20℃の水を100℃のお湯にしたい時、どれだけエネルギーが必要か分かるか?これを計算するのに、「20℃の水を100℃に加熱。」「80℃差。そう、熱容量に80をかけたらいい。」「いや待てよ、今回は比熱が与えられてるな。比熱だと重さもかける?」…比熱と熱容量はごっちゃになりそうです。区別が曖昧だと計算間違いの元になるぞ!

今回は熱力学に詳しいライターR175と一緒に「比熱」と「熱容量」の違いをはっきりさせていくぞ!

ライター/R175

理科教員を目指すブロガー。前職で高温電気炉を扱っていた。その経験を活かし、教科書の内容と実際の現象を照らし合わせて分かりやすく解説する。

1.比熱と熱容量とは?

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比熱も熱容量も温度を上げるため、どれだけエネルギーが必要かを表す「温めやすさ」の指標。物質全体の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが熱容量で、物質1gの温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが比熱です。

これを丸暗記すれば、温度上昇の計算は余裕かもしれないですね。ただ、なぜこのような定義をしているかを理解していないと公式を忘れやすく、比熱と熱容量が区別できなくなって計算間違いをするリスクも出てきます。この記事で熱容量と比熱の違いを明確にしていきましょう。

2.比熱と熱容量の共通点

2.比熱と熱容量の共通点

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まずは共通点からみていきましょう。比熱も熱容量も温度1℃上げるのに必要なエネルギー、つまり物質の温めやすさの指標。

物質は温度が高くなればなるほど、エネルギーを多く持っているものです。なぜなら、温度が高いほど物質を構成する原子の運動が激しいから。温度を上げるためにはエネルギーが必要ですよね。どのくらいのエネルギーが必要なのか?それを計算するために、比熱や熱容量を使います。以下例題を見てみましょう。

2-1.湯沸かしエネルギー

2-1.湯沸かしエネルギー

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20℃の水を100℃まで沸かします。20℃から60℃まで沸かすのに200KJのエネルギーが必要でした。

Q1.60℃からさらに100℃まで沸かすのにどれだけエネルギーが要るでしょうか?
A1.20℃→60℃、40℃差で200KJ。
      60℃→100℃も40℃差なのであと200KJ必要。
   答えは200KJ。

Q2.20℃→80℃まで上げるには何J必要でしょうか?
A2.20℃→60℃、40℃差で200KJ必要。と言うことは、
   1℃加熱するのに必要なエネルギーは200KJ/40=5KJ。
      20℃→80℃の60℃差だと、5KJx60で300KJ必要。
    答えは300KJ。

ここで出てきた、1℃加熱するのに必要なエネルギー5KJこそ熱容量。その5KJを質量[g]で割った値が比熱いずれにせよ、温度1℃上げるのに必要なエネルギーであることは変わりありませんね。

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こちらの図を解説していきましょう。温度差が大きいほど、より多くの加熱エネルギーが必要です。物質Aは100KJ使って30℃上昇、物質Bは110KJ使って50℃上昇したとすると、物質Bの方が加熱に必要なエネルギーが多かったので、物質Bの方が温めにくい気がしますがそんなことはないですよね?

比熱も熱容量も、温度1℃加熱するのに必要なエネルギーを表し、温めやすさをフェアに比較しています

3.比熱と熱容量の違い

では、比熱と熱容量の違いを簡単に解説していきましょう。

\次のページで「3-1.何だかんだ比熱が便利」を解説!/

比熱→物質1gを1℃上げるのに必要なエネルギー
熱容量→物質全部を1℃上げるのに必要なエネルギー

そう、比熱と熱容量の違いは合計か1gあたりかの違いなんですね。

3-1.何だかんだ比熱が便利

3-1.何だかんだ比熱が便利

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さて、この手の問題を解いていると大抵の場合「熱容量」ではなく「比熱」が与えられてます。熱容量を教えてくれたら計算が楽なのになぜでしょうか。

それは、同じ物質でも熱容量は重さによって変化するからです。加熱する物質が多ければ多い分エネルギーも多く必要。例えば、ある鉄の温度を1℃上げるのに400KJ必要で、ある木材温度を1℃上げるのに300KJ必要だったとしましょう。鉄の方が加熱しやすいけれど、質量が多いのでトータル多くのエネルギーが多く必要。一方木材は加熱しにくいけれど質量が少ないためトータルの必要エネルギーは少なくすみます。

このように質量の多い少ないによる影響が出るもの。そこで、熱容量を質量で割った値が比熱が、純粋にその物質がどれくらい加熱しやすいかの指標となります。

4.熱量計算例題

ここでは、例題を解くことで比熱と熱容量の区別をはっきりさせます。問1〜問4が出来たら比熱と熱容量の区別は完璧。ちなみに、問1〜問4は全て同じ物質を加熱しています。

問1.熱容量が100KJ/℃の物質100gを30℃→60℃に加熱するのに必要なエネルギーは?

問2.熱容量が200KJ/℃の物質200gを30℃→60℃に加熱するのに必要なエネルギーは?

問3.比熱が1KJ/g/℃の物質100gを30℃→60℃に加熱するのに必要なエネルギーは?

問4.比熱が1KJ/g/℃の物質200gを30℃→60℃に加熱するのに必要なエネルギーは?

