今回のテーマは実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いについてです。実体顕微鏡は材料科学やナノテクノロジー、生物材料研究などの分野で使われている。また光学顕微鏡は生物学や環境科学などでも活用されていることで有名です。
両者は仕組みが異なるため、観察する試料にも向き・不向きがある。科学の世界は複雑ですが、できるだけ専門用語を使わずにかみくだきながら雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いをざっくり解説

まず最初に、実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いについてざっくり解説します。実体顕微鏡と光学顕微鏡は、それぞれ光の性質を利用して物体を拡大して見る装置ですが、光の通り方や反射の仕方が異なるので注意が必要です。それぞれの特徴について以下で見ていきましょう。 

実体顕微鏡:光路が二本ある顕微鏡

実体顕微鏡は顕微鏡の一種で、対物レンズと接眼レンズの間にプリズムを入れて光路を分岐させることで、立体的な観察が可能な顕微鏡です。反射照明を用いて、透明でない物体の表面を見ることに適しています。光路が二本あることが特徴で、左右反転や上下反転が起こらないことから実物に近い形で対象を観察可能です。

実体顕微鏡は材料科学、ナノテクノロジー、表面処理、生物材料研究など幅広い分野で活用されています。特徴である高解像度と表面情報提供能力を活かして、新しい材料の設計や評価、ナノ材料の研究、触媒解析、生物材料の界面研究、医療材料の設計などで使われているのです。

光学顕微鏡:光の特性を使った顕微鏡

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一方の光学顕微鏡は、光学レンズを使って、肉眼では見えない小さな物体を拡大して見ることができる顕微鏡です。透過照明を用いて、透明な物体や細胞などの内部構造を見ることに適しています。また光の特性を利用して、高い倍率や解像度を得られるのも大きな特徴です。

光学顕微鏡は、生物学、材料科学、環境科学などの分野で使われています。例えば生物学では生体組織や細胞の観察に、材料科学では新材料設計と品質管理に役に立つでしょう。

また環境科学では環境汚染調査と生態系評価に活用されています。光学顕微鏡は視覚的情報提供能力と簡便な操作性から、各分野で重要な役割を果たしているのです。

実体顕微鏡と光学顕微鏡のメリットは?

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ここまでで、実体顕微鏡と光学顕微鏡の仕組みや原理を解説しました。次に、それぞれを使うことのメリットについて見ていきましょう。実体顕微鏡は、光路が二本あるため立体的な観察ができるという利点があります。また、調査する物体に対して特別な処理をする必要がないため、手間がかかりません。

一方光学顕微鏡は、光の特性を使って色や形を詳細に捉えられる点が大きなポイントです。色の情報は、物質の性質や構造を推測するのに役立つでしょう。

\次のページで「実体顕微鏡:調査の手間がかからない」を解説!/

実体顕微鏡:調査の手間がかからない

実体顕微鏡は、厚い物質や不透明な物質を観察することができます。これは、実体顕微鏡が反射光を利用して対象物を観察するからで、反射光は、光を通さないか強く散乱させる物質でも反射されるため、像がはっきりと見えるのです。

また、実体顕微鏡を使うと、物質がもともと持っている、染色や照明によって変化しない自然な色を観察することができます。これは、観察対象の色そのものを反射する光を捉える仕組みになっているからです。

さらに、調査に手間がかからないという点も実体顕微鏡の大きなメリットだと言えるでしょう。観察対象をそのまま置くだけで見ることができるため、切り出したり染色したりする必要がないのです。

光学顕微鏡:色の情報が直接得られる

光学顕微鏡は、高倍率の観察に適しています。これは、光学顕微鏡はレンズの間隔が狭く、対物レンズと観察対象との距離が短いからです。そうすることで分解能を高めることができ、細かい色の情報や大量物の構造、細胞内部の詳細を見ることが可能になります。

また、光学顕微鏡は透過光を利用して観察するため、薄い物質や透明な物質を観察するのに適していると言えるでしょう。透過光は、光を通す物質によって変化するためです。

実体顕微鏡と光学顕微鏡のデメリットは?

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ここまでで、実体顕微鏡と光学顕微鏡のメリットを解説しました。次に、それぞれの顕微鏡が持つデメリットについて見ていきましょう。実体顕微鏡には、低倍率の観察しかできないという欠点があります。高倍率で見たい場合は、別の種類の顕微鏡を使う必要があるでしょう。

一方、光学顕微鏡は色の情報が得られないという欠点があります。これは、物質によっては透明だったり、色素を含んでいなかったりするためです。この場合は、染色や蛍光などの方法で色付けする必要があります。

実体顕微鏡:低倍率の観察しかできない

実体顕微鏡は低倍率の観察に適していますが、高倍率の観察には不向きと言えるでしょう。レンズの間隔が広く、対物レンズと観察対象との距離が長いため、分解能が低くなることは避けられないからです。分解能が低いと、光学顕微鏡のように対象物の細かい構造や細胞内部の詳細を見ることができません。

また、実体顕微鏡は反射光を利用して観察するため、詳しい色の情報を得ることができないのも難点です。

光学顕微鏡:色の情報が得られない

一方、光学顕微鏡は高倍率の観察に適していますが、低倍率の観察には不向きです。透過光を利用して観察する光学顕微鏡は、厚い物質や不透明な物質を観察することができません。そうした物質は光を通さないか強く散乱させる性質を持っているため、どうしても像がぼやけたり暗くなったりするのは避けられないでしょう。

また、光学顕微鏡も観察によって対象物の色の情報を得ることができますが、その色は本来の色ではなく、染色や照明によって変化する人工的な色だということになります。

\次のページで「実体顕微鏡と光学顕微鏡の注意点は?」を解説!/

実体顕微鏡と光学顕微鏡の注意点は?

