なぜ伊東深水の美人画が人気なのか?その理由を日本画の成り立ちとともに歴史好きライターが簡単にわかりやすく解説
上村松園:美人画で有名な女性日本画家
上村松園(うえむらしょうえん)は、伊東深水と同様に美人画で有名な日本画家です。松園の美人画の特徴は、なんといっても女性である松園の手により女性の美を描いたことでしょう。四条派と呼ばれる伝統的な技法に近代的な感覚が加わり、繊細で格調高い作品が人気を博しています。
松園が活躍していた当時は、女性である松園が日本画家を目指すことに好奇の目が向けられていたそうです。しかし、松園が努力を惜しまなかった結果、日本画家として地位を確立するに至りました。さらに驚くべきことは、息子の上村松篁と孫の上村淳之も日本画家となり、しかも親子三代で文化勲章を受章したことです。
鏑木清方:浮世絵師・随筆家でもある美人画の巨匠
鏑木清方(かぶらききよかた)は、浮世絵師や随筆家としても活躍した日本画家です。前出の上村松園とともに、「西の松園、東の清方」と並び称されるほど、美人画の巨匠として有名でした。浮世絵の技法を生かしながら、気品あふれる女性の姿を描きました。ただし、清方は風俗画や風景画の名作も残しています。
清方は、実は伊東深水の師匠です。「深水」という画号を贈ったのも清方でした。深水と清方をたどっていくと、江戸時代の浮世絵師である歌川国芳までさかのぼります。彼らの画風は「玄冶店派」(げんじだなは)と呼ばれ、現代でもその技法が引き継がれているのです。
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膨大な作品数を誇る伊東深水の美人画は多くの人を魅了した
伊東深水の手によって描かれた美人画は、非常に多くの人を魅了しました。一般の人にもわかりやすい作風で、さらに作品数が膨大で目に付きやすかったのが、人気の原因だと思われます。しかし、深水の作品は伝統的な画法に基づいたものであり、決して世俗的だとする評価に終わるものではありません。深水は多くの弟子を育てるなど、日本画の世界に大きな足跡を残しました。