この記事では「至る」と「到る」の違いについてみていきます。どちらも、目的地に到着したときなどに使われる言葉ですが、何となくの意味は知っていても、字が違うことで意味にも違いはあるのかと問われると、答えに困る人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

至ると到るのざっくりした意味とは

image by iStockphoto

まずはじめに、「至る」「到る」のざっくりした意味について説明したいと思います。「至る」「到る」はどちらも「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」や「ある状態やある段階に達すること」などを意味し、正直、意味の上では大きな違いはありません。

ただ、言葉の成り立ちや使われ方などについては違いがありますので、今回はそのことについて、ていねいに説明したいと思います。

至ると到るの漢字を説明

さきほど、「至る」「到る」はどちらも「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」や「ある状態やある段階に達すること」で意味としては大きな違いがないことを説明しましたが、ここからはこれらの言葉に対する理解を深めるために、「至」「到」の漢字に着目しながら説明していきたいと思います。

「至」は目標に矢が命中する様子

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まずはじめに、「至る」について説明しましょう。「至」という漢字の一番下の横線は「地面」や「目標」を、それ以外の上の部分は「下向きの矢」の形をあらわしています。そこから「至」は、「地面」や「目標」に「矢」が達するいうことで、「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」「ある状態やある段階に達すること」などをあらわす「いたる」という意味になったと考えられているのです。

また、「至」は音読みでは「シ」、訓読みで「いたる」と読む字で、この「いたる」という読み方は、日常で使う漢字の目安とされる「常用漢字」として指定されている読み方になります。

「到」はカタナの刃のように曲がりながら到達する様子

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つぎに「到る」について説明しましょう。「致」の左側の「至」はさきほど説明したように、「下向きの矢」が「地面」や「目標」に届く様子を、右側の「りっとう」は「刀」をあらわしています。「至」は矢が直線的に目標に届く様子をあらわしていましたが、「到」は「カタナの刃」のように曲がりながら目標に届く様子から生まれた字です。

また、「到」は音読みで「トウ」と読みます。訓読みは、「至る」と同じように、「到る」と送り仮名をふって「いたる」と読みますが、こちらは常用漢字としては指定されておらず、あくまで常用外としての使い方ですので注意してください。

至ると到るの使い分けとは

さきほど、漢字の成り立ちや読みに着目しながら「至る」「到る」を説明しましたが、ここでは「至る」「到る」の使い分けについて説明しましょう。たとえば、人によっては「ある状態やある段階になること」に対しては「至る」を使い、「ある場所やある地点にいきつくこと」に対しては「到る」を使うなどと説明している場合もあります。

しかし、一年で一番昼が長く、それを境に本格的な夏が始まる日のことを「夏至」といいますが、「夏が来る」ことは「夏が到来する」などと言ったり、その説明で定義するには非常に曖昧です。ただ、「至る」「到る」にはもっと決定的な違いがあります。それは「至る」「いたる」と読むのは常用であり、「到る」常用外であるという点です。ですから、「いたる」を漢字にする場合には「至る」の方を書けばまず間違いありません。

\次のページで「中国語の「至」と「到」には違いがある」を解説!/

中国語の「至」と「到」には違いがある

これまで「至る」「到る」には意味の上では大きな違いはないと説明してきましたが、実は、それはあくまで日本語に限った話にすぎません。というのも、さきほど説明したように、「至」「到」は字の成り立ちが違っていたり、音読みでは「シ」と「トウ」と違いがあったように、中国で使われている字としては厳密な違いがあるのです。

どのような違いがあるかというと「至」「~まで(英語でいうtillやuntil)」という意味ですが、「到」「到着(英語で言うreach)」といった意味で使われます。ですので、日本語としてはこのような厳密な使い分けは必要ありませんが、これから中国語を本格的に習いたいという人は、私たちがこれまで学校で習ってきた漢字はあくまで日本で使われている使い方に過ぎないということに気を付けてください。

「いたる」を漢字にするときは「至る」でOK!

