みんなは貨物列車を見たことがあるか。数十両もの貨車を先頭の機関車で引っ張っているな。その機関車に愛称がついているものがあるのを知っているか。新幹線ならのぞみやひかりといった列車の名前がついていますね。そうではなく、機関車そのものに「金太郎」や「レッドサンダー」という愛称がついているぞ。そんな機関車の愛称や、色の違い、どんな特徴があるのかを鉄道好きプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさん。

エコな物流を支える赤い電気機関車

image by iStockphoto

2024年問題というものを聞いたことがありますか。2024年に法律が変わり、トラック運転手などの労働時間を短くする必要があります。そのため、運転手の不足が問題となっているのです。そんな長距離荷物輸送の代替手段として貨物列車が注目されています。

数十両つながった長い貨物列車にはパワーがありながら省エネもできる機関車が必須ガソリンを使わず、排ガスも出ない電気を使った電気機関車が注目されています。その中でも注目されているのが、金太郎や桃太郎、レッドサンダー、ブルーサンダーといった愛称がついているJRの機関車です。これらの機関車の違いについて説明します。

金太郎:首都圏と北海道を結ぶ力持ち

普段、JRで通勤・通学していると、地域によって会社が違うことはご存知ですよね。首都圏や東北はJR東日本名古屋などはJR東海大阪などはJR西日本です。他にもJR北海道、JR四国、JR九州などに分かれています。では、貨物列車はどこの会社のものでしょう。実はJR貨物という会社が日本全国で貨物列車を運転しています。そのための機関車もJR貨物のものです。

そのJR貨物の貨物列車のうち、首都圏と北海道を結ぶ貨物列車に使われているのが金太郎という愛称のEH500型電気機関車赤い車体に金太郎のイラストが描いてあります。

レッドサンダー:日本海を駆け抜ける赤い稲妻

金太郎は首都圏と北海道を結びますが、大阪方面から新潟や青森といった日本海側の都市を結ぶ貨物列車には別の機関車が使われています。それがレッドサンダーという愛称をもつEF510型電気機関車です。

同じ貨物用の電気機関車なのになぜ違うものを用意しているのか不思議ですよね。また、太平洋側で見る貨物列車の先頭をゆく機関車は青い機関車です。なぜ赤いものと青いものがあるのでしょう。その辺りを説明していきます。

色によって走るところが違う?青と赤の違い

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This photo was taken with Nikon Coolpix 7600 - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

金太郎やレッドサンダーについて説明する前に、まずは機関車の基礎からJR貨物の機関車はざっくり分けると青と赤の2種類の機関車があります。この色の違いは、実は走行できる場所の違いと関係しているのです。この赤と青の違いについて説明していきます。

\次のページで「電池とコンセントと同じ?電車の電気は直流と交流がある」を解説!/

電池とコンセントと同じ?電車の電気は直流と交流がある

電気には直流と交流があるのはご存知ですよね。電池などは直流で、家庭用コンセントは交流です。実は電気を使って走る電気機関車にも交流と直流があります。交流を使うのが赤い電気機関車直流を使うのが青い電気機関車です。

ここでスマホを考えてみてください。スマホにはバッテリーが内蔵されていますよね。このバッテリーは直流スマホは直流電気で動きます。そのスマホを使うには充電が必要ですよね。でも家庭用コンセントは交流です。そこで、交流と直流を変換するのがACアダプター。最近は充電器と呼ぶことが多いですが、家庭用コンセントの交流とバッテリーの直流を変換する役割があります。

なぜ両方あるの?直流と交流の違いとは

電気で動く電車や機関車にも直流と交流があります。詳しい話は難しくなるのでポイントだけ説明しますね。電車はモーターで動きますが、昔の電車は直流モーターを使っていました。でも発電所から来た電気は交流です。そのため、どこかでACアダプターのように交流を直流に変換する必要がありますよね。

