この記事では「頸部」と「頚部」の違いについてみていきます。どちらも、首の部分のことを指し、おもに医療や医学方面で使われることの多い言葉ですが、漢字が難しいだけに読み方もわからないという人は多いでしょう。今回はそんな「頸部」と「頚部」の違いについて国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

頸部と頚部はどちらも「けいぶ」と読む!

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まずはじめに「頸部」「頚部」の読み方について説明しましょう。「頸」「頚」はどちらも訓読みで「くび」、音読みで「ケイ」と読む字ですので、「頸部」「頚部」はどちらも「けいぶ」と読みます。

頸部と頚部のざっくりした違いを説明

つぎに、「頸部」「頚部」の違いについて説明したいと思います。といっても、実は「頸」の異体字、つまり少し違った書き方をしたものが「頚」という字ですので、「頸部」「頚部」はどちらも「頭と胴部をつないでいる部分」を意味し、まったく違いはありません

ですが「頸部」「頚部」では使われる場面などに違いがあるので、それらのことについては後ほど説明したいと思います。

頸部と頚部の漢字を説明!

さきほど「頸」「頚」は同じ読みと意味を持つ字であることは説明しましたが、やはり、それぞれの字の形自体は違いますよね。そこで、ここからはそれぞれの漢字の形に着目しながら、由来や意味などについて説明していきたいと思います。

「頸」は縦にまっすぐな首のこと

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まずはじめに「頸」について説明したいと思います。「頸」の左側は「機織(はたおり)の縦(たて)の糸」をもとにつくられ、そこから「たて」や「まっすぐ」といったイメージを持つ形です。

それに「頭」や「顔」などにも使われているように「人の頭部」をあらわす「頁(おおがい)」をそえることで、「頸」は頭の下のまっすぐな部分、つまり「縦にまっすぐな首」のことをあらわしています。

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「頚」の左側は元々「ス」と「エ」の形

つぎは「頚」について説明しましょう。私たちが日頃使う漢字に「経」や「軽」などがありますが、実はこれらの字も、「經」や「輕」と書いていたところを簡略化されて使われるようになったものなのです。そしてこれらの漢字が使われるようになるにつれ、同じ形を持つ「頸」も簡略化されて「頚」の形が生まれました。ちなみに「経」や「軽」は日常に使う目安である常用漢字に指定されていますが、「頚」は指定されておらず俗字です。

また、「頚」の左側や「経」、「軽」の右側を見てみると、「怪」の右側と同じ形をしていますが、実はもともとは別の形で、カタカナの「ス」「エ」を縦に組み合わせたような形をしていました。しかし、その形に似ていたからか、日本では「怪」の右側と同じ形になってしまったのです。

「部」は土地をわけること

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今度は、「頸部」「頚部」の両方に共通している「部」について説明したいと思います。「部」という字の左側は「二つに分ける」イメージを持つ形です。それに土地や村などをあらわす「おおざと」をそえることで、「部」は地域を「わける」ことをあらわし、そこから、「部分」や「一部」などのように、いくつか分けた一つ一つのこともあらわすようになりました。

「部」は、このような成り立ちや意味を持ちますので、「くび」をあらわす「頸(頚)」と組み合わせて、頭と胴部をつないでいる部分のことを「頸部(頚部)」と言うのです。

頸部と頚部の使い方の違い

「頸部」「頚部」も同じ読みで、同じ意味を持つ漢字ですが、使われ方には少々違いがあります。まず、正しいとされる標準的な字は「頸」の方なので、原則的には「頚」よりも「頸」を使うのが好ましいはずですよね。事実、辞書の中には「頚」は載せずに「頸」の方だけ載せているものなどもあります。

しかし、「頸」の左側の形はこの字以外ではまず見ない形なのに対し、「頚」の左側の形は「経」や「軽」の右側と同じで、「ケイ」という音読みの音も推測しやすいからか、医学や医療分野では「頚」の方を使うことが推奨されていて、これらの辞典や参考書などでは「頚」だけが使われていることなどもあるようです。ですので、もしそういった分野に進もうとしている人は、この機会にどちらも覚えておいた方がいいかもしれません。

頸部と頚部はどちらも同じ読みで同じ意味!

今回の説明で、「頸部」「頚部」はどちらも「けいぶ」と読み、どちらも「頭と胴部をつないでいる部分」だということを知っていただけたかと思います。また、難しい漢字ですし、一般人になかなかそんな機会は訪れないかと思いますが、みなさんが「けいぶ」を漢字で書く場合には、今のところ標準的とされる「頸部」を使った方が無難ではないでしょうか。

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雑学

簡単でわかりやすい!頸部と頚部の違いとは?読み方や使い分けも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「頸部」と「頚部」の違いについてみていきます。どちらも、首の部分のことを指し、おもに医療や医学方面で使われることの多い言葉ですが、漢字が難しいだけに読み方もわからないという人は多いでしょう。今回はそんな「頸部」と「頚部」の違いについて国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

頸部と頚部はどちらも「けいぶ」と読む!

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まずはじめに「頸部」「頚部」の読み方について説明しましょう。「頸」「頚」はどちらも訓読みで「くび」、音読みで「ケイ」と読む字ですので、「頸部」「頚部」はどちらも「けいぶ」と読みます。

頸部と頚部のざっくりした違いを説明

つぎに、「頸部」「頚部」の違いについて説明したいと思います。といっても、実は「頸」の異体字、つまり少し違った書き方をしたものが「頚」という字ですので、「頸部」「頚部」はどちらも「頭と胴部をつないでいる部分」を意味し、まったく違いはありません

ですが「頸部」「頚部」では使われる場面などに違いがあるので、それらのことについては後ほど説明したいと思います。

頸部と頚部の漢字を説明!

さきほど「頸」「頚」は同じ読みと意味を持つ字であることは説明しましたが、やはり、それぞれの字の形自体は違いますよね。そこで、ここからはそれぞれの漢字の形に着目しながら、由来や意味などについて説明していきたいと思います。

「頸」は縦にまっすぐな首のこと

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まずはじめに「頸」について説明したいと思います。「頸」の左側は「機織(はたおり)の縦(たて)の糸」をもとにつくられ、そこから「たて」や「まっすぐ」といったイメージを持つ形です。

それに「頭」や「顔」などにも使われているように「人の頭部」をあらわす「頁(おおがい)」をそえることで、「頸」は頭の下のまっすぐな部分、つまり「縦にまっすぐな首」のことをあらわしています。

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