突然ですが、みんなは宗教は何だ?「無宗教です」と答える人が多いかもしれませんね。でも、そんな人もお正月には神社やお寺に参拝したり、お盆には先祖のお墓参りに行ったりするでしょう。それらをしているだけで、立派に神道や仏教を信じているといえるぞ。

ところで、「仏教」について日本史や世界史で学んでいると「密教」という言葉も出てくるよな。「密教」…漢字からして面白そうな響きですが、「仏教」との違いを把握しておくといいぞ。

今回はそんな「仏教」と「密教」の違いを、院卒日本語教師の"むかいひろき"と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの仏教地域の大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。仏教国への滞在経験が多い。その経験を武器に言葉や仏教について分かりやすく解説していく。

まずは「仏教」の大きな二大宗派をチェック!

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「仏教」と「密教」の違いを見ていく前に、前提として「仏教」の二大宗派について把握していることが大切となります。その2つの宗派の名前、わかりますか?まずはこの2つの宗派について確認していきましょう。

タイなどの東南アジア・南アジアは「上座部仏教」!

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「仏教」の二大宗派の1つが「上座部仏教(じょうざぶ・ぶっきょう)」です。ベトナムとイスラム教が主流の国を除く東南アジア(タイ、ミャンマー、カンボジアなど)や南アジアのスリランカで広く信仰されています

仏教の始祖・釈迦の死後約100年が経過した際に、戒律に関する問題で仏教教団は分裂しました。その際に戒律を厳格に遵守することを主張した一派が「上座部」です。この「上座部」の中でもその後対立や分裂があり、現在各国で信仰されている「上座部仏教」は、インド洋の島国スリランカで発展し、それが11~13世紀ごろに東南アジア各地に伝播していったものと考えられています。

日本を含めた東アジアと北東アジアは「大乗仏教」!

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「仏教」の二大宗派のもう1つが「大乗仏教(だいじょう・ぶっきょう)」です。日本、韓国、北朝鮮、中国、ベトナムといった東アジアの国々で広く信仰されており、中国のチベット、モンゴル、ブータン、ネパール、ロシアの一部の地域では、「大乗仏教」からさらに派生した「チベット仏教」が広く信仰されています。

仏教の始祖・釈迦の死後約100年が経過した際に、戒律に関する問題で仏教教団は分裂しました。その際に戒律に例外を認める立場であり、出家者だけでなく一般大衆に教えの門戸を開放し広めようとした一派が、後に「大乗」と呼ばれるようになりました。

この「大乗」の一派は、インドからチベット、そして中国へ、中国からモンゴルや朝鮮半島、日本へと広がっていき、様々な派生の新しい宗派が生まれ現在に至ります。日本の「仏教」にも様々な宗派がありますが、すべて「大乗仏教」に該当しますね。

\次のページで「「密教」とは何なのか?」を解説!/

「密教」とは何なのか?

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では前提の説明が終わったところで、ここで本題に戻りましょう。「密教」とは何なのでしょうか。この「密教」は実は「仏教」の中の1つの宗派です。ではどのような宗派なのでしょうか。「密」という字から神秘的なイメージもしますが…。掘り下げていきましょう。

「大乗仏教」から派生した宗派の1つ!

「密教」は「大乗仏教」から派生して7世紀ごろにインドで誕生した仏教の宗派です。インドでは12世紀ごろには絶滅してしまいましたが、7~8世紀にかけてチベット、中国へと伝わりました。もともとは特定の資格を持った者にしか伝授されない教えであったため、「秘密」の「密」の字を使用して「密教」と呼ばれます

チベットへ伝わった「密教」は、ここでさらに独自の発展を遂げて「チベット仏教(ラマ教)」となり、各地へ広がっていき、現在ではチベットのほか、モンゴル、ブータン、ネパール、ロシアの一部の地域などで広く信仰されています。

日本にも「密教」の信者やお寺が!

