今回は水の電気分解について勉強していこう。水を化学式で表すとH2Oであることはみんなも知っていますね。「水は化合物だから分解できないはず…」そう気付けたやつは勘がいいぞ!

電気分解を使えば、化合物も分解することができるんです。化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.水の化学構造を知ろう

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水は水素原子2つと酸素分子1つからなる化合物で、化学式では H2O で表されます。また、酸とアルカリの単元では、水の中の一部の水分子は水素イオン H+ と水酸化物イオン OH– というイオンのカタチになって存在しているという話をしましたね。このことから、水分子は水中でこのように存在しているといえます。

H2O → H+ + OH

これが水の電気分解で重要な1つめのイオン式(電離式)です。

\次のページで「1-1.水素イオンの考え方」を解説!/

1-1.水素イオンの考え方

では「そもそも水素イオン H+ のって何?」と考えたことはありませんか?ここからは少し難しい話になるので、中学レベルで100%理解する必要はありません。「ふーん」と参考程度に聞いてくださいね。

まず、水素原子というものはプラスの電気を帯びた陽子1つとマイナスの電気を帯びた電子1つを持っています。このとき、電気の状態を見れば(+1)+(-1)で0になっているのがわかりますね。つまり、 H±0の状態です。

しかしその原子の状態というのは構造的に不安定で、持っている電子を失うことで安定したイオンになります。つまり、0の状態からマイナスの電気を帯びた電子が引かれるので-(-1)となりますね。つまり+1、H+ (+1の1は省略)になるというわけです。

1-2.水酸化物イオン、酸化物イオンの考え方

では水酸化物イオン OH についても同様に考えてみましょう。水素イオンは H+ で帯びている電気の状態が+1であれば、酸素原子がイオンになったらどのように表されるでしょうか。

答えは-2です。水酸化物イオン OH (-1)は水素イオンは H+ (+1)と酸素のイオン(酸化物イオン)からできています。そこでこの差を計算すると(-1)-(+1)で-2.つまりは O2 (マイナスは数字の後につく)となるのが想像できるでしょうか。

酸素原子はプラスの電気を帯びた陽子8つとマイナスの電気を帯びた電子8つを持っています。この O±0 というのは構造的に不安定な状態です。そのために電子を2つ得ることで安定した状態になろうとし、0+(-2)となるために-2、O2 となります。

2.水の電気分解を実験で検証

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物質の中でも単体や化合物といった純物質はこれ以上分解できないものだということは以前にも解説しましたよね。しかし、そのときに電気分解は例外であるとお話したのを覚えているでしょうか。

水の電気分解は化合物の分解の代表例です。学校の授業でもよく扱う実験ですが、ややこしい実験図や化学式に苦手意識を感じ、テスト勉強でも諦めてしまう人が続出します。よくある疑問を1つずつ解決していくことで、理解を深めていきましょう。

2-1.どうして水酸化ナトリウムを入れるの?

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水の電気分解では、水に少量の水酸化ナトリウム NaOH を加えるというところから疑問に感じる人もいるでしょう。実はこの水酸化ナトリウムは水溶液に電気をよく通すようにするために入れるものです。

水は先述したように水中で水素イオンと水酸化物イオンに電離(イオン化)して存在しています。しかしその量はわずかで、電気をよく通すとはいえません。そのために水溶液中でよく電離する電解質である水酸化ナトリウムを加えることで、電気の流れを助けているのです。

H2O → H+ + OH という水の電離よりもNaOH → Na+ + OH のほうが容易に起こるといえます。この水酸化ナトリウムの電離式が2つめに重要な式です。

このときに電子の移動が起こることで、電気の通りがよくなるということですね。

2-2.陽極での反応は?

まず、電気分解の陽極は電源装置の正極(+極)に繋がっている方だということを覚えましょう。このプラスのイメージを実験図に当てはめて考えてみると理解がスムーズになりますよ。

プラスに引き寄せられるものは何かと考えてみれば、自ずと答えは出てきます。陽極付近の水中には水から電離した少量の OH と水酸化ナトリウムから電離した OH が集まってくることが理解できるでしょうか。このとき、電気を通すことによって以下の反応が起こります。

4OH → 2H2O + O2 + 4e  (e はマイナスの電気を帯びる電子)

OH が持っている電子が放出され、4つのOH は2つの水と1つの酸素、4つの電子になったのです。

2-3.陰極での反応は?

