今回は、「代謝」について学んでいきます。

代謝が良い・悪い、なんて、テレビや日常会話で耳にしたことがある人も多いでしょう。ただ、生物学でいう「代謝」とは、少し意味に違いがあるんです。まずはその違いを説明してから、具体的な現象も交えて代謝の要点をまとめよう。

理系大学生ライターこみとりと一緒に解説していきます。

ライター/こみとり

某国立大に通う理系ライター。高校時代から生物の図説を愛読している。今回は生物の重要テーマの1つ、「代謝」についてまとめた。

「代謝」とは?

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日常会話で使われる「代謝」という言葉

「代謝がいい」というフレーズを聞いたことはありませんか?

日常会話で使われる「代謝」は、摂取したエネルギーを消費すること自体、あるいはエネルギーの消費効率を指しています。
「代謝が良い人」とは、たくさんご飯を食べても、たくさんエネルギーを消費するため太りにくい一方、「代謝が悪い人」はエネルギーの消費量が少なく、太りやすいということです。 

また、「新陳代謝」という言葉も日常的に使われますね。こちらは「古いものと新しいものが次々と入れ替わること」を指す言葉です。細胞の新陳代謝が正常に行われた場合、肌の細胞は約28日で、筋肉の細胞は約2ヶ月で入れ替わるのだとか。

生物学用語としての「代謝」

生物学では、「代謝」というと、生体内で起こる化学反応をまとめて指します。
筋肉などのタンパク質を合成することも、体内に取り込んだ食物を分解することも、呼吸をすることも、すべて「代謝」とみなされるわけです。
もちろん、代謝をしているのはヒトだけではありません。あらゆる生体で、例えば、イヌでもミジンコでも、植物の体内でも代謝は起こっています。

重要なのは、代謝には必ずエネルギーの出入りが伴うということです。
エネルギーが関わる点は、先ほどご紹介した、日常的に使われる「代謝」と共通していますね。
ただ、生物学の「代謝」という用語には、エネルギーを消費することだけでなく、つくって貯えることも含まれます。

生体のエネルギー通貨:ATP

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ATPとは、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate)の略で、アデニン(塩基)、リボース(五炭糖)、3つのリン酸が結合した化合物です。異化が起こるときに合成され、同化が起こるときに分解されます。

\次のページで「同化とは」を解説!/

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まず、ATPは、分子中のリン酸どうしの結合が切り離されるときに多量のエネルギーを放出します。このことから、リン酸間の結合には「高エネルギーリン酸結合」という名前が与えられました。

「生体内でエネルギーをつくって貯える」ことは、「ADP(アデノシン二リン酸,adenosine diphosphate)にリン酸を1つくっつけて、ATPを合成する」と言ってよいでしょう。反対に、「生体内でエネルギーをつかう」ことは、「ATP分子中の高エネルギーリン酸結合を切断してエネルギーを取り出す」と言い換えられますね。

高エネルギーリン酸結合が切れるときに放出されるエネルギーは、さまざまな生命活動のエネルギー源になります。このように、ATPは代謝においてエネルギーの受け渡しを仲立ちしていることが、生体のエネルギー通貨と呼ばれる所以なのです。

同化とは

同化とは

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同化とは、ATPを「つかって」単純な物質から複雑な物質を合成する反応です。

ジグソーパズルを考えてみてください。バラバラのピースを正確に組み合わせて複雑なパズルを完成させるには、かなりの集中力や根気が必要ですね。

同じように、二酸化炭素からグルコースを合成したり、アミノ酸からタンパク質を合成したりと、単純な物質から複雑な物質を合成するためには、エネルギーが欠かせません。

参考までに、筆者の受験生時代の覚え方です

複雑な物質を合成する = 単独だったものが一堂(“”)に会する = 同化

異化とは

異化とは

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異化とは、複雑な物質を単純な物質に分解してエネルギーを「つくる」反応です。

先ほどのようにジグソーパズルを考えてみましょう。完成したパズルを壊すのは簡単ですね。例えば高いところから地面に落とすだけで簡単にピースはばらばらになります。特にエネルギーを加える必要はありません。

例えば、細胞における呼吸ではグルコースが二酸化炭素に分解されます。まさにこのとき、細胞内の酵素がはたらいてエネルギーがつくられているのです。激しい運動をして呼吸が荒くなるのは、からだがより多くのエネルギーを得ようとしているから、ということになります。

呼吸を一度詳しく勉強したことがある方ならきっと、グルコースが解糖系を経てピルビン酸に分解され、クエン酸回路に入り、最後に電子伝達系のATP合成酵素がぐるりと回転してATPがつくられる、という一連の流れを思い浮かべることができるでしょう。呼吸の詳しい反応機構はまた別の記事でご紹介します。