そのACアダプターを内蔵しているのが交流の電車や機関車で、外にあるのが直流の電車や機関車です。都会の電車は長く、本数も多いですよね。それぞれにACアダプターに相当するものを内蔵すると電車が高価に。一方、ACアダプターに当たるものは一定距離ごとに必要。そのため、本数が少ない地方では電車や機関車に内蔵した方が安上がりなのです。そのため、同じ電車でも都市部と地方では使っている電気が交流か直流かという違いがあります。

\次のページで「色で違う?青は直流、赤は交流」を解説!/

色で違う?青は直流、赤は交流

このように路線によって直流か交流か決まっています。直流のところでは直流用の電車や機関車しか走れません。また、交流のところでは交流用の電車や機関車だけです。そのため、走行できるところをわかりやすくするために機関車は直流用は青、交流用は赤が基本

正確には赤い機関車にも交流専用のものと、直流と交流の両方で使えるものがあります。また、電気が通じていないところを走るディーゼル機関車も赤い場合が多いです。そのため、より正確には直流しか走れない機関車は青それ以外は赤となります。赤い機関車はは交流専用と直流・交流両用、電気のないところを走るディーゼル機関車とさらに分類可能。特別な列車用の機関車や特別なペイントを除けば原則はこのようになっています。

赤い力持ち?金太郎とレッドサンダーの違いとは

12号機 (2009年3月28日 / 高岡駅)
Rsa - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

機関車と青と赤の違いについて説明しましたが、金太郎もレッドサンダーも赤い機関車どちらも直流でも交流でもOKです。では、これらは何が違うのか。兄弟機関車に当たる桃太郎やブルーサンダーとも関連があるので、併せて説明していきます。

すべては桃太郎から?日本ではじめて公式の愛称がついたEF210

JRになる前は国鉄こと日本国有鉄道でした。これが民営化してJR各社に分かれたのが1987年。この時JR貨物も国鉄の機関車を引き継ぎました。しかし、それらが老朽化してくると新しい機関車が必要。そこで1990年代中頃に登場したのがEF210型電気機関車です。

それまで使われていた国鉄の機関車の後継機として省エネも意識した強力な機関車として登場したのがEF210型。最初に拠点となったのが岡山だったため、愛称を公募した結果「ECO-POWER桃太郎」と名付けられました。実は機関車に公式の愛称がついたのはこれが初めて運転室横の窓の下には小さいですが桃太郎のロゴも入っています。

鉄道界の山の神?EH500金太郎とEH200ブルーサンダー

実は鉄道は坂に弱いというのをご存知ですか。鉄のレールと鉄の車輪を使う鉄道車両は坂が苦手。しかし、日本は坂が多いですよね。そのため、急坂を越えるためには強力な機関車が必要。箱根駅伝で箱根の急坂をぐいぐいのぼっていく選手を山男や山の神と呼びますよね。そんな鉄道界の山の神が金太郎とブルーサンダーです。

金太郎ことEH500ブルーサンダーことEH200は、どちらも一見すると2両がつながっているように見えます。しかし、どちらも2両で1組の機関車です。それが急坂を越えるための工夫。先輩のEH500は青函トンネルをの急坂を上り下りするため、後輩のEH200は山がちな路線の急坂を越えるために登場。金太郎は赤ブルーサンダーは青い機関車です。

名前はサンダーだが中身は桃太郎?EF510レッドサンダー

ブルーサンダーと同時期に登場したのがレッドサンダー。名前からは直流用のブルーサンダーEH200を交流用にしたものようですよね。しかし、実はレッドサンダーの中身や役割はEF210桃太郎に近いもの。直流用の桃太郎を交流の場所でも走行できるようにしたのがEF510レッドサンダーです。ちょっとややこしいですよね。

登場順は桃太郎、金太郎、ブルーサンダーとレッドサンダーの順です。しかし、役割が近いのは桃太郎とレッドサンダーと、金太郎とブルーサンダー。どれも公募で決まった名前です。仕方がないですが、勘違いしやすい名前になっています。

