今回のテーマは財政政策と金融政策についてです。どちらも公的機関による経済政策のことですが、それぞれベクトルが少し異なっている。
財政政策は政府による経済安定政策で、歳入と歳出の調整によって経済成長や雇用創出を刺激するものです。一方、金融政策は日本銀行による経済安定政策で、金利や通貨量を操作することで急激な物価の変動を防ごうとする。それぞれの特徴と違いを雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

財政政策と金融政策の違いをざっくり解説

まず最初に、財政政策と金融政策の違いについてざっくり説明します。財政政策と金融政策はどちらも経済の安定や成長を目指す政策ですが、その手段や効果が及ぶ範囲は同じではありません。

例えば財政政策は、政府による歳入や歳出の増減によって需要や生産に影響を与えますが、金融政策は日本銀行による金利や通貨供給量の変更によって物価・金融市場に影響します。以下で詳しく見ていきましょう。

財政政策:政府による経済安定政策

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財政政策とは、政府が歳入や歳出を調整することで経済を安定させたり成長させたりする政策です。政策を実施する機関は政府であり、具体的には、内閣や財務省などが財政政策の立案や執行に関与します。

政策の影響は、主に実質的な需要や生産に現れるでしょう。つまり、政府が支出を増やすと公共事業や社会保障などで直接的に民間の所得や雇用が増えることになります。逆に支出を減らすと、それらが減ることになるのです。

政策の目的は、主に経済成長や雇用創出にあります。税金や国債などで得た資金を公共事業や社会保障などに投入することで民間の需要を刺激し、生産や所得を増やして失業率を下げることを目指すことになるでしょう。

金融政策:日本銀行による経済安定政策

金融政策とは、中央銀行が金利や通貨量などを操作することで経済を安定させたり成長させたりする政策のことです。政策を実施する機関は中央銀行であり、日本の場合は日本銀行が金融政策の立案や執行に関与します。

政策の影響は、主に金利や通貨価値などに現れるでしょう。つまり、中央銀行が金利を下げると、市中銀行の貸出金利も下がり、民間の投資や消費が増えることになります。反対に金利を上げると、その逆になるわけです。

政策の目的は、物価の安定性や金融システムの健全性を保つことにあります。金利や通貨量などを調整することで、インフレーションやデフレーションなどの物価変動を抑制し、通貨の価値を安定させることを目指すのです。

財政政策と金融政策を主導する公的機関は?

ここまでで、財政政策と金融政策という二つの経済安定政策の内容について解説しました。次に、これらの政策を主導する公的機関の違いを見ていきましょう。

財政政策は内閣や財務省が担当します。内閣は国会に予算案を提出して歳入や歳出の規模や内容を決め、財務省は内閣の方針に従って税収や国債発行などの財源確保や、公共事業や社会保障などの支出計画を実施することになるでしょう。

また、金融政策を担当するのは日本銀行で、物価安定目標や基準金利などの方針を決めることになります。また、市場操作や資金供給などの手段によって金融市場のコントロールをはかることになるでしょう。

財政政策:内閣や財務省

財政政策を主導するのは政府であり、より具体的には内閣や財務省となります。税金や国債の発行などで歳入を確保し、公共事業や社会保障などで歳出を行うのです。

例えば、景気が悪化しているときには、税金を減らしたり国債を発行して公共事業を増やしたりすることで、民間の需要を刺激しようとするでしょう。これを拡張的財政政策と呼びます。逆に、景気が過熱しているときには、税金を増やしたり国債の償還を進めたりすることで民間の需要を抑制しようとするでしょう。これが緊縮的財政政策です。

金融政策:日本銀行

金融政策を主導するのは中央銀行、つまり日本銀行となります。金利や通貨量などを操作することで経済を安定した状態に保ったり、さらに成長を後押ししたりするわけです。具体的には、市中銀行に対する貸出金利(公定歩合)や預金準備率などを設定して、市中銀行の資金繰りや貸出能力をコントロールします。

例えば、景気の悪化時には、公定歩合を下げたり預金準備率を下げたりすることで、市中銀行の資金供給量を増やし、低金利での貸出を促進しようとするでしょう。これを緩和的金融政策と呼びます。

逆に、景気が過熱しているときには、反対の操作を行って資金供給量を減らし、高金利での貸出を抑制する引き締め的金融政策を行うのです。

\次のページで「財政政策と金融政策の影響の違いは?」を解説!/

財政政策と金融政策の影響の違いは?

