歴史の授業で習った言葉に小作制度があるな。関連して「小作人」と「地主」という言葉も出てきたはずです。昔話なんかでも「小作人」が「地主」に頭が上がらない様子が描かれていたりするな。ところでこの「小作人」や「地主」という言葉を理解している人はどれくらいいるのでしょうか。
今回は「小作人」と「地主」の違いについて、おおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

小作人と地主の違い

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小作制度とは農民が自分の土地を持たず、土地を所有者から借りて農作物の生産に従事する制度のこと。日本では古くから取り入れられた制度ですが、実体的には農奴制だったと言えます。

農奴制とは反自由民の農民が領主に隷属することで、土地を分与される代わりに生産物や地代を納入すること。今回はそんな小作制度の登場人物である「小作人」と「地主」の違いについて解説していきます。

小作人:土地を借りて耕作する農民

「小作人」は土地を所有者から間借りして耕作する農民のこと。農村使用人とも言える立場です。「小作人」は農産物から収入を得て、そこから租税額と地代(土地の貸付料)を足した小作料という料金を上納していました。職業選択や転住の自由が実質的にないため、諸外国では農奴として認識された下層身分です。

地主:土地の所有者

「地主」とは土地の所有者という意味で、現代でも不動産関係でよく聞く言葉ですね。土地を貸し付けて、それで得た地代から収入を得るのが「地主」。小作制度においては「小作人」に土地を貸し付けて、生産物や地代を上納させていました。

基本的に貴族や役人、武士や寺社などの荘園領主など高い身分の人が「地主」でした。基本的に農民の身分では多くの私有地を持つ豪農でなければなれません。

小作人と地主の歴史

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東西を問わず封建制度下であれば「小作人」に類する身分が存在していました。封建制度とは土地を介した主従関係に基づく社会構造のこと。

日本では古代から江戸時代まで封建制度が存在していたので「小作人」が存在する期間も長かったと言えるでしょう。また明治時代の地租改正を経ても「小作人」は相変わらず存在していました。ここでは日本における「小作人」と「地主」の歴史を解説していきます。

\次のページで「地主は変わっても小作人は搾取され続けた」を解説!/

地主は変わっても小作人は搾取され続けた

大和朝廷が全国を治めていた時代は、当然ながら朝廷や貴族が「地主」の立場で「小作人」を搾取します。その後朝廷の力が弱まると、武士や寺社が「地主」に。江戸時代に村役人や豪商、庄屋など豪農が台頭してきても、「地主」と「小作人」という構図は変わりません。

さらに明治時代の地租改正により土地の所有者は重税がかけられることになりました。よって自分の土地を持っていた農民たちも土地を手放し「小作人」となることが多くなりました。

戦後GHQにより農地改革が実施された

太平洋戦争で日本が敗北すると、GHQによる農地改革が進められました。その理由は「地主」と「小作人」という関係性が軍国主義に加担したとみなされたからです。「地主」が「小作人」に逆らえないという構図は「戦争に協力しろ」という命令に逆らえないことにつながります。

現代でも上下関係が絶対で自由を認めない企業体質や部活動の雰囲気を封建的と表現しますが、GHQはこの封建的な構図こそ軍国主義推進の一因だったと判断したのです。

小作人は地主から解放された

農地改革ではGHQの指示により日本政府が「地主」から強制的に土地を買い上げました。そして「小作人」に安く売り渡したのです。これにより農民は自立することができ、「地主」と「小作人」という封建的な主従関係が崩壊しました。農村の民主化が進んだとも表現できるでしょう。

小作人は土地を借りて耕作する、地主は土地を貸して収入を得る

ここまで「小作人」と「地主」の違い、そして日本における「小作人」と「地主」の違いについて解説してきました。日本においては戦後になってやっと「小作人」という被害者はいなくなったんですね。

現代では発展途上国の農村において先進国の企業による搾取が横行しています。近年では耕作機材や技術、自社ブランドや販売経路など、発展途上国の農村にない要素を背景に、不利な条件で農民を使役していることが浮き彫りに。土地を貸していなかったとしても、これは現代の小作制度と呼べるような状態です。このような搾取構造撤廃のため、フェアトレード(公正な貿易)という概念が普及しつつあることは良い傾向だと言えるでしょう。

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3分で簡単にわかる小作人と地主の違い!農地改革って何?農奴制や封建制との関係も雑学好きライターがわかりやすく解説


歴史の授業で習った言葉に小作制度があるな。関連して「小作人」と「地主」という言葉も出てきたはずです。昔話なんかでも「小作人」が「地主」に頭が上がらない様子が描かれていたりするな。ところでこの「小作人」や「地主」という言葉を理解している人はどれくらいいるのでしょうか。
今回は「小作人」と「地主」の違いについて、おおつけと一緒に解説していきます。

ライター/おおつけ

現役システムエンジニア兼ライター。前職は貿易商社の営業マン。知らない言葉は徹底的に調べるクセがあり、独自の単語帳を作っている。日々たくわえた広い知識を、わかりやすく紹介していく。

小作人と地主の違い

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小作制度とは農民が自分の土地を持たず、土地を所有者から借りて農作物の生産に従事する制度のこと。日本では古くから取り入れられた制度ですが、実体的には農奴制だったと言えます。

農奴制とは反自由民の農民が領主に隷属することで、土地を分与される代わりに生産物や地代を納入すること。今回はそんな小作制度の登場人物である「小作人」と「地主」の違いについて解説していきます。

小作人:土地を借りて耕作する農民

「小作人」は土地を所有者から間借りして耕作する農民のこと。農村使用人とも言える立場です。「小作人」は農産物から収入を得て、そこから租税額と地代(土地の貸付料)を足した小作料という料金を上納していました。職業選択や転住の自由が実質的にないため、諸外国では農奴として認識された下層身分です。

地主:土地の所有者

「地主」とは土地の所有者という意味で、現代でも不動産関係でよく聞く言葉ですね。土地を貸し付けて、それで得た地代から収入を得るのが「地主」。小作制度においては「小作人」に土地を貸し付けて、生産物や地代を上納させていました。

基本的に貴族や役人、武士や寺社などの荘園領主など高い身分の人が「地主」でした。基本的に農民の身分では多くの私有地を持つ豪農でなければなれません。

小作人と地主の歴史

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東西を問わず封建制度下であれば「小作人」に類する身分が存在していました。封建制度とは土地を介した主従関係に基づく社会構造のこと。

日本では古代から江戸時代まで封建制度が存在していたので「小作人」が存在する期間も長かったと言えるでしょう。また明治時代の地租改正を経ても「小作人」は相変わらず存在していました。ここでは日本における「小作人」と「地主」の歴史を解説していきます。

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