今回は物質変化について勉強していこう。

氷は溶ければ水になるし、水を加熱するとお湯になって最後は水蒸気になって消えてしまうよな。化学変化とは違って、同じ物質が形や性質のみを変えることを状態変化というんです。

こんな物質の状態が変化する現象について、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質の性質を表す3つの状態

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物質は温度や圧力などの環境によって、固体・液体・気体の三態として存在します。これを物質の三態といい、物質の状態変化では重要なキーワードです。

固体分子が規則正しく並んでいる状態で、そのために分子が動き回れるほどではありませんがわずかに振動しています。

液体は固体よりも分子の動きは活発で、比較的自由に動き回れる状態と考えればいいでしょう。

気体になるとさらに分子はエネルギーを持ち、空間を自由に運動できるようになります。1つ1つの分子が広範囲で運動するため、拡散しやすく体積も大きくなるのです。

1-1.状態変化に伴う質量と体積の変化

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水を例にして三態を考えましたが、氷も水も水蒸気も、水 H2O であることには変わりありませんよね。ということは、物質の状態は変わっても物質が変わったわけではないはずです。そこで質量と体積の変化について考えてみましょう。

写真のような角砂糖を使って考えると、固体である氷は水分子がきちんと整列した綺麗な立方体の形をしています。しかし液体である水は水分子が動き始めて角砂糖がぼろっと崩れてしまったような状態です。さらに気体である水蒸気は水分子が自由に動いている角砂糖が周辺に飛び散ったような状態を想像してみましょう。

角砂糖(水分子)がどんな状態でも、粒を集めれば質量はどの状態でも同じになるのがわかるでしょうか。一方で角砂糖(水分子)の広がりが大きくなればなるほど、その面積(水分子の体積)は大きくなっていくのです。

質量:固体=液体=気体

体積:固体<液体<<気体 液体から気体への体積変化は特に大きい!

ただし水の状態変化の場合

体積:液体<固体<<気体 となるので覚えておきましょう。

\次のページで「2.呼び名が変わる状態変化の過程」を解説!/

2.呼び名が変わる状態変化の過程

Phase change - ja.svg
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物質には固体・液体・気体という三態がありましたが、氷や水、水蒸気に代表されるようにそれぞれの状態を行き来して変化するのはご存知ですよね。それらの過程には状態変化を表す呼び名がついています。「水が○○すると…」のように授業での解説に使われることも出てくるので、今のうちに覚えておきましょう!

厳密にいえば上図のようにプラズマという状態もあるのですが…中学高校レベルではあくまでも物質の三態について知っておけば十分です。

2-1.融溶:個体から液体へ

Water droplet blue bg05.jpg
By fir0002 flagstaffotos [at] gmail.com Canon 20D + Tamron 28-75mm f/2.8 - 投稿者自身による作品, GFDL 1.2, Link

状態変化の中でも固体から液体への変化はもっとも想像しやすいものでしょう。融溶(ゆうかい)の代表ともいえるのが、氷が溶けて水になるという変化です。

固体は加熱することで液体に変化します。融溶が起こる温度というのは物質ごとに決まっていて、その温度を融点というのです。

例えば氷が溶け始める温度は0℃ですよね。つまり、水の融点は0℃であり、0℃の環境では水と氷が合わさっている状態といえます。

2-2.凝固:液体から固体へ

融溶の逆の状態変化を凝固(ぎょうこ)といい、液体から固体への変化を表します。水を冷やして氷にするのと同じですね。

前述したように、物質が溶け始める温度があれば凍り始める温度があるはずですよね。それを凝固点というのですが、これは基本的に融点と同じ値と考えていいでしょう。氷は0℃になると溶け始め、水は0℃で凍りはじめますよね。そのため凝固点を融点と言い替えることもできますが、厳密にいえば意味することには違いがあるのです。

ところで、いつでも水は0℃以下になれば凍りはじめるかといえばそうではありません。0℃以下になっても凍らずにそのまま温度が下がっていく現象過冷却(かれいきゃく)といいます。過冷却状態の水に刺激を与えることで一気に凝固が進む様子は不思議に思うはずです。気になる人は動画などで見てみてくださいね。

2-3.蒸発:液体から気体へ

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液体から気体への変化は蒸発(じょうはつ)または気化(きか)といいます。

水が蒸発する様子を思い浮かべようとすると、きっと水を沸騰させる様子を思い浮かべた人が多いでしょう。それももちろん正解です。水が沸騰して水蒸気に変わっていますよね。しかし融点、凝固点のように蒸発点という蒸発し始める温度というものは決まっていません

想像してみてください。雨上がりの水溜まりはいつの間にか蒸発して消えてしまいますよね。

じゃあ沸点は何?と思いませんか?沸点というのは、水の表面からの気化だけでなく、内部から沸騰が起こり気化していく温度のことをいうのです。その証拠に、沸騰したときは鍋の底から気泡が上がってくるのが見えますよね。

