光や物質の波動性と粒子性について解説していこう。
このあたりから現代物理が花開くのですが、この不思議な物語で物理が面白いものとして感じられるはずです。

今日も物理系ライターのタッケさんと解説します。

ライター/eastflower

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。1900年くらいから現代物理学は急速に発展し、古典力学を修正してきた。この勢いで発展したら100年度はどうなっているのか。

古典論争 光は波か粒子か

image by iStockphoto

光は波か粒子か?
この問題については過去多くの論争がありました。

17世紀中頃、光を小さな穴から暗闇に投影すると同心円状の模様を生じることがわかっていました。この理由について、ホイヘンスは水面に生じる波の模様と同じ様な現象が起こっていると考えて光は波であるとしたのです。(当時はまだこれが回折・干渉という考えには至っていません)

また、ホイヘンスは素元波という概念を用いて波の屈折・反射の現象をうまく説明できました。これにより光は波であると考えたのです。

しかし、われわれの日常経験に照らしてみれば、波が伝わるためには波を伝える物質が必要なことはおわかりですね。たとえば、音波が伝わるためには空気という媒体が必要です。他にも、鉄や水などの液体・固体も音波を伝えることができます。

また、一般に波の伝わる速さは固いものほど速いのです。
例えば、音波の場合を以下に示します。
 空気中  約 340m/s
 水中   約1500m/s
 鉄固体中 約6000m/s

太陽から地球間は真空です。そこで、真空中を光が伝わるためには真空といえども波を伝える物質が必要と考えられたのです

光の速さはとても早いので、真空の空間には鋼鉄よりも固い物質が存在するのだと考える人もいました。この物質はエーテルといわれ、光に対してだけ鋼鉄の固さを持つが他の物質に対しては無抵抗であるという都合の良いものでした。

後にこのエーテル説は実験により否定されることになります。

ニュートンの粒子説

さて、ホイヘンスの波動説に対してニュートンは光の粒子説を考えていました。光が例えばガラスとか水に差し込むと屈折しますね。ニュートンはこの現象を彼らしく万有引力の法則を使って説明できると考えました。

ニュートンはどういう風に説明したでしょうか?図を見てください。

image by Study-Z編集部

ニュートンは光が粒子でありガラスなどとの物質と、万有引力によりひきつけられると説明したのです。そのため、ガラスの方向への光の速さが大きくなり、その結果曲がると考えました。

この考えでは、光速は物質中のほうが大きくなることに注意してください。

ホイヘンスの波動説

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一方、前述したようにホイヘンスは光の波動説を唱えていました。

ホイヘンスはもし光が粒子であるなら光を衝突させると何がしかの影響が出るはずだと考えたのです。しかし、光を対向させても、お互い見る光に普通は影響はありませんよね。

波には独立性があるため、光が波であるなら光が対向してもうまく説明できます。そのため、ホイヘンスは光の波動説を唱えたのです。

その後この論争に決着がつくのはヤングによる実験を待たなければなりません。
1805年、トマス・ヤングは「ヤングの実験」といわれる実験を行い。波特有の現象とされる「回折・干渉」を光が起こすことを示したのです。

また、その後実験技術がすすみ、物質中の光速が精密に測定されました。その結果、いかなる物質中の光速も真空より必ず遅くなることが示されたのです。

ニュートンの万有引力の説明では、粒子である光は万有引力を受けて加速するので、物質中では真空中よりも速くなければなりません。というわけで、説明に矛盾が生じニュートンの粒子説は駆逐されることになりました。

これらにより、光の波動説が優勢となりました。しかし、話はこれで終わらないところが面白いところです。

\次のページで「現代における光の認識」を解説!/

現代における光の認識

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光は波であることで一件落着したのですが19世紀終わりころにある実験がなされました。そして、この実験の論文を目にしたアインシュタインは「ここには何かある!」と思ったのでしょう。この実験の研究に取り組みます。

さて、ある実験とは「光電効果」といわれる実験です。この実験は、よく磨いた金属板に光を当てると、金属板から電荷が失われるというものでした。この実験の詳細については他の記事に譲りますが、重大な結論が導かれました。

簡単に言うと、古典的な光波動説ではこの実験を全くうまく説明することができなかったのです。そこでアインシュタインは光が粒子である!という仮説の元、この現象の説明に成功するのです。

それは全く見事に矛盾なく説明するものでした。ちなみに、アインシュタインはこの功績によりノーベル物理学賞を受賞しています。

高校の教科書にも載っているその理論はそれほど難解なものではありません。手品でも種明かしをされるとなあーんだ、と思いますね。しかし、最初にそのよう着想を得るというのは天才のなせる業でしょう。

驚くべき電子の性質 ド・ブロイ登場

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さあ、現代物理学において、従来、波であることが疑いのなかった光が粒子の性質を持つことがわかったのです。ここでさらに革新的なアイデアを思いついた男がいました。

フランス貴族の流れをくむ、ド・ブロイです。彼は、波であるとされた光に粒子性があるのなら、粒子である電子には逆に波動性があるのではないか?と考えました。野球のボールのようなイメージの電子に海の波のような性質がある、というのは驚くべきことです。

あまりにも飛躍した理論のため、当初あまり話題になりませんでした。しかし、ここでもやがてアインシュタインの目に留まり日の目を見ることになります。

その後、電子の波動性を示す重要な実験が行われ、もはや電子に波の性質があることが疑いのないことになりました。この波を電子波とよびます。電子顕微鏡はこの性質を利用しているのです。

ところが話はまだこれだけではありません。
電子が波動の性質を持つなら、陽子や中性子はどうか?と考えますね。
その後、全てのものは波動性を持つことがわかっています。これを物質に伴う波であるので物質波と呼ぶのです。

波動性と粒子性

さあみなさん、ここまで読まれてどう思いますか?光や電子は波でしょうか粒子でしょうか?