\次のページで「5.熱容量不要論」を解説!/

解答
問1.熱容量が与えられているので、100KJ/℃x30℃=300KJ(100gは無視)

問2.熱容量が与えられているので、200KJ/どうx30℃=600KJ(200gは無視)

問3.比熱と質量と温度差から、1KJ/g/℃x100gx30℃=300KJ

問4.比熱と質量と温度差から、1KJ/g/℃x200gx30℃=600KJ

お分かりと思いますが、問1と問3、問2と問4は全く同じ計算をしていますね。問1〜2は熱容量が違う値になっているため、違う物かなとも思ってしまいますね。実は質量が違うだけなのですが。問3〜問4は比熱が同じ値と明記されているため同じ物なんだなと分かりやすいですね。

5.熱容量不要論

5.熱容量不要論

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「熱量の計算は比熱x質量x温度差でやるんだから、熱容量なんて要らない。」大概の問題はこう考えても問題なさそうですよね。

ただし、熱容量という概念が必要な時があります。例えば、物質の構成が均一でない場合。この辺は比熱1KJ/℃/gだけれど、この辺は2KJ/℃/gといった具合です。

このように比熱が場所によって均一でないと、単純に比熱x質量では熱容量は出せません。どこの比熱を正とすべきかよく分からないですもんね。1℃上げるのに必要なエネルギーを測定してそれを熱容量とするのが良さそう。熱容量が必要な時もあります

比熱・熱容量の共通点と違いを理解しよう

比熱・熱容量の共通点はどちらも温度1℃上げるのに必要なエネルギーということ。相違点は熱容量は物質全体を、比熱は物質1gを加熱するのに必要なエネルギーということです。比熱が均一な物質は比熱x質量で熱容量を算出することが可能ですよ。

" /> 簡単でわかりやすい!比熱と熱容量の違いと共通点!例題も理系ライターが詳しく解説 – Study-Z
物理

簡単でわかりやすい!比熱と熱容量の違いと共通点!例題も理系ライターが詳しく解説

20℃の水を100℃のお湯にしたい時、どれだけエネルギーが必要か分かるか?これを計算するのに、「20℃の水を100℃に加熱。」「80℃差。そう、熱容量に80をかけたらいい。」「いや待てよ、今回は比熱が与えられてるな。比熱だと重さもかける?」…比熱と熱容量はごっちゃになりそうです。区別が曖昧だと計算間違いの元になるぞ!

今回は熱力学に詳しいライターR175と一緒に「比熱」と「熱容量」の違いをはっきりさせていくぞ!

ライター/R175

理科教員を目指すブロガー。前職で高温電気炉を扱っていた。その経験を活かし、教科書の内容と実際の現象を照らし合わせて分かりやすく解説する。

1.比熱と熱容量とは?

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比熱も熱容量も温度を上げるため、どれだけエネルギーが必要かを表す「温めやすさ」の指標。物質全体の温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが熱容量で、物質1gの温度を1℃上げるのに必要なエネルギーが比熱です。

これを丸暗記すれば、温度上昇の計算は余裕かもしれないですね。ただ、なぜこのような定義をしているかを理解していないと公式を忘れやすく、比熱と熱容量が区別できなくなって計算間違いをするリスクも出てきます。この記事で熱容量と比熱の違いを明確にしていきましょう。

2.比熱と熱容量の共通点

2.比熱と熱容量の共通点

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まずは共通点からみていきましょう。比熱も熱容量も温度1℃上げるのに必要なエネルギー、つまり物質の温めやすさの指標。

物質は温度が高くなればなるほど、エネルギーを多く持っているものです。なぜなら、温度が高いほど物質を構成する原子の運動が激しいから。温度を上げるためにはエネルギーが必要ですよね。どのくらいのエネルギーが必要なのか?それを計算するために、比熱や熱容量を使います。以下例題を見てみましょう。

2-1.湯沸かしエネルギー

2-1.湯沸かしエネルギー

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20℃の水を100℃まで沸かします。20℃から60℃まで沸かすのに200KJのエネルギーが必要でした。

Q1.60℃からさらに100℃まで沸かすのにどれだけエネルギーが要るでしょうか?
A1.20℃→60℃、40℃差で200KJ。
      60℃→100℃も40℃差なのであと200KJ必要。
   答えは200KJ。

Q2.20℃→80℃まで上げるには何J必要でしょうか?
A2.20℃→60℃、40℃差で200KJ必要。と言うことは、
   1℃加熱するのに必要なエネルギーは200KJ/40=5KJ。
      20℃→80℃の60℃差だと、5KJx60で300KJ必要。
    答えは300KJ。

ここで出てきた、1℃加熱するのに必要なエネルギー5KJこそ熱容量。その5KJを質量[g]で割った値が比熱いずれにせよ、温度1℃上げるのに必要なエネルギーであることは変わりありませんね。

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こちらの図を解説していきましょう。温度差が大きいほど、より多くの加熱エネルギーが必要です。物質Aは100KJ使って30℃上昇、物質Bは110KJ使って50℃上昇したとすると、物質Bの方が加熱に必要なエネルギーが多かったので、物質Bの方が温めにくい気がしますがそんなことはないですよね?

比熱も熱容量も、温度1℃加熱するのに必要なエネルギーを表し、温めやすさをフェアに比較しています

3.比熱と熱容量の違い

では、比熱と熱容量の違いを簡単に解説していきましょう。

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