今回のテーマは湯布院と由布院の違いについてです。どちらも温泉で有名な大分県由布市内の地名ですが、一文字違いな上に読み方は同じという二つの地名が存在しているんです。旅行などに行って、二つの地名が混在していることを不思議に思った人もいるかも知れない。
この二つの名称が混在するようになった歴史は、細かくたどっていくと非常にややこしい。できるだけ簡潔に、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

湯布院と由布院の違いをざっくり解説

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まず最初に、湯布院と由布院の違いについてざっくり説明しましょう。湯布院と由布院はどちらも同じ大分県由布市の中にある地名で、もともとは「湯布院町」「由布院町」という町名に由来します。大まかに言えば、由布市は合併によって今の形になった市なのですが、その中に合併前の昔の町名が残っているということです。

こうしたケースは決して珍しいものではありません。例えば、古くからの住民が、住んでいる場所のことを地図にも載っていないような古い地名で呼んでいたりすることがあります。そうした呼び方が受け継がれて、若い人でも自分の住む地域を謎めいた地名で呼んだりするのです。

こうした背景も踏まえながら、まずは両者の内容を見ていきましょう。

湯布院:合併してできた地名

まず、現在の大分県由布市の中にある「湯布院」という地名について見ていきます。この湯布院という名称自体は比較的新しく、昭和30年に、かつて存在した「由布院町」と「湯平町」という二つの町が合併して成立したのが「湯布院町」でした。

さらにその後、その湯布院町と挾間町・庄内町の三つの町が平成17年に合併を果たして「由布市」となります。観光地として有名な由布院温泉は、前述の合併前の「由布院町」の中にあったので、由布院温泉の現在の住所表記は、「大分県由布市・湯布院町」になるわけです。

由布院:合併前の町名の名残

前項で説明した通り、「由布院」という地名は、昭和30年に湯平町と合併するまで存在していた「由布院町」という町名の名残です。町制が施行されて「町」になる前は「由布院村」であり、さらにそれ以前は北由布院村・南由布院村に分かれていました。

「村」だった頃の歴史は割愛しますが、ざっくり言えば、観光地として有名な由布院温泉はかつての由布院村、あるいは由布院町だったエリアに存在しており、そこは地理的には由布院盆地という場所の中にあたります。

よって、由布院盆地内の旧由布院村・由布院町だった場所では、今でも「由布院」の地名が使われていることが多いです。例えば同盆地内にあるJR駅は、由布院駅となっています。

\次のページで「湯布院と由布院の合併の歴史は?」を解説!/

湯布院と由布院の合併の歴史は?

ここまでで「湯布院」「由布院」の地名についてのそれぞれの歴史をざっくり説明しました。ここで改めて、合併によって村名や町名が変わっていった経緯をまとめておきます。

まず最初は、昭和30年に「由布院町」と「湯平町」が合併しました。これによって新たに誕生したのが「湯布院町」です。これにより、由布院温泉は湯布院町の中のいわば「旧由布院町エリア」に属する形となりました。

次に平成17年、いわゆる平成の大合併の流れを受けて、その湯布院町が今度は「挾間町」「庄内町」と合併して「由布市」となります。こうして、由布院温泉は「由布市内にある旧湯布院町エリアの、その中にある旧由布院町エリア」の中に属することになりました。

湯布院と由布院の場所ごとの表記の違いは?

ここまでで、かつての湯布院町には旧由布院町エリアも含まれており、全てが平成の大合併で「由布市」になった経緯などを解説しました。次に、「湯布院」ならびに「由布院」という地名がそれぞれ場所ごとにどう使われているか、その違いを見ていきましょう。

ざっくり言えば、昭和30年に行われた合併によって「湯布院町」になったエリアでは、現在でも「湯布院」という地名が使われていることが少なくありません。

湯布院:一部で使われている

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昭和30年の合併で「由布院町」と「湯平町」の二つの町が一緒になったのは前述の通りですが、「旧由布院町エリア」と「旧湯平町エリア」では、それがきっかけで昭和30年から新しい地名として「湯布院」が使われ始めたと考えるといいでしょう。

ただ、「旧由布院町エリア」の「由布院」という漢字が使用禁止になったわけではありません。よって、同エリアでは由布院と湯布院という二つの地名が混在することになったのです。前述した合併が行われたことによって「旧由布院町」の自治体名が消滅した後も、伝統的な「由布院」の名称は使われ続けてきました。

由布院:旧由布院町エリアで使われている

前項までの説明を読めば分かる通り、由布院という地名が使われているのは「旧由布院町エリア」に限られます。

平成17年の合併によって、湯布院町を含む形で「由布市」が誕生したことからますますややこしくなりましたが、由布市の中に旧湯布院町があり、さらにその中にある旧由布院町エリアでは、昔から「由布院」という名称が使われてきたと考えるといいでしょう。

旧由布院町エリアと旧湯平町エリアで「湯布院」という名称が使われたのは、旧湯布院町が町として機能していた昭和30年から平成17年までの間だったということです。湯布院という地名はその名残だと言えます。

\次のページで「湯布院と由布院の地図上の違いは?」を解説!/

湯布院と由布院の地図上の違いは?

