この記事では筋ジストロフィーとALSの違いについて、そして知恵袋の回答は正しいのかどうかについてみていきます。どちらも難病で筋肉が弱っていくという症状が共通しているが、実は違いがあるようです。
そんな2つの病気について看護師Webライターの近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

筋ジストロフィーとALSの患者に会ったことはないが知識はある、看護師webライター 。

筋ジストロフィーとALSの違いとは?

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筋ジストロフィーとALSはともに筋肉がやせていく症状がありますが、同じ筋肉の病気ではありません。違いを詳しくみていきましょう。

筋ジストロフィーとは指定難病で遺伝性筋疾患

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人間の筋肉は約180日で半分が生まれ変わります。筋ジストロフィーは遺伝的に筋肉の再生・維持に必要な遺伝子の変異があるために、筋肉が壊れやすく、再生されにくくなった結果、筋肉がやせていく病気です。

筋肉には骨格筋(骨についており体を動かしたり、姿勢を保つ)、心筋(心臓の筋肉)、平滑筋(内臓や血管の壁に筋肉で緊張や収縮で内臓や血管の働きを維持)の3種類がありますが、この病気では自分の意思で動かせる随意筋である、骨格筋に症状が出ます。筋ジストロフィーにはいくつも種類があり、発症する性別や年齢などに違いがあるのが特徴です。

筋ジストロフィーの病型は主に7つ

ジストロフィノパチーはデュセンヌ型(DMD)、ベッカー型(BMD),、女性ジストロフィノパチーの総称です。女性でもまれに発症します。肢帯型(LGMD)は遺伝形式で1型と2型とあり、日本では1型は少ないです。先天性(CMD)は、出生時から筋力・筋緊張低下がみられる筋ジストロフィーの総称で、福山型やインテグリンα欠損型など多くの病型があります。

顔面肩甲上腕型(FSHD)は、筋ジストロフィーの中では罹患率が高いもので発症年齢は0〜65歳と幅広く、症状の進行はゆっくりで経過は良好です。筋強直性は握った手がすぐに開かないなどの筋強直現象、筋力低下、心臓など全身の合併症が起こる特徴があります。

エメリー・ドレフェス型は幼少期に発症し、比較的ゆっくり筋力低下が起き、関節が固まるほか、心臓の異常が主な症状です。眼咽頭型は45歳以降に発症し、顔や足の筋力低下がみられます。

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ALSとは難病の筋萎縮性側索硬化症のことで進行性の神経疾患

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筋萎縮性側索硬化症は、英語のAmyotrophic Lateral Sclerosisの頭文字をとってALSと表記します。自分の意思で動かすことができる随意筋がやせて筋力が低下し、最終的には呼吸筋を含む全身の筋肉が動かしにくくなりますが、筋肉の病気ではありません。筋肉に指令を出す神経である運動ニューロンが変性・消失する、原因不明で進行性の神経の病気です。

女性より男性に多くみられ、中年以降、特に60〜70代での発症が最も多い傾向があります。通常、体の感覚や視力、聴力、内臓の機能に変化はありません。

知恵袋のベストアンサーはおおむね正解

筋ジストロフィーとALSの違いについて、知恵袋のベストアンサーはおおむね正解だといえます。ALSは「患者の大半が同じ症状をたどる」とありますが、正確な調査はされておらず、個人差が非常に大きいのが現状です。

発症から亡くなるまで約3.5年といわれているものの、病型によっては発症から3か月以内に亡くなる例もある一方で、呼吸器なしで10年以上生存した例もあります。

筋ジストロフィーやALSは治る?

筋ジストロフィーやALSを発症した場合、治るのでしょうか?日常生活で気をつけることも踏まえてみていきましょう。

筋ジストロフィーは治らない

残念ながら完治させる薬や治療法はありませんが、対症療法でできることはたくさんあります。

骨折などで安静する期間ができると筋ジストロフィーの場合は筋萎縮が起こりやすく、転倒を防ぐ対策をしなければなりません。筋肉に負担をかけないよう太りすぎに注意し、急激に痩せた際には合併症などが疑われるため、体重は定期的にチェックしましょう。デュシェンヌ型では治療にステロイドを使う関係で感染症を起こしやすくなることから、手洗いの徹底や外出時のマスク着用などの感染対策が必要です。痰が取りにくい時や高熱や下痢、食事が摂取できない時は早めの病院受診をお勧めします。手術はもちろん、抜歯する予定がある場合は実施する医師や歯科医師に病気を伝えるとともに主治医に相談しましょう。

