この記事では「援助」と「支援」の違いについてみていきます。どちらも、人に対して助けの手を差し伸べることをあらわす言葉ですが、それぞれ何となくの意味はわかっているつもりでも、その違いは何かと問われると答えに困るという人は少なくないでしょう、今回はそんな「援助」と「支援」について国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

援助と支援のざっくりした違い

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まずはじめに、「援助」「支援」のざっくりした違いについて説明しましょう。

「援助」「支援」「助けの手を差し伸べること」をあらわすので、おおまかな意味としては同じですが、「援助」「困っている人や団体に対して全面的に助ける」ことをあらわすのに対し、「支援」「困っている人や団体の生活や活動がうまくいくように部分的に助ける」ことをあらわすという点に違いがあります。

援助と支援を漢字から説明

さきほど、「援助」「困っている人などを全面的に助けること」で、「支援」「困っている人などを部分的に助けること」であるという違いがあることを説明しましたが、ここからは、これらの言葉に対する理解をより深めるために、「援助」「支援」、それぞれに使われている漢字について説明したいと思います。

「援」は二つの手で隙間をあけること

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まずはじめに、「援助」「支援」の両方に使われている「援」について説明しましょう。「援」という字の右側は、上にある斜めの線と「ツ」の形で「下向きの手」を、下にある「友」は「上向きの手」を、その間にある「一」は見たまま、その二つの手の間にある「ヒモ状のもの」や「隙間(すきま)」などをあらわしていると考えられています。

間にある「一」を「ヒモ状のもの」ととらえると、「援」「二つの手がヒモを引っぱる様子」だと考えられることから、「引っぱる」意味の「援く(ひく)」という読みや意味で使われるようになりました。また、「一」を「隙間」だととらえると、「援」「二つの手で隙間をあける」ことだと考えられ、そこから「緊張した状況をゆるめる」、つまり緊迫した状態に手を差し出して「援ける(たすける)」という読みや意味にもなったのです。

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「助」は力をそえて「助ける」こと

つぎに、「援助」「助」について説明しましょう。「助」という字の左側の「且」は「物を段々に上へと積みかさねていく様子」をあらわす形で、それと「力」からなる「助」という字は、物を重ねるように、今ある力の上に「力をそえて助ける」ことをあらわしていると考えられています。

ですから「援助」とは、緊迫した状態に手を差し出して援ける「援」と、力をそえて助ける「助」という二つの「たすける」という字を重ねてつくられ、そこから「困っている人などを全面的に助けること」をあらわす言葉なのです。

「支」は竹を持っている手

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今度は、「支援」に使われている「支」について説明しましょう。「支」という字の上の部分は「Yの字状に分かれた竹のえだ」を、下の「又」はそれを持っている「手」をあらわしていると考えられています。持っている「えだ」が「Yの字状に分かれている」イメージから、「支店」や「支部」などの言葉に使われるような、「本店」や「本部」など、もととなるものから枝分かれする意味を持っている字です。

また、「Yの字状に分かれている形」のようにつっかえ棒をするイメージから、突き当たってそれ以上先へは進めない状態になる意味の「つかえる」や、物が倒れないように「ささえる」という意味になったと考えられています。「支」という字はこのような成り立ちなので、「たすける」という意味を持つ「援」と組み合わせた「支援」は、「困っている人などが倒れないように、そして自立できるように部分的に助けること」を言うのです。

援助と支援の例文を紹介

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ここまで、「援助」「支援」の意味や違いについて漢字の意味や成り立ちに着目しながら説明してきましたが、ここからは具体的な例文を交えながら説明していきたいと思います。まず、次の例文を見てください。

1.経済的な援助のおかげで、あの国は災害から復興することができた。
2.経済的な支援のおかげで、あの国は災害から復興することができた。

これらは同じ文章を言い換えたものです。「援助」「支援」はどちらも「助けの手を差しのべること」を意味するので、どちらを使っても文章としては通じますが、「援助」「全面的な助け」「支援」「部分的な助け」のニュアンスがあるため、やはり「援助」を使った文章の方が、「より手厚いサポート」だった印象を受けますよね。

このようにどちらを使っても問題ない場合でもニュアンスには違いが出ます。

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3.今後ともご支援ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

これは手紙やメールにおいて文章の結び(締めのこと)として使われることのある言い回しですが、仮にこれを「援助」としてしまうと、自分から相手に「手厚いサポート」を要求していることになるので厚かましい印象を与えてしまいますよね。ですから、このような決まった言い回しに対しては注意するようにしてください。

援助は全面的、支援は部分的な助け!

ここまでの説明で、「援助」「困っているなどを全面的、あるいは手厚くに助ける」ことであるのに対し、「支援」「困っている人などを部分的に助ける」ことを意味することを知っていただけたかと思います。今回の説明が、みなさんの理解に少しでも役立てたなら幸いです。

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雑学

簡単でわかりやすい!援助と支援の違いとは?漢字の意味や例文も現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「援助」と「支援」の違いについてみていきます。どちらも、人に対して助けの手を差し伸べることをあらわす言葉ですが、それぞれ何となくの意味はわかっているつもりでも、その違いは何かと問われると答えに困るという人は少なくないでしょう、今回はそんな「援助」と「支援」について国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

援助と支援のざっくりした違い

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まずはじめに、「援助」「支援」のざっくりした違いについて説明しましょう。

「援助」「支援」「助けの手を差し伸べること」をあらわすので、おおまかな意味としては同じですが、「援助」「困っている人や団体に対して全面的に助ける」ことをあらわすのに対し、「支援」「困っている人や団体の生活や活動がうまくいくように部分的に助ける」ことをあらわすという点に違いがあります。

援助と支援を漢字から説明

さきほど、「援助」「困っている人などを全面的に助けること」で、「支援」「困っている人などを部分的に助けること」であるという違いがあることを説明しましたが、ここからは、これらの言葉に対する理解をより深めるために、「援助」「支援」、それぞれに使われている漢字について説明したいと思います。

「援」は二つの手で隙間をあけること

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まずはじめに、「援助」「支援」の両方に使われている「援」について説明しましょう。「援」という字の右側は、上にある斜めの線と「ツ」の形で「下向きの手」を、下にある「友」は「上向きの手」を、その間にある「一」は見たまま、その二つの手の間にある「ヒモ状のもの」や「隙間(すきま)」などをあらわしていると考えられています。

間にある「一」を「ヒモ状のもの」ととらえると、「援」「二つの手がヒモを引っぱる様子」だと考えられることから、「引っぱる」意味の「援く(ひく)」という読みや意味で使われるようになりました。また、「一」を「隙間」だととらえると、「援」「二つの手で隙間をあける」ことだと考えられ、そこから「緊張した状況をゆるめる」、つまり緊迫した状態に手を差し出して「援ける(たすける)」という読みや意味にもなったのです。

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