通販サイトなどでいくつかの商品を購入した場合、大きな箱の中に買ったものが入って送られてくるよな。バラバラで送るよりも便利だからひとつにまとめるわけです。ネットでいくつかのファイルを送るときも同じですね。数が多い場合は1件1件バラで送るよりも、1個にまとめて送った方が早い。そんな時に使うのがzipファイル。そのzipファイルの中身を取り出すことをなんと呼ぶかは、人によって違う場合がある。なぜ違うのかやどちらを使うべきかを「解凍」世代のプログラマでもあるライターのwoinaryと一緒に解説していきます。

ライター/woinary

某社で社内向け業務システムの開発、運用を30年近くやっていたシステム屋さん。現在はフリーランス。ガジェットやゲーム、ラノベが大好きなおっさん。

年齢がバレる?圧縮したファイルを戻すことをなんと言う?

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いくつかのファイルをメールやネットで送る場合どうしていますか。数が少なければバラバラで送ってもよいですが、多くなるとzipファイルにまとめた方が便利ですよね。そのzipファイルにまとめたものを元に戻すことをなんと呼びますか。実はこれをなんと呼ぶかでSNSで議論が起きたとか。

zipファイルを元に戻すことを「解凍」と呼ぶのは比較的年配の方が多く、若い世代は「展開」と呼ぶことが多いよう。これは単に呼び方が違うだけで指している内容自体は同じです。でもなぜ呼び方が違ってしまったのでしょう。それについて説明します。

解凍:インターネット以前の死語?2000年以前に大流行

いくつかのファイルを1つのzipファイルにまとめることを「圧縮する」や「アーカイブする」と呼びます。あるいは単に「zip(ジップ)する」という場合もありますね。今ではパソコンの標準機能で圧縮できるので、特別なソフトは不要なことが多いです。しかし、昔はアプリを入れる必要がありました。それが圧縮ソフト。圧縮ソフトと言っても、圧縮と展開・解凍の両方できるのが普通です。

特にインターネットが普及する前の2000年より前は圧縮ソフトが大活躍。その頃は圧縮ソフトでまとめたものを戻すことを「解凍」と呼んでいました。ダウンロードしてきた圧縮ファイルを元に戻す専用の解凍ソフトというものも存在していたのです。

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展開:そもそも海外で解凍は通じない?Windowsもこちら

ただ「解凍」が一般的だったのは日本だけの話。なぜ日本だけだったのかは後で説明します。Windowsのファイルエクスプローラでzipファイルを元に戻すことができますが、そのメニュー名も「すべて展開...」ですよね。

つまり「解凍」を使うのは日本の一定以上より上の世代だけということ。英語版のWindowsでは「Extract All...」になっています。extractには多くの意味がありますが、この場合は「取り出す」という意味。そのまま訳すと「すべてを取り出す」になりそうですが、圧縮ファイルの内容を戻すことを「展開する」と言うことが多いため、「すべて展開」にしているのです。

解凍?展開?2つの言葉が生まれたわけは?

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この「解凍」という使い方については、その由来がはっきりしていません。通説として、国産のあるソフトのマニュアルで利用していたという話が一般的です。

しかし、それ以前から使われていたこともはっきりしています。そのため、なぜ広まったかは分かっていても、なぜそう呼んでいたのかはよくわからない部分が多いのです。わかっている範囲で「解凍」が使われた理由を説明していきます。

通説?LHAという国産アプリで広まった

一般的に「解凍」の由来は国産圧縮ソフトのLHA(エルエッチエー)やその元になったLHarc(エルエッチアーク)のマニュアルで使われていたため、と言われています。これ自体は間違いない事実。でも、なぜLHAという国産アプリのマニュアルに使われていた言葉が広まったのでしょう。

LHAが主に使われていたのはインターネットが普及する前の時代。その頃はネットと言えば「パソコン通信」というものでした。パソコンを電話回線でパソコン通信会社につないでメールや掲示板、ファイルのやりとりなどをしていたのです。その頃は圧縮ソフトが必須アプリで、その代表がLHAでした。そのため、LHAのマニュアルにあった解凍という言葉の使い方が広がったのです。

