今回は健康診断でおなじみの「バリウム」がテーマです。

バリウムは元素番号56の金属元素です。バリウムと聞いて思い浮かぶのが健康診断、健診でしょう。健診では胃カメラや内視鏡によって体内が調べられる。そしてX線検査ではバリウム(硫酸バリウム)を飲む必要がある。それはなぜか?今回はバリウムの性質や使い道について学ぶ。解説は周期表マニアな科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校は化学部、大学は工学部化学系卒の元素や周期表が好きな科学館職員。健康診断では採血が苦手。精密検査がないか健診結果に毎回ドキドキしている。

そもそもバリウムって何?

Barium unter Argon Schutzgas Atmosphäre.jpg
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今回のテーマはバリウム。名前は知っているけれどどんな元素か知らない人も多いでしょう。そこで、バリウムがどのような元素なのかから解説していきます。

周期表から見るバリウム

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バリウムがどのような元素なのか周期表から見てみましょう。バリウムは周期表を見ると元素番号56の金属元素で、アルカリ土類金属に分類されます。アルカリ土類金属と言えば、ストロンチウム(Sr)やラジウム(Ra)がありますね。バリウムの語源はギリシャ語の「重い(barys)」。これはバリウムの密度が3.51g/cm3とアルカリ土類金属にしてはバリウムが重いからです。ただし、金属としては軽い方であるため、軽金属に分類されています。

アルカリ土類金属についてはこちらの記事を読んでくださいね。

バリウムの見た目や性質

バリウムは銀白色の柔らかい金属です。空気中では酸化されやすく、徐々に酸化されて白色の酸化被膜に覆われてしまいます。炎色反応は緑色を示す、というのもバリウムのポイントです。

バリウムは重晶石という鉱物に含まれて存在しています。重晶石は地殻に豊富に含まれていて、最も生産が多いのは中国。生産量の半数以上は中国のもので、その後にインド、モロッコ、アメリカと続きます。バリウムは酸化されやすく単体はすぐに酸化してしまうため、金属のバリウムはこの重晶石から抽出するのです。

バリウムの歴史

1774年、軟マンガン鉱に新しい元素が含まれていることが発見されました。そして1776年に酸化バリウムの分離に、1808年にバリウムの単離が成功します。バリウムの単離に成功したハンフリー・デービー。デービーはナトリウムやカリウムなどの元素を発見したイギリスの化学者です。

バリウムの用途

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健康診断でおなじみながら実は毒性のあるバリウム。健診で飲む硫酸性バリウムは水に溶けづらいため影響がないものの、可溶性のバリウム化合物は有毒です。バリウムが体内に入ると不整脈や筋力低下、呼吸困難、麻痺などを引き起こします。そのため、炭酸バリウム( BaCO3 )は殺鼠剤として用いられているのです。

先ほどバリウムの炎色反応が緑、と解説しましたね。そのため硝酸バリウム (Ba(NO3 )2)は花火で緑の色を発色するために使われます。一方、クロム酸バリウム(BaCrO4は黄色の顔料として用いられているのです。

\次のページで「炎色反応、これだけは覚えて!」を解説!/

炎色反応、これだけは覚えて!

炎色反応、これだけは覚えて!

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ここで、炎色反応のおさらいです。炎色反応は簡単に説明すると「金属元素を燃やすと特定の色を示すこと」。上の表にある元素だけでもしっかりと覚えてくださいね。

なぜ健康診断でバリウムを飲むの?

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健康診断で飲むのは硫酸バリウムです。硫酸バリウムはX線を通過しません。そのため、レントゲンや消化管造影検査の際に造影剤として使われています。ところで、そもそもレントゲンとはいったいどんな仕組みなのでしょうか?

レントゲンの仕組み

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レントゲンはX線を体に照射すると体を通り抜けます。と言ってもX線は体の中全てを通り抜けられるわけではありません。骨・臓器・筋肉などその組織を構成する元素の種類や密度によって、その通り抜けやすさは異なります。そのため、X線とフィルムの間に人が立つと体を通り抜けたX線が影となって白黒写真を撮ることができるのです。

骨折したとき、レントゲンを撮ると骨が白く見えますね。これは骨の主成分であるカルシウムがX線を通しづらい元素だからです。

レントゲンとバリウム

バリウムはカルシウムと同じX線を透過しづらい元素です。そのためバリウムなどの造影剤を飲むと消化器の表面に付着し、レントゲンを撮ると、レントゲン写真にコントラストができます。実際に骨折したときやドラマなどで骨などのレントゲンを見たことがある人もいるでしょう。白い部分がX線を通しづらいところなのです。

さて、飲んだバリウムは食道・小腸・大腸・十二指腸などの消化管を通過するときに粘膜に付着します。そのおかげで、臓器の様子をはっきりとレントゲン撮影できるのです。

硫酸バリウムってどんなもの?

