なぜ伊東深水の美人画が人気なのか?その理由を日本画の成り立ちとともに歴史好きライターが簡単にわかりやすく解説
1.一般の人にもわかりやすい作風
伊東深水の美人画は、確かな線描と豊かな色彩が特徴です。それでいて、女性の繊細さが美しく表現されています。深水の作品はどれも好評で、戦後には大量の作品が複製版画として出回りました。一般の人にもわかりやすい深水の作風は、多くの人の心をつかんだのです。
一部では、深水の作品を世俗的過ぎるとする意見もあります。しかし、深水の作品は美人画だけではありません。古典的な作品から新版画運動に触発されたものまで、その作風は幅広いのです。伝統的な技法で確かな描写力を用いつつも、世間一般にも受け入れられやすい題材を描いた深水の作品は、現代でも人気があります。
2.作品数が非常に多い
多くの人が伊東深水の作品を目にするのには理由があります。それは、伊東深水が生涯残した作品数が非常に多いからです。深水の作品を所蔵する美術館は北から南まで全国にあり、東京国立近代美術館などで鑑賞できます。特に意識しなくても、深水の美人画を目にしたことがあるかもしれません。
深水の美人画があまりにも人気だったために美人画しか描けない時期もあり、それに深水が悩んだこともあったとのこと。ですが、戦後の深水は、美人画と並行して日本画の人物像なども手掛けるようになりました。1972(昭和47)年に伊東深水は亡くなりましたが、彼の死後も版権所有者監修の複製画が頒布されています。
横山大観:日本画の巨匠
横山大観(よこやまたいかん)は、明治時代中期から昭和にかけて活動していた、日本画の巨匠です。大観の作品は、日本だけでなく世界中で高い評価を得ました。1937(昭和12)年には、その年に制定された、文化勲章の第1回受章者のうちの1人となっています。
大観は、朦朧体(もうろうたい)と呼ばれる画法を確立しました。伝統的な線描技法を用いず、色彩の濃淡によって形態や空気や光などを表したものです。大観の朦朧体は、当初それほど評価されていませんでした。しかし、徐々に没線描法が受け入れられるようになり、今では日本画に革新をもたらしたとの定評があります。
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