ここまでで、実体顕微鏡と光学顕微鏡の特徴やメリット・デメリットを解説しました。最後に、それぞれの顕微鏡を使う際の注意点を見ていきましょう。

まず実体顕微鏡は、持ち運びや操作に注意する必要があります。これは、もともと実体顕微鏡は重量やサイズが大きく、繊細な機器であるためです。衝撃や振動によって故障したり、精度が低下したりすることは絶対に防ぐ必要があります。

一方、光学顕微鏡で注意すべきなのは「汚れ」です。光学顕微鏡の場合、レンズやスライドガラスが汚れると観察画像が悪化したり、正確な測定ができなくなったりするでしょう。よって、清掃やメンテナンスを定期的に行うことが重要です。

実体顕微鏡:持ち運び・操作に注意する

実体顕微鏡は、レンズや光源などの部品が多く重くてかさばるため、持ち運びに注意する必要があります。持ち運びの際には、衝撃や振動によって部品が破損したりずれたりしないように、専用のケースや台車などを使って運ぶようにしましょう。

また観察のために操作する場合も注意する必要があります。実体顕微鏡は観察対象とレンズの間に空間がありますが、対象がレンズにぶつからないよう気を付けましょう。レンズにぶつかると、レンズや観察対象が傷ついたり汚れたりする可能性があります。

光学顕微鏡:汚れに注意する

光学顕微鏡は透過光を利用して観察するため、汚れに注意する必要があります。レンズや観察対象の表面に汚れがあると、像がぼやけたり歪んだりしてしまうでしょう。汚れの原因となるのは、指紋や埃などさまざまなものが考えられますが、レンズや観察対象を触る際には手袋を着用したり、レンズ紙やアルコールなどで清掃したりするようにして下さい。

実体顕微鏡は光路が二本あり、光学顕微鏡は光の特性を利用したもの

実体顕微鏡は、試料の表面を高い解像度で観察するために二本の光路を持つ反射型の顕微鏡です。試料の表面特性を詳細に調査するのに適していると言えるでしょう。

一方、光学顕微鏡は可視光を利用するもので、光の屈折や反射の特性に基づいて試料を拡大し、観察するという仕組みになっています。どちらの顕微鏡も、科学研究や産業分野で活用されている不可欠なツールです。

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簡単でわかりやすい!実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いは?メリット・デメリット・注意点も雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマは実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いについてです。実体顕微鏡は材料科学やナノテクノロジー、生物材料研究などの分野で使われている。また光学顕微鏡は生物学や環境科学などでも活用されていることで有名です。
両者は仕組みが異なるため、観察する試料にも向き・不向きがある。科学の世界は複雑ですが、できるだけ専門用語を使わずにかみくだきながら雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いをざっくり解説

まず最初に、実体顕微鏡と光学顕微鏡の違いについてざっくり解説します。実体顕微鏡と光学顕微鏡は、それぞれ光の性質を利用して物体を拡大して見る装置ですが、光の通り方や反射の仕方が異なるので注意が必要です。それぞれの特徴について以下で見ていきましょう。 

実体顕微鏡:光路が二本ある顕微鏡

実体顕微鏡は顕微鏡の一種で、対物レンズと接眼レンズの間にプリズムを入れて光路を分岐させることで、立体的な観察が可能な顕微鏡です。反射照明を用いて、透明でない物体の表面を見ることに適しています。光路が二本あることが特徴で、左右反転や上下反転が起こらないことから実物に近い形で対象を観察可能です。

実体顕微鏡は材料科学、ナノテクノロジー、表面処理、生物材料研究など幅広い分野で活用されています。特徴である高解像度と表面情報提供能力を活かして、新しい材料の設計や評価、ナノ材料の研究、触媒解析、生物材料の界面研究、医療材料の設計などで使われているのです。

光学顕微鏡:光の特性を使った顕微鏡

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一方の光学顕微鏡は、光学レンズを使って、肉眼では見えない小さな物体を拡大して見ることができる顕微鏡です。透過照明を用いて、透明な物体や細胞などの内部構造を見ることに適しています。また光の特性を利用して、高い倍率や解像度を得られるのも大きな特徴です。

光学顕微鏡は、生物学、材料科学、環境科学などの分野で使われています。例えば生物学では生体組織や細胞の観察に、材料科学では新材料設計と品質管理に役に立つでしょう。

また環境科学では環境汚染調査と生態系評価に活用されています。光学顕微鏡は視覚的情報提供能力と簡便な操作性から、各分野で重要な役割を果たしているのです。

実体顕微鏡と光学顕微鏡のメリットは?

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ここまでで、実体顕微鏡と光学顕微鏡の仕組みや原理を解説しました。次に、それぞれを使うことのメリットについて見ていきましょう。実体顕微鏡は、光路が二本あるため立体的な観察ができるという利点があります。また、調査する物体に対して特別な処理をする必要がないため、手間がかかりません。

一方光学顕微鏡は、光の特性を使って色や形を詳細に捉えられる点が大きなポイントです。色の情報は、物質の性質や構造を推測するのに役立つでしょう。

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