余命を左右する合併症はゆっくり進行し気づきにくいため、早期発見や病気の進行を抑えるためにも、定期的な専門の医療機関の定期受診も大切です。

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ALSも治らない

残念ながら現在のところ完治させる治療法はありません。

しかし病気の進行を遅らせる飲み薬(リルゾール)や点滴(エダラボン)での治療法があります。呼吸困難症状にはマスク型の人工呼吸器の使用や病状によっては気管切開をして専用の器具を装着し、人工呼吸器で呼吸を補助するのです。人工呼吸器を使わない場合は発症から2〜5年で亡くなりますが、中には人工呼吸器なしに10数年生きているケースもあり、個人差は大きいといえます。

病気による体重減少は病状を悪化させることが分かっており、対策としては飲み込みにくさの程度などから、飲み込みやすい形状や柔らかさの食事や胃ろうを造って流動食を注入するなどの方法です。話すのが難しくなってくるとコミュニケーションを取るための新たなコミュニケーションツールが必要となります。筋肉や関節の痛みには毎日のリハビリテーションが大切です。

筋ジストロフィーとALSはどちらも難病

筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)はともに難病で、完治させる治療法はありません。しかし合併症の早期発見・早期対処をすることで余命を長くすることも期待でき、症状に応じて栄養や呼吸管理等の対症療法などできることはたくさんあります。

筋ジストロフィーは遺伝的に筋肉が壊れやすく、再生されにくなった結果、筋肉がやせていく病気です。ジストロフィノパチー、肢帯型といった多くの種類があり、発症する性別や年齢に違いがあります。ALSは筋肉がやせていきますが、運動ニューロンが変性・消失する進行性の神経の病気です。知恵袋のベストアンサーはおおよそ正解ですが、個人差が大きい部分があります。

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雑学

簡単でわかりやすい!筋ジストロフィーとALSの違いとは?知恵袋の回答は正しいのか?看護師ライターが詳しく解説

この記事では筋ジストロフィーとALSの違いについて、そして知恵袋の回答は正しいのかどうかについてみていきます。どちらも難病で筋肉が弱っていくという症状が共通しているが、実は違いがあるようです。
そんな2つの病気について看護師Webライターの近野チカと一緒に解説していきます。

ライター/近野チカ

筋ジストロフィーとALSの患者に会ったことはないが知識はある、看護師webライター 。

筋ジストロフィーとALSの違いとは?

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筋ジストロフィーとALSはともに筋肉がやせていく症状がありますが、同じ筋肉の病気ではありません。違いを詳しくみていきましょう。

筋ジストロフィーとは指定難病で遺伝性筋疾患

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人間の筋肉は約180日で半分が生まれ変わります。筋ジストロフィーは遺伝的に筋肉の再生・維持に必要な遺伝子の変異があるために、筋肉が壊れやすく、再生されにくくなった結果、筋肉がやせていく病気です。

筋肉には骨格筋(骨についており体を動かしたり、姿勢を保つ)、心筋(心臓の筋肉)、平滑筋(内臓や血管の壁に筋肉で緊張や収縮で内臓や血管の働きを維持)の3種類がありますが、この病気では自分の意思で動かせる随意筋である、骨格筋に症状が出ます。筋ジストロフィーにはいくつも種類があり、発症する性別や年齢などに違いがあるのが特徴です。

筋ジストロフィーの病型は主に7つ

ジストロフィノパチーはデュセンヌ型(DMD)、ベッカー型(BMD),、女性ジストロフィノパチーの総称です。女性でもまれに発症します。肢帯型(LGMD)は遺伝形式で1型と2型とあり、日本では1型は少ないです。先天性(CMD)は、出生時から筋力・筋緊張低下がみられる筋ジストロフィーの総称で、福山型やインテグリンα欠損型など多くの病型があります。

顔面肩甲上腕型(FSHD)は、筋ジストロフィーの中では罹患率が高いもので発症年齢は0〜65歳と幅広く、症状の進行はゆっくりで経過は良好です。筋強直性は握った手がすぐに開かないなどの筋強直現象、筋力低下、心臓など全身の合併症が起こる特徴があります。

エメリー・ドレフェス型は幼少期に発症し、比較的ゆっくり筋力低下が起き、関節が固まるほか、心臓の異常が主な症状です。眼咽頭型は45歳以降に発症し、顔や足の筋力低下がみられます。

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