ここまでで、財政政策と金融政策を主導する公的機関などを解説しました。次に、これらの政策が経済に及ぼす影響の違いを見ていきましょう。財政政策は需要や生産に影響を与え、金融政策は金利や通貨価値に影響を与えることになります。それは私たちの暮らしにどのように関わってくるのでしょうか。

財政政策:需要や生産に影響する

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財政政策の影響は、主に実質的な需要や生産に表れます。つまり、政府が支出を増やすと公共事業や社会保障などで直接的に民間の所得や雇用が増えるという結果になるのです。これは財政乗数と呼ばれる効果で、支出の増加分以上に経済が拡大することを意味します。

逆に政府が支出を減らすと、民間所得も雇用も減少するでしょう。これは財政減数と呼ばれる効果で、前述の財政乗数とは全く正反対に、支出の減少分以上に経済が縮小するという結果になるのです。

金融政策:金利や通貨価値に影響する

金融政策の影響は、主に金利や通貨価値などに表れます。つまり、日本銀行が金利を下げると市中銀行の貸出金利も下がり、民間の投資や消費が増えるという結果になるのです。これは金融乗数と呼ばれる効果で、金利の低下分以上に経済が拡大することを意味します。

ここで反対に金利を上げると、市中銀行の貸出金利は上がり、お金を借りづらくなることから民間の投資は減少し、市場も冷え込むことになるでしょう。これは金融減数と呼ばれる効果で、金融乗数とは正反対に、金利の上昇分以上に経済が縮小するという結果になります。

財政政策と金融政策の目的の違いは?

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ここまでで、財政政策と金融政策の詳しい内容を解説してきました。次に、これらの政策は何を目的として行われるのかを見ていきましょう。

財政政策が目指すのは、経済成長や雇用創出です。例えば、政府が減税や補助金などを行うと消費者や企業の所得が増え、経済活動が活発になります。これによって、国内総生産(GDP)や雇用率が上昇するでしょう。

また金融政策は、物価の安定や金融システムの維持を目的とします。例えば、日本銀行がインフレ目標を設定して物価が安定的に上昇するように誘導することで、デフレーションやハイパーインフレーションなどに陥るのを防ぐことができるでしょう。

財政政策:経済成長・雇用創出

財政政策の目的は、主に経済の成長や雇用の創出です。政府は、税金や国債などで得た資金を公共事業および社会保障方面に投入することで、民間の需要を刺激して生産や所得が増えるように促します。そして失業率を下げることを目指すのです。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大により経済が停滞した2020年から2021年にかけて、日本政府は総額約300兆円にも及ぶ補正予算を組み、給付金や雇用調整助成金などの財政支出を行いました。これは、経済活動が低迷する中で民間の所得や消費を維持し、景気回復を促進することを目的とした財政政策だったと言えるでしょう。

\次のページで「金融政策:物価の安定・金融システムの維持」を解説!/

金融政策:物価の安定・金融システムの維持

金融政策の目的は、物価の安定や金融システムの健全性の維持です。日本銀行は、金利や通貨量などを調整することでインフレーションやデフレーションなどの物価変動を抑制し、通貨の価値を安定させることを目指します。

またそのためにも、市中銀行や証券会社などの金融機関に対して資金供給や監督などを行い、金融システムの安定性や信頼性を高めることも欠かせません。

例えば、日本銀行は2013年から現在まで「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和策を実施しています。これは、デフレーションから脱却して2%の物価安定目標を達成することを目的として行われた金融政策でした。

財政政策は政府による、金融施策は中央銀行による経済政策のこと

財政政策は政府による経済安定政策で、歳入と歳出の調整によって行われます。主な目的は経済成長や雇用創出で、税金や国債で得た資金を公共事業や社会保障に投入して民間需要を刺激し、生産と所得を増やすことを目指すのです。

金融政策は中央銀行による経済安定政策で、金利や通貨量を操作して行われます。主な目的は物価の安定を保つことで、金利と通貨量を調整してインフレーションやデフレーションを抑制し、通貨の価値を安定させようとするのです。

