周りの磁場、電場も大きさが半分。

もし発生源で電場が刻一刻と向きを変えていたら、周りの磁場や電場も刻一刻と向きを変えます。

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電磁波の伝播のイラストAが正しいイメージです。

発生源に電場がある限り、その周辺には瞬時に電場や磁場が出来ています。出発点の電場が変化したら、それを真似るように周りも瞬時に変化。

Bのように時間ととともに、徐々に遠くまで伝わっていく訳ではありません。

電磁波が出来るタイミング

電場や磁場は瞬時に周りに出来ていると書きましたが、どれくらい「瞬時」なのか?

電磁波は光と同じ速さで移動するもの。1秒後には地球7周半(30万km)程度先まで伝わる速さ。

あるところに電場が発生したら、1秒後には地球7周半(30万km)先まで一連の電場や磁場が発生します。

あるところの電場が逆向きに変わったら、周りの電場or磁場も瞬時に逆向きに。若干のタイムラグがありますが30万km離れてやっと1秒のタイムラグ。そのくらい一瞬で伝わります。

人間ウェイブをして遊んでるとしたら、一番端の人がずっと手を上げっぱなしor下げっぱなしは考えにくいですね。

電磁波も一番端の電場or磁場は大抵の場合、刻一刻と向きや大きさを変えます。それを真似して隣の電場or磁場も向きや大きさを変え続けるもの。隣の隣のまた隣も同様。

電場が振動していると、ずっと先の電場も振動します。

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3.電磁波による加熱

3.電磁波による加熱

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電磁波によって直接触れていない物に、電場や磁場を与えることが出来ます。

発生源の電場を振動させておけば、加熱される側の物質付近でも電場も振動するもの。

物質付近で電場が振動していると、電子や原子核等の電荷が揺らされることになります。

物質の電荷が揺らされると、原子の運動が激しくなり熱が発生

この熱が輻射熱。電磁波によって電場が与えられて、原子が振動し発生する熱です。

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熱の定義

熱とは原子の運動の激しさのこと。激しく動いてるものほど熱を持っていると定義されています。

ちなみに原子が全く動かない時が、絶対零度(約-273℃)。全く動いてなくてこの温度なので、これ以上冷たくなりようがありませんね。

 

4.身近な輻射熱

ここでは身近な輻射熱の例として、太陽による熱と電子レンジでの加熱について解説します。

4-1.太陽からの輻射熱

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同じ気温でも日光に当たっているのと、当たっていないのとでは体感温度は全く違いますね?なぜでしょうか。

日光にあると暑いのはまさしく「輻射熱」のせいです。

日光に当たっていようがなかろうが、私たちが直接触れているのは空気のみ。直接触れていない太陽からは輻射熱によって熱を受けているもの。

太陽表面温度は6000℃とも言われており、そこからはとてつもないパワーの電磁波が発生。6000℃に相当するだけ電子や原子核が振動しているわけですから、それ相応の電場が発生。その周りには磁場も発生。

宇宙空間には大気のような直接温度を伝えるものはほとんどありません。熱伝導や熱伝達はほぼ起こりようがありません。

太陽からのエネルギーは電磁波の形で地球にやってきます

太陽光を浴びる=電磁波も浴びているもの。その電磁波によって私たちの身体が温められる。だから暑いのです。

4-2.電子レンジ

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電子レンジはまさしく輻射熱の例ですね。

電子レンジに食品を入れ加熱。食品には直接熱い物を触れさせていませんが加熱することが可能です。

まず電場を作った上で、その向きを目まぐるしく変化させる。すると、それに合わせ周辺にも電場or磁場が出来てきます。つまり電磁波が発生するわけです。電磁波が食品を構成する原子たちを微振動させ熱を持たせているといもの。

電磁波と輻射熱

輻射熱は

電磁波によって物質が微振動することで発生する熱

電磁波が電場の動きを作る→電荷を動かす→電子や原子核が動く→熱が発生

という流れです。

" /> 太陽に当たってるだけで暑い…第3の伝熱「輻射熱」について理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学

太陽に当たってるだけで暑い…第3の伝熱「輻射熱」について理系ライターがわかりやすく解説

今回のテーマは「輻射熱」。直接触れてなくても、電磁波が当たることで、物質自らが発熱する現象です。

身近な例で言うと、太陽からの熱が輻射熱にあたる。熱帯夜、25℃の真夜中か太陽サンサン最高気温25℃の真昼間。どちらが暑く感じるか?

直接触れている「空気」はどちらも同じ温度25℃ですが、太陽光の有無で随分変わりそうです。これに大きく関わっているのが「輻射熱」。理系ライターのR175と解説していくぞ!

ライター/R175

理科教員を目指すブロガー。前職で高温電気炉を扱っていた。その経験を活かし、教科書の内容と実際の現象を照らし合わせて分かりやすく解説する。

1.電磁波による伝熱〜輻射熱〜

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熱の伝わり方は大きく分けて3種類。

熱伝導:物質から物質に熱が伝わる現象

熱伝達:流体の移動により熱が伝わる現象

熱輻射:電磁波により熱が伝わる現象

このうち今回、熱輻射について解説します。

熱輻射は電磁波によって物質が微振動することで発生する熱のことです。

2.電磁波とは

電磁波とは、電場と磁場の変化によって形成される波。

まず電場がある限り、その周りに磁場があり、磁場がある限りその周りに電場が存在。いわゆる「右ねじの法則」or「右手の法則」です。

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