今回は似ているようで実は違う「蒸発・沸騰・気化」の意味について勉強していこう。

解説を見る前に、日常の中にある蒸発と沸騰の具体例を考えてみよう。意外とそれが答えかもしれないぞ。

「○○とは○○という現象で…」こう難しく覚える必要はない。自分なりの言葉で化学を理解できるように、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.気化とは

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まずは気化という言葉から解説していきましょう。漢字の意味を考えてみると、気体に変化する、気体に化けると言い替えることができそうですね。

では辞書での意味を調べてみましょう。

物質が液体から気体に変わる現象。蒸発と沸騰とがある。また、昇華を含めることもある。

広辞苑より引用

やはり漢字の意味の通りの内容が出てきましたね。物体が液体から気体に変わる現象、ここだけを見れば状態変化や物質の三態の単元で解説した「蒸発」に相当します。

しかし辞書には「沸騰」も気化に当たると書いてありますね。さらに固体から気体への状態変化である「昇華」を意味することもあると書かれています。

ここから言えるのは、「気化」というのは物質が「気体化」する現象の総称であるということです。大きな気化という現象の中に、蒸発や沸騰、昇華という現象が含まれているのだと考えてみましょう。つまり、「水が気化した」という言葉は含みを持っています。「どうやって気化したの?」の部分が蒸発や沸騰に当たるのです。

2.蒸発とは

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では気化反応の1つである蒸発についても見ていきましょう。

\次のページで「2-1.身近な蒸発に関わる現象」を解説!/

(1)液体または固体がその表面において気化する現象。「水分が―する」

(2)転じて、動機を明らかにしないまま不意にいなくなり、家族と音信を絶ってしまうこと。

広辞苑より引用

ここで気になる言葉が出てきましたね。「物質の表面において気化する」という現象について考えてみましょう。まず覚えておきたいのは、蒸発はいわゆる水が沸騰して気体になり始める100℃(沸点)よりも低い温度でも起こるということです。

物質の三態において、それぞれの分子が持つエネルギーは異なるという話をしましたね。固体より液体、液体より気体の分子間の運動は大きくなるものですが、そればあくまでも平均値であって、全ての分子が同じエネルギーで運動しているわけではありません。したがって、沸点より低くても、気体に相当するエネルギーの水分子も存在しているということです。

それらのエネルギーを持った水分子は、液体である水分子の集まりから飛び出すことがあります。これが表面からの気化であり、蒸発なのです。

2-1.身近な蒸発に関わる現象

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身近な蒸発の例が水溜まり洗濯物です。どちらもいつの間にか水分が無くなって乾いてしまうものですが、決して100℃以上に熱せられたから乾いたわけではありませんよね。少しずつ水溜まりや洋服の中に溜まった水分子が空気中に逃げていくことで、蒸発が起こったといえるでしょう。

よく晴れた日に水溜まりや洗濯物が乾きやすいのは、太陽によって水分子が温められることで運動が活発になるからという理由が挙げられます。それだけでなく、空気中の水分量(湿度)が下がることで空気中に水分が逃げやすい環境になるからということが考えられますよ。

3.沸騰とは

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最後に沸騰について見ていきましょう。ラーメンを作るために鍋でお湯を沸かすなど、沸騰は蒸発よりもイメージがしやすいかもしれませんね。

(1)煮えたつこと。液体を熱したとき、その蒸気圧が液体の表面にかかる圧力よりも大きくなると、内部から気化が生じる現象。

(2)比喩的に、高く起こり立つこと。さわぎ立つこと。「世論が―する」

広辞苑より引用

\次のページで「3-1.身近な沸騰に関わる現象」を解説!/

水がグツグツと煮え、内部から泡がボコボコと沸き上がる様子を思い出す人も多いでしょう。この様子からも、沸騰は内部から気化が生じるというのがイメージできるのではないでしょうか。