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硫酸バリウムは白色の粉末で、水に溶けにくい物質です。においや味はありません。バリウムの化合物は基本的に劇物ですが、硫酸バリウムはとても安定していてバリウムイオンになりづらいことから劇物に指定されていません。硫酸バリウムはX線の造影剤の他、医薬品や化粧品、塗料や印刷インキなどとして使われています。

\次のページで「バリウム検査の流れ」を解説!/

バリウム検査の流れ

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バリウム検査はまず発泡剤によって胃を膨らませます。膨らませないと、胃はしわしわで異常を発見することができないからです。そのため、バリウム検査の時はゲップが出ないよう注意しなければいけません。ゲップをしてしまうと胃がしぼんでしまうため、発泡剤を飲むところからやり直しとなってしまうからです。

そして膨らんだ胃に造影剤が付着して胃の様子がX線によって見えるようになり、胃や食道の異常がないか調べる事ができるようになります。

出すまでが健診!バリウムはしっかり排出!

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健診に必要なバリウムですが、X線の撮影が終わった後はできるだけはやく出し切る必要があります。バリウムが残ってしまうと水分を吸って便を固くしてしまい、最悪の場合は腸閉塞などの病気を引き起こすこともあるのです。そのためバリウム検査は以下の流れがセットとなっています。バリウムを飲む検査の流れは次の通りです。

1.発泡剤とバリウムを飲む
2.X線を撮影する
3.下剤を飲んで白いバリウム便を出す

病変を発見!バリウムで消化器がくっきり撮れる!

健診で飲むバリウム。その目的は胃の表面に付着させ、X線によって内部の様子を撮影するためです。この時に胃の中に食べ物があると撮影の邪魔になるため、健診の前は食事を控える必要があります。健診で飲むものでありながら実は毒性が高く、化合物によっては殺鼠剤などとして使われているバリウム。また、花火や顔料として人の目を楽しませてくれています。

ちょっと面倒な健診。しかし、定期的に健診を受けることで、自分では気付かない体の不調を見つけることができます。毎回しっかりと受診しましょうね。

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3分で簡単にわかる!バリウムとはどんな元素?健康診断でおなじみの元素を周期表マニアの科学館職員が詳しく解説

炎色反応、これだけは覚えて!

炎色反応、これだけは覚えて!

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ここで、炎色反応のおさらいです。炎色反応は簡単に説明すると「金属元素を燃やすと特定の色を示すこと」。上の表にある元素だけでもしっかりと覚えてくださいね。

なぜ健康診断でバリウムを飲むの?

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健康診断で飲むのは硫酸バリウムです。硫酸バリウムはX線を通過しません。そのため、レントゲンや消化管造影検査の際に造影剤として使われています。ところで、そもそもレントゲンとはいったいどんな仕組みなのでしょうか?

レントゲンの仕組み

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レントゲンはX線を体に照射すると体を通り抜けます。と言ってもX線は体の中全てを通り抜けられるわけではありません。骨・臓器・筋肉などその組織を構成する元素の種類や密度によって、その通り抜けやすさは異なります。そのため、X線とフィルムの間に人が立つと体を通り抜けたX線が影となって白黒写真を撮ることができるのです。

骨折したとき、レントゲンを撮ると骨が白く見えますね。これは骨の主成分であるカルシウムがX線を通しづらい元素だからです。

レントゲンとバリウム

バリウムはカルシウムと同じX線を透過しづらい元素です。そのためバリウムなどの造影剤を飲むと消化器の表面に付着し、レントゲンを撮ると、レントゲン写真にコントラストができます。実際に骨折したときやドラマなどで骨などのレントゲンを見たことがある人もいるでしょう。白い部分がX線を通しづらいところなのです。

さて、飲んだバリウムは食道・小腸・大腸・十二指腸などの消化管を通過するときに粘膜に付着します。そのおかげで、臓器の様子をはっきりとレントゲン撮影できるのです。

硫酸バリウムってどんなもの?

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硫酸バリウムは白色の粉末で、水に溶けにくい物質です。においや味はありません。バリウムの化合物は基本的に劇物ですが、硫酸バリウムはとても安定していてバリウムイオンになりづらいことから劇物に指定されていません。硫酸バリウムはX線の造影剤の他、医薬品や化粧品、塗料や印刷インキなどとして使われています。

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