参考までに、筆者の受験生時代の覚え方です

異→異なる→ばらばらなイメージ
化→変化させる

つまり、異化=ばらばらに分解する

\次のページで「代謝に関わる細胞小器官」を解説!/

代謝に関わる細胞小器官

代謝とは、生体内で起こる化学反応であるとお話ししました。化学反応を促進することができる物質といえば、触媒。生物がもつ触媒といえば、酵素(生体触媒)ですね。特に、細胞内の特定の部分に酵素群が存在することで、代謝が効率的に進みます。


 核膜内部にDNAをもつ細胞小器官ですね。DNAの複製や転写に関与する酵素が集まっています。

ミトコンドリア
 細胞の呼吸の中心となる場所です。呼吸に関与する酵素(脱水素酵素、シトクロムオキシダーゼなど)が集まっています。内膜上にはATP合成酵素が組み込まれています。

葉緑体
 植物が光合成を行うのに欠かせない細胞小器官です。光合成に関与する酵素(ルビスコなど)が集まっています。

リソソーム
 多数の消化酵素を含む、小さな袋状の構造です。酵素の最適pHに合わせ、膜の内部は酸性に保たれています。

細胞質基質
 呼吸や発酵での解糖系に関与する酵素(脱水素酵素、脱炭酸酵素など)が集まっています。

代謝の基本はこれでばっちり!

代謝の要点をおさらいしましょう。

・代謝とは、生体内で起こる化学反応の総称です。
・代謝では、ATPを介したエネルギーの出入りが起こります。
・代謝の2つのパターンは、ATPをつかう「同化」とATPをつくる「異化」。

これで代謝の基本はばっちりです。

今後、呼吸や光合成をはじめとした代謝の詳しい反応系について勉強する際も、ATPのやりとりに注目してみてください。

記事の最後で「代謝に関わる細胞小器官」について取り上げました。教科書の分野を横断して知識をまとめると、理解が深まるのはもちろんのこと、生物学への興味も深まるかと思います。

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タンパク質と生物体の機能理科生物

「代謝」とは?生物のエネルギー利用の要点を生物専攻ライターが5分でわかりやすく解説!

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まず、ATPは、分子中のリン酸どうしの結合が切り離されるときに多量のエネルギーを放出します。このことから、リン酸間の結合には「高エネルギーリン酸結合」という名前が与えられました。

「生体内でエネルギーをつくって貯える」ことは、「ADP(アデノシン二リン酸,adenosine diphosphate)にリン酸を1つくっつけて、ATPを合成する」と言ってよいでしょう。反対に、「生体内でエネルギーをつかう」ことは、「ATP分子中の高エネルギーリン酸結合を切断してエネルギーを取り出す」と言い換えられますね。

高エネルギーリン酸結合が切れるときに放出されるエネルギーは、さまざまな生命活動のエネルギー源になります。このように、ATPは代謝においてエネルギーの受け渡しを仲立ちしていることが、生体のエネルギー通貨と呼ばれる所以なのです。

同化とは

同化とは

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同化とは、ATPを「つかって」単純な物質から複雑な物質を合成する反応です。

ジグソーパズルを考えてみてください。バラバラのピースを正確に組み合わせて複雑なパズルを完成させるには、かなりの集中力や根気が必要ですね。

同じように、二酸化炭素からグルコースを合成したり、アミノ酸からタンパク質を合成したりと、単純な物質から複雑な物質を合成するためには、エネルギーが欠かせません。

参考までに、筆者の受験生時代の覚え方です

複雑な物質を合成する = 単独だったものが一堂(“”)に会する = 同化

異化とは

異化とは

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異化とは、複雑な物質を単純な物質に分解してエネルギーを「つくる」反応です。

先ほどのようにジグソーパズルを考えてみましょう。完成したパズルを壊すのは簡単ですね。例えば高いところから地面に落とすだけで簡単にピースはばらばらになります。特にエネルギーを加える必要はありません。

例えば、細胞における呼吸ではグルコースが二酸化炭素に分解されます。まさにこのとき、細胞内の酵素がはたらいてエネルギーがつくられているのです。激しい運動をして呼吸が荒くなるのは、からだがより多くのエネルギーを得ようとしているから、ということになります。

呼吸を一度詳しく勉強したことがある方ならきっと、グルコースが解糖系を経てピルビン酸に分解され、クエン酸回路に入り、最後に電子伝達系のATP合成酵素がぐるりと回転してATPがつくられる、という一連の流れを思い浮かべることができるでしょう。呼吸の詳しい反応機構はまた別の記事でご紹介します。

参考までに、筆者の受験生時代の覚え方です

異→異なる→ばらばらなイメージ
化→変化させる

つまり、異化=ばらばらに分解する

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