では、電源装置の負極(-極)に繋がっている陰極の反応も見ていきましょう。マイナスに引き寄せられるもの、つまりプラスの電気を帯びたものが陰極側に寄ってくることで反応が進みます。

員極には、水から電離した少量の H と水酸化ナトリウムから電離した Na が集まってきている状況です。さらに、陽極の反応で放出された電子が行き場に困っている状態でしたよね。このとき、陰極では次のような反応が起こります。

4H + 4e → 2H2

陽極から放出された電子4つを受け取ることができるのは、同じく4つの H です。したがって生成する水素分子は2つになるということがいえますね。

2-4.どうして電流と電子の流れは向きが違うの?

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実験図を見てつまづくポイントに、電流と電子の向きが逆であることが挙げられます。電流はプラスの電極から出てマイナスの電極に流れるものである一方、電子はマイナスの電極からプラスの電極に出ていくために混乱するのでしょう。

実はこれ、イタリアの物理学者であるボルタが電流の存在を見つけ電流の方向を定めた後に、イギリス物理学者であるトムソンが電流の正体である電子とその流れの方向を発見したのです。つまり、とりあえず電流の向きを決めたものの、よくよく調べてみたら逆だったというたったそれだけの理由でした。

覚えるコツとしては、水は高所(大)から低所(小)風は高気圧(大)から低気圧(小)へ流れるのと同様、電流もプラスからマイナスへと考えてみましょう。電子はその逆と覚えれば簡単ですね。これがわかれば、実験図の理解度が飛躍的にアップしますよ。

2-5.どうしてナトリウムイオンは電子を受け取らないの?

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今回の実験で、プラスイオンは水素イオン H+ とナトリウムイオンNa+ の2種類が出てきましたね。プラスはマイナスに引き寄せられるので、陰極側で電子を受け取って水素イオンが水素になって出てきます。しかし、ナトリウムイオンはなぜ電子を受け取ってナトリウム Na にならないのでしょうか。

それにはイオンへのなりやすさ(イオン化傾向)というものが関係しています。

カルシウム Ca > ナトリウム Na > マグネシウム Mg  > 鉄 Fe > 水素 (H2) > 銅 Cu  > 白金(プラチナ) Pt > Au

イオン化傾向が大きいものほどイオンである状態がより安定であり、小さいほどイオン化しにくく、酸化反応に代表される化学反応が起こりにくいのです。ナトリウムイオンは水素(水素イオン)よりもイオンである状態を保とうとするため、水素イオンが率先して電子を受け取ることで水素として出てきたと考えれば納得できるでしょう。

水は電気分解で水素と酸素に分解される

水は水素原子2つと酸素原子1つからなる化合物です。通常化合物はそれ以上分解されない物質の最小単位といえるものですが、電気分解を使えば分解できることを解説しました。

電気分解は電子の動きが関係しているために難しく思われがちですが、結論はこれだけです。

2H2O → 2H2 + O2

さらに「水素は水素イオンというプラスの傾向があるからマイナス(陰極)に寄るかなあ…」という考えに至れば、自ずと考えの方向性が見えてきます。今ある知識をベースに、いかに関係性を見つけて考えるかが化学を楽しむ秘訣です。

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化学

簡単でわかりやすい「水の電気分解」!なぜ水酸化ナトリウムを入れるの?陽極・陰極の反応式も元塾講師が詳しく解説

カルシウム Ca > ナトリウム Na > マグネシウム Mg  > 鉄 Fe > 水素 (H2) > 銅 Cu  > 白金(プラチナ) Pt > Au

イオン化傾向が大きいものほどイオンである状態がより安定であり、小さいほどイオン化しにくく、酸化反応に代表される化学反応が起こりにくいのです。ナトリウムイオンは水素(水素イオン)よりもイオンである状態を保とうとするため、水素イオンが率先して電子を受け取ることで水素として出てきたと考えれば納得できるでしょう。

水は電気分解で水素と酸素に分解される

水は水素原子2つと酸素原子1つからなる化合物です。通常化合物はそれ以上分解されない物質の最小単位といえるものですが、電気分解を使えば分解できることを解説しました。

電気分解は電子の動きが関係しているために難しく思われがちですが、結論はこれだけです。

2H2O → 2H2 + O2

さらに「水素は水素イオンというプラスの傾向があるからマイナス(陰極)に寄るかなあ…」という考えに至れば、自ずと考えの方向性が見えてきます。今ある知識をベースに、いかに関係性を見つけて考えるかが化学を楽しむ秘訣です。

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