ここまでの説明で、「至る」「到る」はどちらも「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」や「ある状態やある段階に達すること」を意味し、日本語としては両者の間に違いはないことなどについて知っていただけたかと思います。また、さきほど説明したように「いたる」を漢字で書くときには常用漢字に指定されている「至る」の方を使えばまず間違いありませんので、そのことは覚えておいてください。

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簡単でわかりやすい!「至る」と「到る」 の違いとは?漢字の意味や使い分けも現役塾講師がわかりやすく解説

この記事では「至る」と「到る」の違いについてみていきます。どちらも、目的地に到着したときなどに使われる言葉ですが、何となくの意味は知っていても、字が違うことで意味にも違いはあるのかと問われると、答えに困る人も少なくないでしょう。そこで今回はその違いについて、国語の講師でもある空野キノコと一緒に解説していきます。

ライター/空野きのこ

大学在学中から文学・国文法や教育について本格的に学び、現在は小中学生に勉強を教えている講師。その知識と経験を活かし、言葉の雑学を中心に分かりやすく解説していく。

至ると到るのざっくりした意味とは

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まずはじめに、「至る」「到る」のざっくりした意味について説明したいと思います。「至る」「到る」はどちらも「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」や「ある状態やある段階に達すること」などを意味し、正直、意味の上では大きな違いはありません。

ただ、言葉の成り立ちや使われ方などについては違いがありますので、今回はそのことについて、ていねいに説明したいと思います。

至ると到るの漢字を説明

さきほど、「至る」「到る」はどちらも「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」や「ある状態やある段階に達すること」で意味としては大きな違いがないことを説明しましたが、ここからはこれらの言葉に対する理解を深めるために、「至」「到」の漢字に着目しながら説明していきたいと思います。

「至」は目標に矢が命中する様子

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まずはじめに、「至る」について説明しましょう。「至」という漢字の一番下の横線は「地面」や「目標」を、それ以外の上の部分は「下向きの矢」の形をあらわしています。そこから「至」は、「地面」や「目標」に「矢」が達するいうことで、「目的とした場所や目標地点にいきつくこと」「ある状態やある段階に達すること」などをあらわす「いたる」という意味になったと考えられているのです。

また、「至」は音読みでは「シ」、訓読みで「いたる」と読む字で、この「いたる」という読み方は、日常で使う漢字の目安とされる「常用漢字」として指定されている読み方になります。

「到」はカタナの刃のように曲がりながら到達する様子

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つぎに「到る」について説明しましょう。「致」の左側の「至」はさきほど説明したように、「下向きの矢」が「地面」や「目標」に届く様子を、右側の「りっとう」は「刀」をあらわしています。「至」は矢が直線的に目標に届く様子をあらわしていましたが、「到」は「カタナの刃」のように曲がりながら目標に届く様子から生まれた字です。

また、「到」は音読みで「トウ」と読みます。訓読みは、「至る」と同じように、「到る」と送り仮名をふって「いたる」と読みますが、こちらは常用漢字としては指定されておらず、あくまで常用外としての使い方ですので注意してください。

至ると到るの使い分けとは

さきほど、漢字の成り立ちや読みに着目しながら「至る」「到る」を説明しましたが、ここでは「至る」「到る」の使い分けについて説明しましょう。たとえば、人によっては「ある状態やある段階になること」に対しては「至る」を使い、「ある場所やある地点にいきつくこと」に対しては「到る」を使うなどと説明している場合もあります。

しかし、一年で一番昼が長く、それを境に本格的な夏が始まる日のことを「夏至」といいますが、「夏が来る」ことは「夏が到来する」などと言ったり、その説明で定義するには非常に曖昧です。ただ、「至る」「到る」にはもっと決定的な違いがあります。それは「至る」「いたる」と読むのは常用であり、「到る」常用外であるという点です。ですから、「いたる」を漢字にする場合には「至る」の方を書けばまず間違いありません。

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