\次のページで「地方への貨物輸送に大活躍!金太郎は首都圏でも見ることが可能」を解説!/

地方への貨物輸送に大活躍!金太郎は首都圏でも見ることが可能

鉄道は電気で走るものとそうでないものの2種類。さらに電気も直流と交流の2種類に分けることが可能。ざっくり分けると関東以西の本州太平洋側が直流それ以外が交流です。その直流区間で貨物を運ぶ青い機関車が桃太郎とブルーサンダーそれ以外の区間を走る赤い機関車が金太郎とレッドサンダーです。

桃太郎とレッドサンダーはあまり急な坂のない比較的平坦な路線を走るための機関車。一方、鉄道が苦手とする急な坂を越えるための強力な機関車が金太郎とブルーサンダー平坦か坂が多いか、直流か交流かで4種類の機関車に分かれています。赤い機関車は都会で見る機会は少ないです。しかし、金太郎は首都圏と北海道を結ぶため、首都圏でも見ることができます

" /> 簡単でわかりやすい!金太郎とレッドサンダーの違いとは桃太郎や青い稲妻もいる?鉄道好きプログラマーがわかりやすく解説 – Study-Z
趣味雑学

簡単でわかりやすい!金太郎とレッドサンダーの違いとは桃太郎や青い稲妻もいる?鉄道好きプログラマーがわかりやすく解説

みんなは貨物列車を見たことがあるか。数十両もの貨車を先頭の機関車で引っ張っているな。その機関車に愛称がついているものがあるのを知っているか。新幹線ならのぞみやひかりといった列車の名前がついていますね。そうではなく、機関車そのものに「金太郎」や「レッドサンダー」という愛称がついているぞ。そんな機関車の愛称や、色の違い、どんな特徴があるのかを鉄道好きプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさん。

エコな物流を支える赤い電気機関車

image by iStockphoto

2024年問題というものを聞いたことがありますか。2024年に法律が変わり、トラック運転手などの労働時間を短くする必要があります。そのため、運転手の不足が問題となっているのです。そんな長距離荷物輸送の代替手段として貨物列車が注目されています。

数十両つながった長い貨物列車にはパワーがありながら省エネもできる機関車が必須ガソリンを使わず、排ガスも出ない電気を使った電気機関車が注目されています。その中でも注目されているのが、金太郎や桃太郎、レッドサンダー、ブルーサンダーといった愛称がついているJRの機関車です。これらの機関車の違いについて説明します。

金太郎:首都圏と北海道を結ぶ力持ち

普段、JRで通勤・通学していると、地域によって会社が違うことはご存知ですよね。首都圏や東北はJR東日本名古屋などはJR東海大阪などはJR西日本です。他にもJR北海道、JR四国、JR九州などに分かれています。では、貨物列車はどこの会社のものでしょう。実はJR貨物という会社が日本全国で貨物列車を運転しています。そのための機関車もJR貨物のものです。

そのJR貨物の貨物列車のうち、首都圏と北海道を結ぶ貨物列車に使われているのが金太郎という愛称のEH500型電気機関車赤い車体に金太郎のイラストが描いてあります。

レッドサンダー:日本海を駆け抜ける赤い稲妻

金太郎は首都圏と北海道を結びますが、大阪方面から新潟や青森といった日本海側の都市を結ぶ貨物列車には別の機関車が使われています。それがレッドサンダーという愛称をもつEF510型電気機関車です。

同じ貨物用の電気機関車なのになぜ違うものを用意しているのか不思議ですよね。また、太平洋側で見る貨物列車の先頭をゆく機関車は青い機関車です。なぜ赤いものと青いものがあるのでしょう。その辺りを説明していきます。

色によって走るところが違う?青と赤の違い

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This photo was taken with Nikon Coolpix 7600 – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

金太郎やレッドサンダーについて説明する前に、まずは機関車の基礎からJR貨物の機関車はざっくり分けると青と赤の2種類の機関車があります。この色の違いは、実は走行できる場所の違いと関係しているのです。この赤と青の違いについて説明していきます。

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