以前タンパク質について解説した記事は読んでもらえたでしょうか。タンパク質はアミノ酸から構成されているというところから、タンパク質の構造を中心に解説したわけですが、タンパク質の性質についての解説がまだだったな。

第2回目となるこの記事では、タンパク質の性質について具体的に説明しよう。タンパク質の各々の特徴は、その立体構造https://study-z.net/9726によるところが大きい。タンパク質の立体構造に関わるアミノ酸の特徴について取り上げる。一方、タンパク質に共通する性質にはどんなものがあるのでしょうか。
少々前回の内容と重なる部分もありますが、さらに理解を深めていってほしい。

理系大学生ライターこみとりと一緒に解説していきます。

アミノ酸の結合を分類してみよう

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image by Study-Z編集部

答えは、アミノ酸どうしで、ペプチド結合以外の結合が形成されるからです。

ここで、アミノ酸の結合を「ペプチド結合」と「ペプチド結合以外の結合」に分けて整理しましょう。

ペプチド結合

まず、ペプチド結合は、アミノ酸を繋げてポリペプチドを形成するための結合です。ペプチド結合に関わるのは、「アミノ基」と「カルボキシ基」。どのアミノ酸にも共通するパーツです。

わずか20種類のアミノ酸から、数多くのタンパク質を合成するうえで、ペプチド結合によりつくられるポリペプチド、すなわち一次構造がもっとも基本的な構造となっています。

※アミノ酸にどんなパーツがあるか忘れてしまった方は、「アミノ酸の構造」の項に詳しい説明があるので、戻って確認してみてください。

ペプチド結合以外の結合

では、もう一方の「ペプチド結合以外の結合」はどうでしょうか。
こちらは、ポリペプチド鎖ができた後、ポリペプチド鎖が二次、三次、四次構造と、立体構造をとるために必要な結合です。結合に関わるのは「側鎖」。アミノ酸の種類によって異なるパーツです。

「ペプチド結合以外の結合」にはいくつか種類があります。ポリペプチド鎖のどの部分で、どのような結合が形成されるかは、ポリペプチド鎖が形成された時点で決まるのです。言い換えれば、それぞれのタンパク質が固有の立体構造を形成するわけですが、その立体構造は、そのポリペプチド鎖に、どのアミノ酸がどのような順番で並んでいるかによります。

タンパク質の立体構造に関わる結合

\次のページで「S-S結合」を解説!/

S-S結合

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システインというアミノ酸は、側鎖にSH基を含みます。2分子のシステインのSH基それぞれH原子を失って繋がる結合が、S-S結合(ジスルフィド結合)です。タンパク質の三次構造や四次構造の形成に関わります。

少し余談になりますが、ヒトのからだで、S-S結合が特に多く含まれる部分はどこでしょうか。ひとつは、毛髪です。毛髪には、ケラチンという繊維状のタンパク質が多く含まれています。ケラチンの特徴は、システインというアミノ酸を多く含むこと。つまり、ケラチンには多くのS-S結合が存在します。実は、パーマをかける際、このS-S結合を利用しているのです。還元剤を含む薬剤で毛髪を処理すると、S-S結合がSHに還元されて切断されます。この状態で毛髪に形をつけ、今度は酸化剤を含む薬剤で処理。すると、新たにS-S結合が形成されます。こうして、毛髪にパーマがかかるのです。

水素結合

水素原子と酸素原子、水素原子と窒素原子の間に形成されることがあります。水素結合が主に影響する立体構造は二次構造です。

水素結合は熱にあまり強くないため、タンパク質に熱が加わり、水素結合が切れてしまうとタンパク質は本来の形や性質を維持できません。このことを変性といいます。後ほど詳しく解説しましょう。

疎水結合

前回、少しだけアミノ酸の親水性疎水性について触れました。平たく言えば、親水性のアミノ酸は水と結びつきやすく、疎水性のアミノ酸は水と結びつきにくいです。細胞の内部を満たしている細胞質基質は、アミノ酸やタンパク質を含んだ。水中では、ポリペプチドを構成するアミノ酸のうち、疎水性の側鎖が内側に集まり、親水性の側鎖が水に接するようになります。こうして、ポリペプチドは球状になるのです。

タンパク質に共通な性質:変性

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タンパク質本来の性質が失われる現象を変性といいます。タンパク質の変性の要因は熱や圧力、紫外線、pHなどです。タンパク質のアミノ酸配列(一次結合)は変化しなくても、水素結合などが切れて立体構造が壊れることで、タンパク質は機能を失います。

