今回は、電力や電力量、熱量について解説していきます。
電力と電力量は似た言葉ですが、電力は短い間隔で電流がする仕事、電力量は電力をたくさん集めた集まり、と考えることができる。そして熱量は、仕事をした結果・成果ととらえられる。少しややこしいが、身近な例と一緒に考えれば難しくない。

高校、大学、大学院と電気を専攻してきたライターさとるめしと一緒に解説していきます。

ライター/さとるめし

工業高校電気科卒、大学、大学院と電気工学を専攻している現役大学院生。「電気はよくわからない…」と言う友人や知人に、どうすればわかりやすく電気について理解してもらえるか、日々考えながら過ごしている。

電力と電力量とは?

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電力と電力量とは、一体何なのでしょうか?何が違うのでしょうか?言葉だけでは、あまり違いがわかりませんね。

電力は、単位時間当たりに電流がする仕事とされています。対して電力量は、電流がする仕事です。どうやら、単位時間当たりという言葉がポイントになりそうですね。言葉の意味を、もう少し詳しく考えていきます。

単位時間当たりの意味

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単位時間当たりという言葉は、物理の勉強をすると頻繁に目にします。一体どのような意味なのでしょうか?

単位時間とは、ある特定の基準となる時間のことです。場合によって異なりますが、基本的には1秒を基準として単位時間を定めます。

一番わかりやすい例は、速度です。m/s、m/min、km/h、という単位を見たことがある方も多いと思います。これらはすべて速度の単位です。sは秒、minは分、hは時間のことを表しています。1秒間に何m進むのか、1分で何m進むのか、1時間で何km進むのか。これらの時間が、単位時間当たりという言葉を具体的に示しているのです。

時間を区切り、その区切った時間を最小の単位としたものが単位時間当たりとなります。

電力と電力量はどのように表現できる?

電力と電力量は、それぞれ電流がする仕事であると説明しました。しかし、言葉の定義だけではよくわかりませんね。そこで、数学的な式から考えてみます。

\次のページで「1. 電力を式で表すと?」を解説!/

1. 電力を式で表すと?

1. 電力を式で表すと?

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電力は、Pという記号で表し単位は[W](ワット)です。電圧と電流をかけるだけ、というとてもシンプルな式ですね。実は、この電力の式と全く同じ式を使う仕事率Pという仕事も存在します。こちらは、電源が単位時間当たりにする仕事です。なぜ、違う言葉なのに同じものが存在するのでしょうか?

これは、電圧が電流を押し出す仕事と、回路を流れる電流の仕事が等しいことを表しています。押し出す側と、押し出される側の仕事が等しくなる、といえばわかりやすいですね。

電力と仕事率の関係

電力と仕事率は、ものは違えど等しい存在であることがわかりました。実はこの関係は、エネルギー保存則が成り立つことを意味します。

2. 電力量を式で表すと?

2. 電力量を式で表すと?

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電力量は、1時間(1hour)で1000W(1kW)の仕事をすることを表現する場合が多いです。

電力は、短時間当たりの電流の仕事でしたが、この場合の単位時間は1秒と考えます。すると電力量では、単位時間を1時間と考えることができますね。1時間は3600秒ですので、上記のような書き方ができます。

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kって何?

電力量の単位についているkとは、接頭記号といいます。cmのcや、mmのm、またkmのkなど距離でよく見ますね。1000Wと書く場合、0を3つも書くのが煩わしいのでkという接頭記号を使うことで1kWと簡単に表現することができます。画像にて、よく使われる接頭記号を示すので、ぜひ身近な接頭記号を探してみてください。

熱量、ジュール熱について

熱量、ジュール熱について

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電流の仕事は、熱として表面に現れます。この熱を、単に熱量あるいはジュール熱と呼ぶ場合が多いです。仕事をすると熱に変化するということですね。スマートフォンや充電器が熱くなった経験がある方も多いのでは?実は、この熱がいわゆるジュール熱なんです。

ジュール熱はQで示し、単位は[J](ジュール)となります。式を見ると、電力に時間をかけただけですね。これは、熱量が時間に比例して大きくなるということを示しています。

\次のページで「電力・電力量・熱量を計算から考える」を解説!/

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実は、電力量は単位をジュールとして表現することもできます。電力量は、熱量であるともいえるのです。しかし、単位が違うと意味するものも変わるということなので、単位の違いをしっかり確認しましょう。