真実?実はそれ以前から解凍という言葉は使われていた

さて、LHAのマニュアルでファイルを戻すことを解凍と表現していたのは事実です。しかし、そのLHAの開発に関わった人が「それ以前から解凍という言葉が使われていた」と言っています。つまり、解凍という使い方の広がるきっかけにはなったかもしれませんが、解凍を最初に使ったわけではないのです。

結局、だれがファイルを戻すことを「解凍」と呼んだのかははっきりしていません。いつ頃からか一部で広まっていた使い方が、LHAというアプリのマニュアルをきっかけに一般化したのだと推測できます。日本語の「戻す」には「水に浸すことや、解凍することで加工前の状態にする」という意味も。そこから逆に戻すことを「解凍」と呼んだのかもしれません。

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結局よくわからない?だが当時は広く使われた「解凍」

結局、ファイルを戻すことを「解凍」と呼び始めたきっかけや、なぜ広まったのかはっきりしていません。ただ、日本ではコンピューターを使う人の多くがLHAを利用していた時代があり、そのマニュアルにあった「解凍する」という表現が広く普及したからというのは正しそう。

現在では想像がつきにくいかもしれませんが、それだけの影響を与えたとしても不思議ではないほどLHAという圧縮ソフトが広く普及していたのです。

昔は一般的だった圧縮ソフト?なぜ今はないの?

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そんなに広く使われていたLHAはなぜ今見かけないのでしょう。実はLHA以外にも多くの圧縮ソフトがありました。しかし、現在では圧縮ソフトをみかけることは少なくなっています。一つは標準機能になって、アプリのインストールが不要になったため。なぜそういう状況になったのかを説明していきます。

標準機能になり、今はあまり使わなくなった圧縮ソフト

LHAや他の圧縮ソフトが使われなくなった理由は、ざっくり言えば標準機能となったから。わざわざアプリをインストールしなくても圧縮や展開ができるのであれば、その方がよいですよね。Windowsでは標準のエクスプローラだけでフォルダの圧縮や全て展開が可能。そのため、普通の用途では別に圧縮ソフトを入れる必要がありません

ではどういう時に必要になるのでしょう。それはzipファイルにパスワードをつける場合です。zipファイルには元々パスワードを付けて、それを知らない人が展開できないようにする機能があります。ただ、Windows標準機能ではパスワードを付けた圧縮には対応していません。そのため、パスワード付きのzipファイルを作成する場合にだけ圧縮ソフトが必要です。

2000年以前は大競争時代?様々な圧縮ソフトが生まれた理由

LHAが主流だった2000年より前の時代には、LHAの他にも多くの圧縮ソフトがありました。今使われているzip ファイルを扱うアプリもその頃から存在しています。なぜそんなに多くの圧縮ソフトが必要だったのでしょう。

その頃のネットは今のインターネットと比べるとはるかに遅いもの。今なら100メガバイトと99メガバイトのファイルのダウンロードで大きな差は感じないですよね。しかし、その頃は100キロバイトと99キロバイトでも大きな差だったのです。そのため、ファイルを少しでも小さくする激しい競争がありました。日本ではLHAがその性能の良さで広く普及していたのです。

競争の時代から標準化の時代?ZIPファイルが主流へ

少しでもファイルを小さくするための競争もやがて終わりを迎えます。最初のうちは工夫することでより小さくできたのですが、それにも限界が。限界を迎えるとあとはどれだけの利用者がいるかが勝負の分け目になります。最終的には海外でも広く使われていたzipファイルが主流となり、パソコンでも標準に日本製のLHAも性能は良かったのですが、日本でしか普及していなかったので標準機能にはなれなかったのです。

次々と新しいものが出ていた頃は標準機能にはなりにくいですが、その競争が終われば広く使われているものが標準になります。zipファイルが標準となったことで、Windowsの標準機能となり、他の圧縮ソフトは利用されなくなったのです。