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簡単でわかりやすい!財政政策と金融政策の違いは?主導機関・影響・目的も雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマは財政政策と金融政策についてです。どちらも公的機関による経済政策のことですが、それぞれベクトルが少し異なっている。
財政政策は政府による経済安定政策で、歳入と歳出の調整によって経済成長や雇用創出を刺激するものです。一方、金融政策は日本銀行による経済安定政策で、金利や通貨量を操作することで急激な物価の変動を防ごうとする。それぞれの特徴と違いを雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

財政政策と金融政策の違いをざっくり解説

まず最初に、財政政策と金融政策の違いについてざっくり説明します。財政政策と金融政策はどちらも経済の安定や成長を目指す政策ですが、その手段や効果が及ぶ範囲は同じではありません。

例えば財政政策は、政府による歳入や歳出の増減によって需要や生産に影響を与えますが、金融政策は日本銀行による金利や通貨供給量の変更によって物価・金融市場に影響します。以下で詳しく見ていきましょう。

財政政策:政府による経済安定政策

image by iStockphoto

財政政策とは、政府が歳入や歳出を調整することで経済を安定させたり成長させたりする政策です。政策を実施する機関は政府であり、具体的には、内閣や財務省などが財政政策の立案や執行に関与します。

政策の影響は、主に実質的な需要や生産に現れるでしょう。つまり、政府が支出を増やすと公共事業や社会保障などで直接的に民間の所得や雇用が増えることになります。逆に支出を減らすと、それらが減ることになるのです。

政策の目的は、主に経済成長や雇用創出にあります。税金や国債などで得た資金を公共事業や社会保障などに投入することで民間の需要を刺激し、生産や所得を増やして失業率を下げることを目指すことになるでしょう。

金融政策:日本銀行による経済安定政策

金融政策とは、中央銀行が金利や通貨量などを操作することで経済を安定させたり成長させたりする政策のことです。政策を実施する機関は中央銀行であり、日本の場合は日本銀行が金融政策の立案や執行に関与します。

政策の影響は、主に金利や通貨価値などに現れるでしょう。つまり、中央銀行が金利を下げると、市中銀行の貸出金利も下がり、民間の投資や消費が増えることになります。反対に金利を上げると、その逆になるわけです。

政策の目的は、物価の安定性や金融システムの健全性を保つことにあります。金利や通貨量などを調整することで、インフレーションやデフレーションなどの物価変動を抑制し、通貨の価値を安定させることを目指すのです。

財政政策と金融政策を主導する公的機関は?

ここまでで、財政政策と金融政策という二つの経済安定政策の内容について解説しました。次に、これらの政策を主導する公的機関の違いを見ていきましょう。

財政政策は内閣や財務省が担当します。内閣は国会に予算案を提出して歳入や歳出の規模や内容を決め、財務省は内閣の方針に従って税収や国債発行などの財源確保や、公共事業や社会保障などの支出計画を実施することになるでしょう。

また、金融政策を担当するのは日本銀行で、物価安定目標や基準金利などの方針を決めることになります。また、市場操作や資金供給などの手段によって金融市場のコントロールをはかることになるでしょう。

財政政策:内閣や財務省

財政政策を主導するのは政府であり、より具体的には内閣や財務省となります。税金や国債の発行などで歳入を確保し、公共事業や社会保障などで歳出を行うのです。

例えば、景気が悪化しているときには、税金を減らしたり国債を発行して公共事業を増やしたりすることで、民間の需要を刺激しようとするでしょう。これを拡張的財政政策と呼びます。逆に、景気が過熱しているときには、税金を増やしたり国債の償還を進めたりすることで民間の需要を抑制しようとするでしょう。これが緊縮的財政政策です。

金融政策:日本銀行

金融政策を主導するのは中央銀行、つまり日本銀行となります。金利や通貨量などを操作することで経済を安定した状態に保ったり、さらに成長を後押ししたりするわけです。具体的には、市中銀行に対する貸出金利(公定歩合)や預金準備率などを設定して、市中銀行の資金繰りや貸出能力をコントロールします。

例えば、景気の悪化時には、公定歩合を下げたり預金準備率を下げたりすることで、市中銀行の資金供給量を増やし、低金利での貸出を促進しようとするでしょう。これを緩和的金融政策と呼びます。

逆に、景気が過熱しているときには、反対の操作を行って資金供給量を減らし、高金利での貸出を抑制する引き締め的金融政策を行うのです。

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