ここまでで、湯布院と由布院という地名の由来と変遷を説明してきました。この二つの地名の混在とそれによる若干の混乱が生じたのは、昭和30年以降の二度に渡る合併が理由だったことが分かったでしょう。

二つの地名の使われ方について、図式的に、さまざまな角度から説明しましたが、最後に湯布院・由布院の名称の地理上の分布について確認しておきましょう。それぞれの地名が、具体的にどの場所で使われているのかを説明します。

湯布院:旧湯布院町エリアのこと

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湯布院という地名が使われているのは、昭和30年の合併によって湯布院町となったエリアです。地理的には大分県のほぼ中央部にあたり、昭和30年よりも前は由布院町・湯平町だったエリアと、また平成17年よりも前は挾間町・庄内町だったエリアが該当するでしょう。

ただし、この中でも特にかつての由布院町だったエリアでは、JR駅名と温泉名に「由布院」が使われているので注意が必要です。

ことの経緯を知らないと湯布院・由布院の違いなどが分からず混乱してしまうことも少なくありません。よって、こうした混乱を避けるために、最近は「ゆふいん」と平仮名で表記するケースも増えてきました。

由布院:観光エリアの由布院盆地

由布院という地名が使われているのは、昭和30年の合併によって自治体としては消滅した旧由布院町に該当するエリアです。ただ、自治体名としては消滅して使われなくなったとはいえ、昔ながらの呼び名としては現在も使われています。例えば、観光エリアとしての由布院盆地という名称などです。

ところで、名称の混乱を避けるために「ゆふいん」という平仮名表記も採用されるようになったのは前項で述べた通りですが、観光客により親しみを持ってもらうために温泉地が平仮名の通称を採用したケースとして、山形県の「あつみ温泉」が挙げられます。

あつみ温泉は、正式には温海温泉と表記するのですが、読みにくいことから平仮名表記するようになったものです。

旧湯布院町の名残が「湯布院」、旧由布院町の名残が「由布院」

「湯布院」と「由布院」はいずれもかつて存在した自治体の名称です。昭和30年に由布院町と湯平町が合併して湯布院町が成立し、旧由布院町エリアでは昔ながらの「由布院」と新しい町名である「湯布院」が混在することになりました。

平成17年には湯布院町も自治体としては消滅し「由布市」となります。が、旧湯布院町エリアではその後も湯布院という地名が使われ、結果として「湯布院」も「由布院」も使われることになったのです。

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簡単でわかりやすい!湯布院と由布院の違いは?名称の由来や分布も雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマは湯布院と由布院の違いについてです。どちらも温泉で有名な大分県由布市内の地名ですが、一文字違いな上に読み方は同じという二つの地名が存在しているんです。旅行などに行って、二つの地名が混在していることを不思議に思った人もいるかも知れない。
この二つの名称が混在するようになった歴史は、細かくたどっていくと非常にややこしい。できるだけ簡潔に、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

湯布院と由布院の違いをざっくり解説

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まず最初に、湯布院と由布院の違いについてざっくり説明しましょう。湯布院と由布院はどちらも同じ大分県由布市の中にある地名で、もともとは「湯布院町」「由布院町」という町名に由来します。大まかに言えば、由布市は合併によって今の形になった市なのですが、その中に合併前の昔の町名が残っているということです。

こうしたケースは決して珍しいものではありません。例えば、古くからの住民が、住んでいる場所のことを地図にも載っていないような古い地名で呼んでいたりすることがあります。そうした呼び方が受け継がれて、若い人でも自分の住む地域を謎めいた地名で呼んだりするのです。

こうした背景も踏まえながら、まずは両者の内容を見ていきましょう。

湯布院:合併してできた地名

まず、現在の大分県由布市の中にある「湯布院」という地名について見ていきます。この湯布院という名称自体は比較的新しく、昭和30年に、かつて存在した「由布院町」と「湯平町」という二つの町が合併して成立したのが「湯布院町」でした。

さらにその後、その湯布院町と挾間町・庄内町の三つの町が平成17年に合併を果たして「由布市」となります。観光地として有名な由布院温泉は、前述の合併前の「由布院町」の中にあったので、由布院温泉の現在の住所表記は、「大分県由布市・湯布院町」になるわけです。

由布院:合併前の町名の名残

前項で説明した通り、「由布院」という地名は、昭和30年に湯平町と合併するまで存在していた「由布院町」という町名の名残です。町制が施行されて「町」になる前は「由布院村」であり、さらにそれ以前は北由布院村・南由布院村に分かれていました。

「村」だった頃の歴史は割愛しますが、ざっくり言えば、観光地として有名な由布院温泉はかつての由布院村、あるいは由布院町だったエリアに存在しており、そこは地理的には由布院盆地という場所の中にあたります。

よって、由布院盆地内の旧由布院村・由布院町だった場所では、今でも「由布院」の地名が使われていることが多いです。例えば同盆地内にあるJR駅は、由布院駅となっています。

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