今回は「有機物」と「無機物」について勉強していこう。

化学や生物の分野において度々登場するこのワードですが、正確な見分けを知らない人が多く理科に対する苦手意識が出やすい単元でもあるんです。

見分け方のコツを知れば理解が深まるぞ。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.辞書から見る「有機物」と「無機物」

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まずは有機物と無機物について、辞書で意味を引いてみましょう。

・有機物とは、生物に由来する炭素原子を含む物質の総称。また、有機化合物の意。
・無機物とは、水・空気・鉱物類およびこれらを原料として作った物質の総称。また、無機化合物の意。

広辞苑より引用

有機物は炭素原子を含み、水や空気や鉱物は無機物であるということは理解できるでしょう。しかし有機物と無機物を理解するには不十分です。では、辞書の内容だけでは説明しきれない有機物と無機物の違いと分類の仕方を一緒に見ていきましょう。

2.有機物の前提となる条件を考える

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有機物は炭素原子 C が含まれている化合物であることが大前提です。逆を考えれば、炭素原子が含まれていない化合物や単体、炭素原子が含まれていても単体である(つまり炭素の単体)は無機物であるといえます。これを念頭に置いておきましょう。

炭素原子が含まれていない化合物や単体の例を挙げてみましょう。

・化合物:塩化ナトリウム NaCl 、塩酸 HCl 、水 H2O 、硫酸 H2SO4 など
・単体:酸素 O2 、窒素 H2 、ヘリウム He 、銅 Cu 、マグネシウム Mg など

これらは全て無機物です。塩素原子 Cl の C に惑わされないように気を付けましょうね。

3.無機物の分類を見れば有機物が見えてくる

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炭素原子を含む物質が有機物と断定することはできません。炭素が含まれているのに無機物である物質があまりにも多すぎるのです。そこで役立つのが「無機物の見分け方」で、より正確な分類ができるようになります。

それさえわかれば、上記の写真に写るものも有機物と無機物の分類ができるようになりますよ。例えば… 有機物:机、ライム、ローズマリー 無機物:水、グラス、バースプーン

3-1.単体であること

単体は1種類の元素からなる物質のことです。つまり酸素や水素、鉄やナトリウムなどがこれに当たり、無機物に分類されることがわかりますね。また、有機物は炭素を含むことが条件になりますが、黒鉛やダイヤモンドは炭素 C の単体であることから無機物であるといえます。

3-2.酸化物であること

酸素と化合して生成した酸化物は無機物に分類されます。例えば、一酸化炭素 CO二酸化炭素 CO2 は炭素が含まれていますが有機物ではありませんよ。その他にも酸化銅 CuO や酸化銀 Ag2O も無機物に分類されますが、これらはそもそも炭素が含まれていないのでわかりやすいですね。

\次のページで「3-3.水酸化物であること」を解説!/

3-3.水酸化物であること

水酸化物とは水酸化物イオン OHを含む化合物です。中学レベルでは水酸化ナトリウム NaOH水酸化カルシウム Ca(OH)2 などの例で習いますよね。これらは炭素が含まれていないので、比較的見分けるのは簡単でしょう。

3-4.オキソ酸であること

オキソ酸とは酸素原子 O を含む酸をいいます。オキソ酸という言葉より、実際の例を見た方が理解が早いでしょう。硫酸 H2SO4 硝酸 HNO3 炭酸 H2CO3 がその例で、どれも酸素が含まれているのがわかりますね。中学校レベルで習う○○酸は無機物であることが多いので、この機会に化学式も覚えておきましょう。

3-5.塩(えん)であること

塩は中和によって生成する物質で無機質に分類されます。酸性とアルカリ性の中和反応では、必ず塩と水が生成されるのを覚えていますか?

塩化ナトリウム NaCl 硫酸カルシウム CaSO4塩化カルシウム CaCl2 が塩の代表です。中学で習う塩の多くは水素イオン H+ も水酸化物イオン OH も残っていないでしょう。しかし中には水素イオンが残った炭酸水素ナトリウム NaHCO3 や水酸化物イオンが残った塩化水素銅 CuCl(OH) という塩もありますので、余裕があれば覚えておきましょう。

4.実験で有機物を見分ける

これまでに挙げたものは全て純物質です。しかし混合物にも有機物と無機物は存在します。その見分け方を2つの実験を通して学んでみましょう。どちらも純物質、混合物に共通して使える実験なので、分類を考えるときのヒントにしたいですね。

\次のページで「4-1.加熱すると焦げる」を解説!/

4-1.加熱すると焦げる

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自宅でも簡単にできる実験で試してみましょう。使うものは、どこの家にもある塩と砂糖です。