電力・電力量・熱量を計算から考える

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ここまで、電力や電力量、熱量について説明してきました。電力や電力量はなかなか身近には感じにくい存在ですが、実はとても生活に密着した存在です。

電気料金という言葉を聞いたことがある方も、いるかもしれません。様々な建物に届く電気は、この電気料金を払うことで使用することができます。そして電気料金は、使用された電力量をもとに計算されているんです。

電力や電力量、熱量の計算を理解することで、もっと身近な存在に感じられると思います。

1. 電力の計算

ある電化製品をコンセントにつないで使うと、5Aの電流が流れます。この電化製品の電力は、どれくらいになるでしょうか?

あれ、電圧は?と思った方もいるかもしれません。コンセントから供給される電圧は100Vと決まっています。問題文に電圧が明記されていない場合でも、コンセントと書いてあれば100Vであると考えることができますね。

P= 100V × 5A = 500W

となりました。コンセントの電圧が一定である場合には、電流が変わることで電力が変化します。

2. 電力量の計算

では、1の電化製品を1時間使った場合はどうなるでしょうか?

この場合に求めるものは、電力量になります。明確には書かれていませんが、1時間使い続けるということから、求めるものは電力量であるとわかりますね。電力量をpとすると、

p = 500W × 3600s = 0.5kWh

となります。

\次のページで「3. 熱量の計算」を解説!/

3. 熱量の計算

では最後に、2で求めた電力量から熱量を求めてみます。

Q = 500W × 3600s = 1.8MJ

となりました。電力量を熱量に変えるだけなので、難しくありませんね。ただし、接頭記号に注意です。0の数を間違えると接頭記号も間違えてしまうので、しっかり確認しましょう。

電力と電力量の違いや熱量の存在を感じよう

電力と電力量の違いはややこしいですが、単位時間当たりという言葉の意味がわかれば簡単ですね。また、熱量すなわちジュール熱も、電力量と密接な関係があるのです。

一つ一つの言葉や意味を理解するだけでなく、それぞれがどのように関連しているのかを理解すると、頭の中もすっきりしますね。

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物理

【物理】「電力、電力量、熱量」の関係性を理系大学院生が3つの例題からわかりやすく解説!

今回は、電力や電力量、熱量について解説していきます。
電力と電力量は似た言葉ですが、電力は短い間隔で電流がする仕事、電力量は電力をたくさん集めた集まり、と考えることができる。そして熱量は、仕事をした結果・成果ととらえられる。少しややこしいが、身近な例と一緒に考えれば難しくない。

高校、大学、大学院と電気を専攻してきたライターさとるめしと一緒に解説していきます。

ライター/さとるめし

工業高校電気科卒、大学、大学院と電気工学を専攻している現役大学院生。「電気はよくわからない…」と言う友人や知人に、どうすればわかりやすく電気について理解してもらえるか、日々考えながら過ごしている。

電力と電力量とは?

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電力と電力量とは、一体何なのでしょうか?何が違うのでしょうか?言葉だけでは、あまり違いがわかりませんね。

電力は、単位時間当たりに電流がする仕事とされています。対して電力量は、電流がする仕事です。どうやら、単位時間当たりという言葉がポイントになりそうですね。言葉の意味を、もう少し詳しく考えていきます。

単位時間当たりの意味

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単位時間当たりという言葉は、物理の勉強をすると頻繁に目にします。一体どのような意味なのでしょうか?

単位時間とは、ある特定の基準となる時間のことです。場合によって異なりますが、基本的には1秒を基準として単位時間を定めます。

一番わかりやすい例は、速度です。m/s、m/min、km/h、という単位を見たことがある方も多いと思います。これらはすべて速度の単位です。sは秒、minは分、hは時間のことを表しています。1秒間に何m進むのか、1分で何m進むのか、1時間で何km進むのか。これらの時間が、単位時間当たりという言葉を具体的に示しているのです。

時間を区切り、その区切った時間を最小の単位としたものが単位時間当たりとなります。

電力と電力量はどのように表現できる?

電力と電力量は、それぞれ電流がする仕事であると説明しました。しかし、言葉の定義だけではよくわかりませんね。そこで、数学的な式から考えてみます。

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