 タンパク質は、一度変性すると元には戻りません。タンパク質の変性のほとんどは「不可逆的」です。
例えば、ゆで卵を思い浮かべてみてください。黄身も白身もほとんどがタンパク質でできている卵を加熱すると、二度と元の生卵の状態には戻せませんね。熱により立体構造が変わり、色や質感まで大きく変化してしまいます。
また、酵素もタンパク質の一種です。酵素が変性し、そのはたらきが失われることは、特に失活といいます。

タンパク質の分類:単純タンパク質と複合タンパク質

生物というよりも化学で使われる用語だとは思いますが、ご紹介しましょう。タンパク質は、「単純タンパク質」と「複合タンパク質」に分類できます。単純タンパク質は加水分解したときにα-アミノ酸(※)のみを生じるタンパク質です。一方、加水分解したときにα-アミノ酸以外の物質を生じるタンパク質を複合タンパク質といいます。

少し例を挙げてみましょう。「インスリン」をご存じですか?血糖量を減少させるホルモンです。インスリンは2本のポリペプチドからなることが分かっています。インスリンを加水分解したら、生じるのはα-アミノ酸だけ。つまりインスリンは単純タンパク質であるといえますね。
対して、複合タンパク質の例として、ヘモグロビンが挙げられます。ヘモグロビンは、内部に「ヘム」という鉄を含む色素をもつのが特徴です。ヘモグロビンは加水分解すると、アミノ酸だけでなく、鉄も生じるため、複合タンパク質に分類されます。

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※α-アミノ酸…アミノ酸のなかでもアミノ基とカルボキシ基が同一の炭素原子に結合しているもの。α、β、γ-アミノ酸の3種類がありますが、タンパク質を構成する単位はすべてα-アミノ酸であり、ふつうアミノ酸といえばα-アミノ酸のことです。

これでタンパク質の構造と性質はばっちり!

要点をおさらい しましょう。

・アミノ酸のアミノ基、カルボキシ基間でペプチド結合が形成される一方、側鎖間の結合により、タンパク質の立体構造が形成されます。タンパク質が各々固有の立体構造をとることで、異なる性質を示すのです。
・タンパク質は、熱などが加わることで、立体構造が変化し「変性」します。変性はすべてのタンパク質に共通の性質です。
・タンパク質は「単純タンパク質」と「複合タンパク質」に分類されます。

これでタンパク質とアミノ酸の基本はばっちりです。

次の記事では、どのようにしてタンパク質ができるのかをご紹介する予定ですので、次回以降の記事もぜひ参考にしてください。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

【タンパク質の性質】タンパク質の構造とその特徴を生物専攻ライターが5分でわかりやすく解説!<第2回>



以前タンパク質について解説した記事は読んでもらえたでしょうか。タンパク質はアミノ酸から構成されているというところから、タンパク質の構造を中心に解説したわけですが、タンパク質の性質についての解説がまだだったな。

第2回目となるこの記事では、タンパク質の性質について具体的に説明しよう。タンパク質の各々の特徴は、その立体構造https://study-z.net/9726によるところが大きい。タンパク質の立体構造に関わるアミノ酸の特徴について取り上げる。一方、タンパク質に共通する性質にはどんなものがあるのでしょうか。
少々前回の内容と重なる部分もありますが、さらに理解を深めていってほしい。

理系大学生ライターこみとりと一緒に解説していきます。

アミノ酸の結合を分類してみよう

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答えは、アミノ酸どうしで、ペプチド結合以外の結合が形成されるからです。

ここで、アミノ酸の結合を「ペプチド結合」と「ペプチド結合以外の結合」に分けて整理しましょう。

ペプチド結合

まず、ペプチド結合は、アミノ酸を繋げてポリペプチドを形成するための結合です。ペプチド結合に関わるのは、「アミノ基」と「カルボキシ基」。どのアミノ酸にも共通するパーツです。

わずか20種類のアミノ酸から、数多くのタンパク質を合成するうえで、ペプチド結合によりつくられるポリペプチド、すなわち一次構造がもっとも基本的な構造となっています。

※アミノ酸にどんなパーツがあるか忘れてしまった方は、「アミノ酸の構造」の項に詳しい説明があるので、戻って確認してみてください。

ペプチド結合以外の結合

では、もう一方の「ペプチド結合以外の結合」はどうでしょうか。
こちらは、ポリペプチド鎖ができた後、ポリペプチド鎖が二次、三次、四次構造と、立体構造をとるために必要な結合です。結合に関わるのは「側鎖」。アミノ酸の種類によって異なるパーツです。

「ペプチド結合以外の結合」にはいくつか種類があります。ポリペプチド鎖のどの部分で、どのような結合が形成されるかは、ポリペプチド鎖が形成された時点で決まるのです。言い換えれば、それぞれのタンパク質が固有の立体構造を形成するわけですが、その立体構造は、そのポリペプチド鎖に、どのアミノ酸がどのような順番で並んでいるかによります。

タンパク質の立体構造に関わる結合

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