2-4.凝縮:気体から液体へ

気体から液体への状態変化である凝縮(ぎょうしゅく)は、コップにつく水滴をイメージしてみましょう。

湿度何%という指標があるように、空気中には必ず水が気体となって存在しています。湿度が低ければカラッとして、湿度が高ければジメジメする感じがしますよね。

この水滴はコップの中の冷たい飲み物によって空気が冷やされ、凝縮が起こったものです。このタイミングで飽和水蒸気というキーワードについても勉強できるといいですね。

\次のページで「2-5.昇華:個体から気体へ」を解説!/

2-5.昇華:個体から気体へ

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この昇華(しょうか)というのは固体から気体へ、液体になることなく状態変化が起こる場合に限ります。これまでは水を例にとって考えてきましたが、昇華を代表するとっておきの物質がありますよ。それはドライアイスと防虫剤のナフタレンです。

アイスや生菓子などを買ったときにドライアイスをもらったことがあるでしょうか。ドライアイスを室内に放置すると、白い煙のようなものを出しながら消えてしまいます。実はドライアイスは二酸化炭素が固体になったものなのです。このとき周りが濡れていないことからも、ドライアイスという固体が二酸化炭素という気体に昇華してしまったということがわかるでしょう。

一方で防虫剤のナフタレンも、交換のときにはいつの間にかタブレット状の固体が無くなっているはずです。ナフタレンのような防虫剤というのは、防虫成分をクローゼットや押し入れの中に拡散させることで効果を出しています。これに昇華という現象が使われているのです。

2-6.昇華:気体から固体へ

気体から固体への状態変化も昇華といいます。あまり一般的な例がないためテストに出ることは稀ですが、昇華という言葉自体はきちんと覚えておきたいですね。

この昇華の一例では樹氷(じゅひょう)が挙げられます。

樹氷は氷点下の環境で水分が昇華したり、過冷却によって霧や雲の微水滴が樹木などに付着することによってできる氷の総称です。木の枝が樹氷で覆われると、氷の花が咲いたような幻想的な光景を楽しむことができます。

もし余裕があれば覚えておくといいですね。

名称ごとの特徴や例を覚えておこう!

物質の状態変化で大事なことは、物質の三態(固体・液体・気体)の特徴を覚えることです。

分子の並び方に注目することで、状態変化に伴う体積の変化にも気付けるでしょう。しかし物質が変わったわけではないので状態は変わっても体積は変わらないというのがポイントでしたね。

さらに各変化の過程は実際の物質を例にすることで覚えるのが楽になります。融解・凝固・蒸発・凝縮・昇華という漢字の持つイメージも覚える際のヒントになるかもしれませんね。表や図にして自分なりにまとめるのが勉強のコツですよ。

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化学物質の状態・構成・変化理科

氷が溶けたり凍ったり…「物質の状態変化」について元塾講師がわかりやすく解説

今回は物質変化について勉強していこう。

氷は溶ければ水になるし、水を加熱するとお湯になって最後は水蒸気になって消えてしまうよな。化学変化とは違って、同じ物質が形や性質のみを変えることを状態変化というんです。

こんな物質の状態が変化する現象について、化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.物質の性質を表す3つの状態

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物質は温度や圧力などの環境によって、固体・液体・気体の三態として存在します。これを物質の三態といい、物質の状態変化では重要なキーワードです。

固体分子が規則正しく並んでいる状態で、そのために分子が動き回れるほどではありませんがわずかに振動しています。

液体は固体よりも分子の動きは活発で、比較的自由に動き回れる状態と考えればいいでしょう。

気体になるとさらに分子はエネルギーを持ち、空間を自由に運動できるようになります。1つ1つの分子が広範囲で運動するため、拡散しやすく体積も大きくなるのです。

1-1.状態変化に伴う質量と体積の変化

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水を例にして三態を考えましたが、氷も水も水蒸気も、水 H2O であることには変わりありませんよね。ということは、物質の状態は変わっても物質が変わったわけではないはずです。そこで質量と体積の変化について考えてみましょう。

写真のような角砂糖を使って考えると、固体である氷は水分子がきちんと整列した綺麗な立方体の形をしています。しかし液体である水は水分子が動き始めて角砂糖がぼろっと崩れてしまったような状態です。さらに気体である水蒸気は水分子が自由に動いている角砂糖が周辺に飛び散ったような状態を想像してみましょう。

角砂糖(水分子)がどんな状態でも、粒を集めれば質量はどの状態でも同じになるのがわかるでしょうか。一方で角砂糖(水分子)の広がりが大きくなればなるほど、その面積(水分子の体積)は大きくなっていくのです。

質量:固体=液体=気体

体積:固体<液体<<気体 液体から気体への体積変化は特に大きい!

ただし水の状態変化の場合

体積:液体<固体<<気体 となるので覚えておきましょう。

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