光の波の性質により、ヤングの実験をうまく説明できます。粒子である性質により光電効果をうまく説明できました。質量もある電子は電子線回折の実験によりその波動性が確かめられました。
粒子説と波動説、どちらが正しいのでしょうか。

電子陽子などの粒子や光は現在では、粒子性と波動性を併せ持つものとして考えられています。ずいぶん都合のいい考え方だと思われるかもしれません。われわれの想像する、波と粒子はずいぶん違います。しかし、実験事実がそうであるのでいたし方ないのです。

読者の中には、本当はそれはどちらかで科学が進歩すればきっと解決されるのだ、思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、現在では粒子性と波動性を併せ持つということが世の中の根源的な姿と考えられているのです。われわれはミクロの世界からすれば巨大ですね。そのため、われわれの想像できる世界観というものはわれわれの経験に基づいたものだけなのです。まさしく、「井の中の蛙、大海を知らず」のたとえどおりですね。

したがって、ミクロの世界はわれわれの常識からは思い描くことができなくても不思議はありません。

" /> 「波動性」と「粒子性」その不思議な振る舞いを理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
物理理科

「波動性」と「粒子性」その不思議な振る舞いを理系ライターがわかりやすく解説

光や物質の波動性と粒子性について解説していこう。
このあたりから現代物理が花開くのですが、この不思議な物語で物理が面白いものとして感じられるはずです。

今日も物理系ライターのタッケさんと解説します。

ライター/eastflower

物理学全般に興味をもつ理系ライター。理学の博士号を持つ。専門は物性物理関係。高校で物理を教えていたという一面も持つ。1900年くらいから現代物理学は急速に発展し、古典力学を修正してきた。この勢いで発展したら100年度はどうなっているのか。

古典論争 光は波か粒子か

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光は波か粒子か?
この問題については過去多くの論争がありました。

17世紀中頃、光を小さな穴から暗闇に投影すると同心円状の模様を生じることがわかっていました。この理由について、ホイヘンスは水面に生じる波の模様と同じ様な現象が起こっていると考えて光は波であるとしたのです。(当時はまだこれが回折・干渉という考えには至っていません)

また、ホイヘンスは素元波という概念を用いて波の屈折・反射の現象をうまく説明できました。これにより光は波であると考えたのです。

しかし、われわれの日常経験に照らしてみれば、波が伝わるためには波を伝える物質が必要なことはおわかりですね。たとえば、音波が伝わるためには空気という媒体が必要です。他にも、鉄や水などの液体・固体も音波を伝えることができます。

また、一般に波の伝わる速さは固いものほど速いのです。
例えば、音波の場合を以下に示します。
 空気中  約 340m/s
 水中   約1500m/s
 鉄固体中 約6000m/s

太陽から地球間は真空です。そこで、真空中を光が伝わるためには真空といえども波を伝える物質が必要と考えられたのです

光の速さはとても早いので、真空の空間には鋼鉄よりも固い物質が存在するのだと考える人もいました。この物質はエーテルといわれ、光に対してだけ鋼鉄の固さを持つが他の物質に対しては無抵抗であるという都合の良いものでした。

後にこのエーテル説は実験により否定されることになります。

ニュートンの粒子説

さて、ホイヘンスの波動説に対してニュートンは光の粒子説を考えていました。光が例えばガラスとか水に差し込むと屈折しますね。ニュートンはこの現象を彼らしく万有引力の法則を使って説明できると考えました。

ニュートンはどういう風に説明したでしょうか?図を見てください。

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ニュートンは光が粒子でありガラスなどとの物質と、万有引力によりひきつけられると説明したのです。そのため、ガラスの方向への光の速さが大きくなり、その結果曲がると考えました。

この考えでは、光速は物質中のほうが大きくなることに注意してください。

ホイヘンスの波動説

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一方、前述したようにホイヘンスは光の波動説を唱えていました。

ホイヘンスはもし光が粒子であるなら光を衝突させると何がしかの影響が出るはずだと考えたのです。しかし、光を対向させても、お互い見る光に普通は影響はありませんよね。

波には独立性があるため、光が波であるなら光が対向してもうまく説明できます。そのため、ホイヘンスは光の波動説を唱えたのです。

その後この論争に決着がつくのはヤングによる実験を待たなければなりません。
1805年、トマス・ヤングは「ヤングの実験」といわれる実験を行い。波特有の現象とされる「回折・干渉」を光が起こすことを示したのです。

また、その後実験技術がすすみ、物質中の光速が精密に測定されました。その結果、いかなる物質中の光速も真空より必ず遅くなることが示されたのです。

ニュートンの万有引力の説明では、粒子である光は万有引力を受けて加速するので、物質中では真空中よりも速くなければなりません。というわけで、説明に矛盾が生じニュートンの粒子説は駆逐されることになりました。

これらにより、光の波動説が優勢となりました。しかし、話はこれで終わらないところが面白いところです。

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