
ホルモンの島?「膵臓」の「ランゲルハンス島」とは?現役講師が簡単わかりやすく解説!
ランゲルハンス島を構成する細胞たち
ランゲルハンス島を構成する細胞は、1種類ではありません。なんと5種類もの内分泌細胞が集まって、小さなこの島を構成しています。5種類の細胞はそれぞれに名前があり、内分泌する物質もそれぞれです。
α細胞(A細胞)
グルカゴンというホルモンを分泌します。グルカゴンは血糖値の下がる空腹時に分泌されるホルモン。肝臓にはたらきかけて、血糖値の上昇を促します。肝臓には、普段の食事で摂りすぎた糖(グルコース)がグリコーゲンという形で貯蔵されているんです。グルカゴンは、肝臓でのグリコーゲンの分解を促し、グルコースを生み出すことで血糖値を上げます。逆に、食後など血糖値が十分に高い状態では分泌が抑えられているホルモンです。
糖尿病などでひどい低血糖状態になってしまった人にグルカゴンを注射すると、血糖値が回復します。
β細胞(B細胞)
インスリンというホルモンを分泌する、ランゲルハンス島の中でもとくに重要な細胞です。食事をすると、摂取した糖分により血糖値が急上昇します。そんな時に分泌されるのがインスリン。インスリンが分泌されると、血液中のグルコースが細胞に取り込まれ、血糖値が下がるのです。
私たちのからだの機能を調節するホルモンのうち、「血糖値を上げる作用をもつホルモン」はいくつか挙げられますが、「血糖値を下げる作用をもつホルモン」は、インスリンがほぼ唯一のホルモンといわれています。インスリンの分泌に異常が現れ、血糖値が高い状態が続く病気が、日本国内だけでも数百万人が苦しんでいる糖尿病です。

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インスリンの分泌が原因で起こる糖尿病には、一型と二型があります。糖尿病患者の大多数は、長年の高カロリー摂取などにより、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンを受け取る細胞のはたらきが鈍くなってしまうことで生じる二型。一型は、ウイルスの感染や免疫疾患によりランゲルハンス島β細胞に障害が起き、インスリンの分泌そのものが困難になってしまうためにおこります。
ランゲルハンス島は一度損傷すると回復が難しい細胞です。そのため、β細胞が壊れてしまっている一型糖尿病の治療は困難を極めます。一方、二型糖尿病は摂取カロリー制限や日頃の運動によって、ある程度防ぐことができる病気。生活習慣が乱れがちの方は、ぜひ一度見直してみてください。いずれの糖尿病も症状が重くなると、毎食後にインスリンを注射しなくてはならなくなります。
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δ細胞(D細胞)
ソマトスタチンというホルモンを分泌します。ソマトスタチンは、「他のホルモンの分泌を抑える」はたらきをするホルモンです。同じ膵臓では、ランゲルハンス島から分泌されるインスリンやグルカゴンの分泌を抑制します。
このソマトスタチンは、膵臓だけでなく、脳や胃(幽門部)、十二指腸からも分泌され、それぞれの場所で別のホルモンや分泌液を制御しているんです。
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