の主成分は塩化ナトリウム NaClであり、炭素を含まないことから無機物であることがわかりますね。一方で、砂糖の主成分はスクロース、もしくはショ糖と呼ばれる糖で C12H22O11 と表される有機物です。この化学式は難しいので覚える必要はありませんよ。

では、塩と砂糖をそれぞれフライパンで加熱するとどうなるでしょう。塩は焦げずにフライパンに残るのに比べ、砂糖は溶けて焦げて炭になってしまうはずです。このように、加熱すると焦げるものは有機物と考えていいでしょう。その他にも、木、紙、パンなども有機物といえますよ。

4-2.加熱すると二酸化炭素が発生する

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有機物の中には、加熱しても炭が残ることなく消えてしまうものもあります。例えば、ロウソクは火をつけると若干のススは残るものの、木を燃やしたときのような炭は残りませんよね。その場合は加熱した際に発生した物質を収集することで確認がとれますよ。

有機物を加熱した際の反応は次の通りです。

有機物 + 酸素(加熱・酸化反応) → 炭や焦げ(残らない場合もある) + 水 + 二酸化炭素

ロウソクの加熱でも同様の反応が起こっています。石灰水を用いて加熱の際に発生した気体が二酸化炭素であることを証明することが、もとの物質が有機物で会ったことの証明にもなりますね。

炭素 C を含む「有機物」と含まない「無機物」

有機物と無機物の違いを見たとき、炭素原子 C が含まれている化合物であるかどうかが重要なポイントです。

炭素が含まれていないものは無機物であるのが大前提ですが、炭素が含まれていても無機物である場合があります。それを判断するうえで重要なのが、無機物であることの5つの条件です。見分けるコツは名称や化学式にあります。

・無機物は炭素原子が含まれておらず、単体・酸化物・水酸化物・オキソ酸・塩でない物質
・有機物はそれ以外の炭素を含む化合物で、加熱すると焦げたり二酸化炭素ができる物質

具体例を挙げて覚えると理解が深まりますよ。

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化学無機物質理科

有機物と無機物の見分け方のコツとは?定義や分類も元塾講師がわかりやすく解説

今回は「有機物」と「無機物」について勉強していこう。

化学や生物の分野において度々登場するこのワードですが、正確な見分けを知らない人が多く理科に対する苦手意識が出やすい単元でもあるんです。

見分け方のコツを知れば理解が深まるぞ。さあ、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.辞書から見る「有機物」と「無機物」

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まずは有機物と無機物について、辞書で意味を引いてみましょう。

・有機物とは、生物に由来する炭素原子を含む物質の総称。また、有機化合物の意。
・無機物とは、水・空気・鉱物類およびこれらを原料として作った物質の総称。また、無機化合物の意。

広辞苑より引用

有機物は炭素原子を含み、水や空気や鉱物は無機物であるということは理解できるでしょう。しかし有機物と無機物を理解するには不十分です。では、辞書の内容だけでは説明しきれない有機物と無機物の違いと分類の仕方を一緒に見ていきましょう。

2.有機物の前提となる条件を考える

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有機物は炭素原子 C が含まれている化合物であることが大前提です。逆を考えれば、炭素原子が含まれていない化合物や単体、炭素原子が含まれていても単体である(つまり炭素の単体)は無機物であるといえます。これを念頭に置いておきましょう。

炭素原子が含まれていない化合物や単体の例を挙げてみましょう。

・化合物:塩化ナトリウム NaCl 、塩酸 HCl 、水 H2O 、硫酸 H2SO4 など
・単体:酸素 O2 、窒素 H2 、ヘリウム He 、銅 Cu 、マグネシウム Mg など

これらは全て無機物です。塩素原子 Cl の C に惑わされないように気を付けましょうね。

3.無機物の分類を見れば有機物が見えてくる

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炭素原子を含む物質が有機物と断定することはできません。炭素が含まれているのに無機物である物質があまりにも多すぎるのです。そこで役立つのが「無機物の見分け方」で、より正確な分類ができるようになります。

それさえわかれば、上記の写真に写るものも有機物と無機物の分類ができるようになりますよ。例えば… 有機物:机、ライム、ローズマリー 無機物:水、グラス、バースプーン

3-1.単体であること

単体は1種類の元素からなる物質のことです。つまり酸素や水素、鉄やナトリウムなどがこれに当たり、無機物に分類されることがわかりますね。また、有機物は炭素を含むことが条件になりますが、黒鉛やダイヤモンドは炭素 C の単体であることから無機物であるといえます。

3-2.酸化物であること

酸素と化合して生成した酸化物は無機物に分類されます。例えば、一酸化炭素 CO二酸化炭素 CO2 は炭素が含まれていますが有機物ではありませんよ。その他にも酸化銅 CuO や酸化銀 Ag2O も無機物に分類されますが、これらはそもそも炭素が含まれていないのでわかりやすいですね。

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