今回は相対速度について解説していきます。
相対速度は、動いているものから見たときの他の速度のことです。例えば車に乗っているとき、周りの建物は動かないが、前から後ろへ動いているように見えるでしょう?そのようなみかけの速度を相対速度という。対して、普段速度と言っている、客観的に考える速度は絶対速度と区別することもある。

力学を専攻しているライター、ユッキーと一緒に解説していきます。

ライター/eastflower

大学で建築構造力学を専攻する学生。構造力学では専門的な考えのほかに中高の物理の知識が基礎となるため、その知識をかみ砕いて説明できるよう心掛けている。

1 相対速度とは?

image by iStockphoto

相対速度とは、相手と自分の速度の差によって表れる見かけ上の速度です。

ここでは車を例に出します。車は、実際には40km/h~60km/hで走っているであろう車なのに、対向車線の車とすれ違うとき相手の車はとても速く走っているように見えますよね。

そのように、自分の速度を考慮した相手の速度を相対速度といいます。

image by Study-Z編集部

相対速度を求める際は、このように、自分(観測する側)と相手(観測される側)の速度の差を求め、自分から見た相手の速度を表現します

ここでの速度は、符号の正負によって向きを表すことに留意してください。(ベクトルの引き算である)

相対速度の考え方で一番の違いは、何度も説明したように見る人が動いている、という点です。

他の物理での速度の問題は、見る側が動いていない(神の視点)でした。こちらは、あえて相対速度と区別するときには絶対速度といいます。

この場合は上式=相手の速度-0となっている、と考えれば理解しやすいでしょう。

2 すれ違う車と速度

2 すれ違う車と速度

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例えば、二車線の道路の上を、それぞれ一台ずつ車が走っているとします。上の車線を走る車Aは60km/h、下の車線を走る車Bは30km/hの速度で走行していますね。

この2台の車がすれ違う時の速度について考えましょう。以下、右向きを正とします。

まずは絶対速度です。右向きを正とするため、図上側Aの車は+60km/hで走っています。対して図下側Bの車は、左向きなので-30km/hで走っていると言えるでしょう。

ここまでは普通の速度(にベクトルを考慮した)の考え方ですね。

\次のページで「2-1 では、相対速度は」を解説!/

2-1 では、相対速度は

次に、相対速度を考えます。主観的観念のため、どちらから見た相対速度かを考えていきましょう。

まずはAの車から見た速度を考えます。このとき見られるのは、「Aから見たBの速度」です。そのため、この時点で出てくる値は左向きの-ということが想像されますね。

先程の式に当てはめて考えると、

Vb=-30-60=-90(km/h)

となり、これは「Aから見ると、Bは図の左方向に90km/hで走っているように観測される」ということを表しています。

実際に道路を車が走っているところを想像してみてください。あまり速度を出していなくても、対向車がすれ違うときは、対向車がものすごい速度で通過していくように見えますよね?この90km/hという大きな数字は、その感覚を表している、というイメージです。

では、対して「BからみたAの速度」はどうなるでしょうか?

Va=60-(-30)=90(km/h)

となります。先程との違いは符号のみですね。つまり、Aから見ても、Bから見ても向きが異なるだけで、相対速度の大きさは変わらないことがわかります。

3 同じ向きで動いている場合

3 同じ向きで動いている場合

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では次に、同じ方向で運動する場合についてはどうでしょうか。

例えば、2車線の道路の上を、それぞれ1台ずつ車が走っているとします。上の車線を走るCの車は右向きに60km/hで走行し、下の車線を走るDの車は同様に右向きに30km/hで走行していると仮定しました。

Cの車の方が速度が大きいため、こちらの方が先に進んでいくことが想像されますね。

実際に相対速度を求めてみます。まずは「Dから見たCの速度」を考えましょう。

Vc=60-30=30(km/h)

となり、これはDから見るとCが先へ進んでいくというイメージとも一致するかと思います。

では「Cから見たDの速度」を考えましょう。

Vd=30-60=-30(km/h)

となりますね。これは、Cから見るとDは左向きに動いているように見えることを意味しています。

実際にはどちらも同じ方向に走行していますが、Cから見るとDは逆向きに動いているように見えるという結果になりました。

自分がCのドライバーだと想像してみてください。Dよりも速く走行しているため、Dはどんどん後ろに遠ざかって見えるはずです。それが、Cとは逆向きに走行して見える、という理屈になります。