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インドからチベット、中国へ伝わった「密教」ですが、中国でも独自の発展を遂げます。そして中国で独自の発展を遂げた2つの「密教」が、日本へと9世紀に伝わりました

日本に「密教」を伝えたのは、最澄と空海の2人です。最澄は804年に遣唐使として唐(現在の中国)に渡り、「密教」の1つの中国天台宗の開祖である天台大師に学びます。日本に帰国してから806年に「天台宗」を開きました。一方の空海も804年に遣唐使として派遣され、恵果(えか)という師の下で中国の「真言密教」を学びます。2年後に帰国した空海は、「真言宗」を開きました。

「天台宗」も「真言宗」も現在まで日本で存在しています。「天台宗」のお寺では比叡山延暦寺が、「真言宗」のお寺では高野山金剛峰寺が総本山であり、とても有名です。

「密教」は「仏教」の中の宗派の1つ!

今回は「密教」と「仏教」の違いについて解説しました。大前提として、「仏教」には「上座部仏教」と「大乗仏教」の二大宗派があります。その二大宗派のうち「大乗仏教」から派生した大きな宗派の1つに「密教」があるのです。つまり「密教」とは、「仏教」の中の数ある宗派の1つと言えるでしょう。

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雑学

簡単に分かる「仏教」と「密教」の違い!「上座部仏教」・「大乗仏教」も院卒日本語教師が分かりやすく解説!

突然ですが、みんなは宗教は何だ?「無宗教です」と答える人が多いかもしれませんね。でも、そんな人もお正月には神社やお寺に参拝したり、お盆には先祖のお墓参りに行ったりするでしょう。それらをしているだけで、立派に神道や仏教を信じているといえるぞ。

ところで、「仏教」について日本史や世界史で学んでいると「密教」という言葉も出てくるよな。「密教」…漢字からして面白そうな響きですが、「仏教」との違いを把握しておくといいぞ。

今回はそんな「仏教」と「密教」の違いを、院卒日本語教師の”むかいひろき”と一緒に解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの仏教地域の大学に再就職した、日本で大学院修士課程修了の日本語教師。仏教国への滞在経験が多い。その経験を武器に言葉や仏教について分かりやすく解説していく。

まずは「仏教」の大きな二大宗派をチェック!

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「仏教」と「密教」の違いを見ていく前に、前提として「仏教」の二大宗派について把握していることが大切となります。その2つの宗派の名前、わかりますか?まずはこの2つの宗派について確認していきましょう。

タイなどの東南アジア・南アジアは「上座部仏教」!

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「仏教」の二大宗派の1つが「上座部仏教(じょうざぶ・ぶっきょう)」です。ベトナムとイスラム教が主流の国を除く東南アジア(タイ、ミャンマー、カンボジアなど)や南アジアのスリランカで広く信仰されています

仏教の始祖・釈迦の死後約100年が経過した際に、戒律に関する問題で仏教教団は分裂しました。その際に戒律を厳格に遵守することを主張した一派が「上座部」です。この「上座部」の中でもその後対立や分裂があり、現在各国で信仰されている「上座部仏教」は、インド洋の島国スリランカで発展し、それが11~13世紀ごろに東南アジア各地に伝播していったものと考えられています。

日本を含めた東アジアと北東アジアは「大乗仏教」!

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「仏教」の二大宗派のもう1つが「大乗仏教(だいじょう・ぶっきょう)」です。日本、韓国、北朝鮮、中国、ベトナムといった東アジアの国々で広く信仰されており、中国のチベット、モンゴル、ブータン、ネパール、ロシアの一部の地域では、「大乗仏教」からさらに派生した「チベット仏教」が広く信仰されています。

仏教の始祖・釈迦の死後約100年が経過した際に、戒律に関する問題で仏教教団は分裂しました。その際に戒律に例外を認める立場であり、出家者だけでなく一般大衆に教えの門戸を開放し広めようとした一派が、後に「大乗」と呼ばれるようになりました。

この「大乗」の一派は、インドからチベット、そして中国へ、中国からモンゴルや朝鮮半島、日本へと広がっていき、様々な派生の新しい宗派が生まれ現在に至ります。日本の「仏教」にも様々な宗派がありますが、すべて「大乗仏教」に該当しますね。

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