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解凍はネットスラングのようなもの、今後は展開を主流に

zipファイルにまとめたものを元に戻すことを「解凍」や「展開」と呼びます。表現が違うだけで中身は同じ。この「解凍」という言葉の由来のひとつが日本で広く使われていたLHAという圧縮ソフトです。ただそれ以前から使われていたので、由来ははっきりしていません。一種のネットだけで通じる言葉、ネットスラングだったのではないかと推測しています。

そんな「解凍」は日本だけの表現。そのきっかけとなったLHAも使われなくなり、なぜファイルを戻すことを解凍というかわからない人の方が多いかも。今後のことを考えれば日本独自の「解凍」という表現ではなく「展開」を使うべきですよね。ただ、解凍と言う人も居るので、それが展開のことだと頭の片隅に置いておくと話が通じやすいかもしれません。

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IT・プログラミング雑学

簡単でわかりやすい!解凍と展開の違いとは?解凍は死語?プログラマーがわかりやすく解説

結局よくわからない?だが当時は広く使われた「解凍」

結局、ファイルを戻すことを「解凍」と呼び始めたきっかけや、なぜ広まったのかはっきりしていません。ただ、日本ではコンピューターを使う人の多くがLHAを利用していた時代があり、そのマニュアルにあった「解凍する」という表現が広く普及したからというのは正しそう。

現在では想像がつきにくいかもしれませんが、それだけの影響を与えたとしても不思議ではないほどLHAという圧縮ソフトが広く普及していたのです。

昔は一般的だった圧縮ソフト?なぜ今はないの?

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そんなに広く使われていたLHAはなぜ今見かけないのでしょう。実はLHA以外にも多くの圧縮ソフトがありました。しかし、現在では圧縮ソフトをみかけることは少なくなっています。一つは標準機能になって、アプリのインストールが不要になったため。なぜそういう状況になったのかを説明していきます。

標準機能になり、今はあまり使わなくなった圧縮ソフト

LHAや他の圧縮ソフトが使われなくなった理由は、ざっくり言えば標準機能となったから。わざわざアプリをインストールしなくても圧縮や展開ができるのであれば、その方がよいですよね。Windowsでは標準のエクスプローラだけでフォルダの圧縮や全て展開が可能。そのため、普通の用途では別に圧縮ソフトを入れる必要がありません

ではどういう時に必要になるのでしょう。それはzipファイルにパスワードをつける場合です。zipファイルには元々パスワードを付けて、それを知らない人が展開できないようにする機能があります。ただ、Windows標準機能ではパスワードを付けた圧縮には対応していません。そのため、パスワード付きのzipファイルを作成する場合にだけ圧縮ソフトが必要です。

2000年以前は大競争時代?様々な圧縮ソフトが生まれた理由

LHAが主流だった2000年より前の時代には、LHAの他にも多くの圧縮ソフトがありました。今使われているzip ファイルを扱うアプリもその頃から存在しています。なぜそんなに多くの圧縮ソフトが必要だったのでしょう。

その頃のネットは今のインターネットと比べるとはるかに遅いもの。今なら100メガバイトと99メガバイトのファイルのダウンロードで大きな差は感じないですよね。しかし、その頃は100キロバイトと99キロバイトでも大きな差だったのです。そのため、ファイルを少しでも小さくする激しい競争がありました。日本ではLHAがその性能の良さで広く普及していたのです。

競争の時代から標準化の時代?ZIPファイルが主流へ

少しでもファイルを小さくするための競争もやがて終わりを迎えます。最初のうちは工夫することでより小さくできたのですが、それにも限界が。限界を迎えるとあとはどれだけの利用者がいるかが勝負の分け目になります。最終的には海外でも広く使われていたzipファイルが主流となり、パソコンでも標準に日本製のLHAも性能は良かったのですが、日本でしか普及していなかったので標準機能にはなれなかったのです。

次々と新しいものが出ていた頃は標準機能にはなりにくいですが、その競争が終われば広く使われているものが標準になります。zipファイルが標準となったことで、Windowsの標準機能となり、他の圧縮ソフトは利用されなくなったのです。

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