液体の表面にかかる圧力よりも液体が蒸気になろうとするときの圧力(蒸気圧)が大きくなると、水分子は内部からの気化を始めます。水の表面だけでなく、内側からも沸騰が起こることで水分量は大きく減っていくでしょう。これは、蒸発による表面の気化よりも沸騰による内部から気化の方が空気中に出ていく水分子の量が多いためです。さらに加熱することでより水分子の運動が活発になり、気化反応は加速していきます。

3-1.身近な沸騰に関わる現象

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先述したように、鍋をコンロにかけて加熱する様子が最も身近な沸騰でしょう。

料理途中の鍋を火にかけたままにしておくと、いつの間にか水分が無くなって焦げてしまうでしょう。お湯が沸いたらピーっと鳴るやかんは、ただお湯が沸いたことの合図のためだけでなく、放置して空炊きをしないための安全上の工夫になっているということですね。

3-2.実験で使用する沸騰石

実験で液体を加熱する際、急な沸騰(突沸)を防ぐために用いられる沸騰石ですが、なぜそれが可能なのかを考えたことがあるでしょうか。

凹凸がないフラスコやビーカーでは気泡が発生しにくい一方で、何かの衝撃が加わると一気に沸騰し、水溶液が飛び散ってしまう可能性があります。しかし、沸騰石は沸騰する際に生じる気泡のきっかけとなってくれるのです。小さな穴が無数に開いた石や素焼きのかけらなどからできている沸騰石は、小さな気泡を持ったまま水溶液中に入ります。するとその小さな気泡をきっかけにした沸騰が始まるので、穏やかな沸騰が可能になるのです。

気化反応である蒸発と沸騰

気化は物質が液体から気体に変わる状態変化を総称した言い方であり、その中に蒸発や沸騰、昇華が含まれます。

蒸発とは物質の表面から気化が起こる現象であるのに対し、沸騰は内部からでも気化が起こる現象です。沸騰は沸点より物質の温度が高くなると起こりますが、蒸発は沸点以下でも起こりえます。水は100℃になると沸騰しはじめますが、それより低い温度でも水溜まりの水は蒸発しますよね。

一方で、昇華は固体が液体にならずに気体になる状態変化ですから、蒸発や沸騰とは分けて覚える必要がありますよ。

身近な例に当てまめれば意外と明確な違いが見えてきましたね。日常の中にある気化について、この機会に考えてみましょう。

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化学物質の状態・構成・変化理科

「蒸発・沸騰・気化」この違いって何?気になるワードを元塾講師がわかりやすく解説

今回は似ているようで実は違う「蒸発・沸騰・気化」の意味について勉強していこう。

解説を見る前に、日常の中にある蒸発と沸騰の具体例を考えてみよう。意外とそれが答えかもしれないぞ。

「○○とは○○という現象で…」こう難しく覚える必要はない。自分なりの言葉で化学を理解できるように、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.気化とは

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まずは気化という言葉から解説していきましょう。漢字の意味を考えてみると、気体に変化する、気体に化けると言い替えることができそうですね。

では辞書での意味を調べてみましょう。

物質が液体から気体に変わる現象。蒸発と沸騰とがある。また、昇華を含めることもある。

広辞苑より引用

やはり漢字の意味の通りの内容が出てきましたね。物体が液体から気体に変わる現象、ここだけを見れば状態変化や物質の三態の単元で解説した「蒸発」に相当します。

しかし辞書には「沸騰」も気化に当たると書いてありますね。さらに固体から気体への状態変化である「昇華」を意味することもあると書かれています。

ここから言えるのは、「気化」というのは物質が「気体化」する現象の総称であるということです。大きな気化という現象の中に、蒸発や沸騰、昇華という現象が含まれているのだと考えてみましょう。つまり、「水が気化した」という言葉は含みを持っています。「どうやって気化したの?」の部分が蒸発や沸騰に当たるのです。

2.蒸発とは

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では気化反応の1つである蒸発についても見ていきましょう。

\次のページで「2-1.身近な蒸発に関わる現象」を解説!/

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