4 相対速度の考えを応用した例題

4 相対速度の考えを応用した例題

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相対速度の考え方を用いた問題を解いてみましょう。

ここでは、すれ違いの問題を例に出します。中学受験から公務員試験まで色々な試験で出題される問題ですので、年齢を問わず見たことがある人は多いのではないでしょうか。

長さ200mの電車Aと長さ400mの電車Bが図のように向かい合う方向に走行しすれ違います。電車Aの速さが10m/sで、電車Bの速さが20m/sである場合、すれ違いはじめてから終わるまでの時間はいくらになるでしょうか。考えてみましょう。

以下解説となるので、答え合わせをしてみてください。

\次のページで「4-1 解答」を解説!/

4-1 解答

時間=距離/速さですので、距離と速さを求めます。

まずは列車の移動距離を考えましょう。すれ違いはじめてから終わるまでの、2つの列車が移動する距離は列車の長さの合計です。

電車Aの先頭が電車Bの先頭から終端まで移動する距離は400mで、さらにそこからAの終端がBの終端まで移動する距離は200mですので、

400+200=600(m)

となります。

次に速度です。ここでは相対速度を用います。仮に右向きを正とすると

Vb=20-(-10)=30(m/s)

Va=-10-20=-30(m/s)

です。

前に説明した通り、この2つは向きが異なるだけで値の大きさは変わらず30です。この問題では最終的に時間を求めるため、向きは考えずに30(m/s)という大きさのみを考えます。

よって、電車AとBがすれ違うのに要する時間は、

t=600/30=20(s)

です。

相対速度は視点を想像して考えよう

相対速度は何度も説明している通り、観測する側の速度も考慮した速度のことです。対して普段の速度は絶対速度と区別されます。

普通に速度と言った場合は絶対速度を指しますので注意してください。

相対速度はどちらから見ても向きは違えど大きさは変わらないこともポイントです。

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物理物理学・力学理科

3分で簡単「相対速度」!例題を交えながら現役理系学生が5分でわかりやすく解説!

今回は相対速度について解説していきます。
相対速度は、動いているものから見たときの他の速度のことです。例えば車に乗っているとき、周りの建物は動かないが、前から後ろへ動いているように見えるでしょう?そのようなみかけの速度を相対速度という。対して、普段速度と言っている、客観的に考える速度は絶対速度と区別することもある。

力学を専攻しているライター、ユッキーと一緒に解説していきます。

ライター/eastflower

大学で建築構造力学を専攻する学生。構造力学では専門的な考えのほかに中高の物理の知識が基礎となるため、その知識をかみ砕いて説明できるよう心掛けている。

1 相対速度とは?

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相対速度とは、相手と自分の速度の差によって表れる見かけ上の速度です。

ここでは車を例に出します。車は、実際には40km/h~60km/hで走っているであろう車なのに、対向車線の車とすれ違うとき相手の車はとても速く走っているように見えますよね。

そのように、自分の速度を考慮した相手の速度を相対速度といいます。

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相対速度を求める際は、このように、自分(観測する側)と相手(観測される側)の速度の差を求め、自分から見た相手の速度を表現します

ここでの速度は、符号の正負によって向きを表すことに留意してください。(ベクトルの引き算である)

相対速度の考え方で一番の違いは、何度も説明したように見る人が動いている、という点です。

他の物理での速度の問題は、見る側が動いていない(神の視点)でした。こちらは、あえて相対速度と区別するときには絶対速度といいます。

この場合は上式=相手の速度-0となっている、と考えれば理解しやすいでしょう。

2 すれ違う車と速度

2 すれ違う車と速度

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例えば、二車線の道路の上を、それぞれ一台ずつ車が走っているとします。上の車線を走る車Aは60km/h、下の車線を走る車Bは30km/hの速度で走行していますね。

この2台の車がすれ違う時の速度について考えましょう。以下、右向きを正とします。

まずは絶対速度です。右向きを正とするため、図上側Aの車は+60km/hで走っています。対して図下側Bの車は、左向きなので-30km/hで走っていると言えるでしょう。

ここまでは普通の速度(にベクトルを考慮した)の考え方ですね。

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