今回のテーマは樹氷と霧氷の違いについてです。どちらも自然が豊かな地域で、冬などの限られた季節に見られる自然現象です。樹氷は、樹木に氷や雪が分厚くまとわりついてできるもので、スノーモンスターやアイスモンスターの異名を持つ。
一方の霧氷はたくさんの水滴、いわば「雲」が樹木や植物にまとわりついて凍結したもので、これも氷の花のように見えて美しい。雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

樹氷と霧氷の違いをざっくり解説

まず最初に、樹氷と霧氷の違いについてざっくり説明しましょう。樹氷と霧氷は、どちらも冬の寒い日に山や高原で見られる美しい自然現象ですが、でき方や特徴は異なります。

ざっくり言えば、霧氷は「雲」のような状態になった空気中の水分が、樹木や植物にくっついたもの。そして、その霧氷が何重にも積み重なって、さらに吹雪などが加わり独特の形になったものを樹氷と呼びます。

樹氷:付着した水分が凍結した樹木

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樹氷とは、過冷却された霧や雲の水滴が樹木などにぶつかり、そのまま凍りついた白くてもろい氷のことです。もしくは、そのような形で氷が付着した樹木そのものを樹氷と呼ぶこともあります。樹木が完全に樹氷や雪に覆われた状態はとても異様なことから、与えられたもうひとつの名前が「スノーモンスター」です。

樹氷は山地でよく見られる現象で、特に、山形と宮城県の県境にある蔵王山のものは聞いたことがある人も多いでしょう。風に向かって羽毛状に成長することが多く、風が強いほど風上側に伸びていくことがよくありますが、この形状を指して「海老の尻尾」と呼ばれることも少なくありません。

霧氷:着氷現象の一種

霧氷とは、専門的な言葉を使うと「着氷現象」の一種です。空気中の水分が氷点下の環境で樹木などに付着すると、氷の結晶の構造がはっきりした氷層を作り出すことがあります。これが霧氷で、樹氷もこれの一種です。

霧氷には樹霜、粗氷、樹氷の三つの種類があります。樹霜は、空気中の水蒸気が低温によって針状や板状の結晶になるものです。そして前項で説明した通り、水分が樹木に吹き付けられてできるのが樹氷ですが、この時にできる氷の層の色が半透明だと粗氷、白色だと樹氷に分類されます。粗氷と樹氷は区別が微妙であることが分かるでしょう。

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樹氷と霧氷の形の違いは?

ここまでで、樹氷と霧氷の違いを解説しました。次に、双方の形の違いを見ていきましょう。霧氷は花のような形になって、まるで樹木に白い花が咲いたように見えます。そこへ吹雪などが加わって、霧氷の上にさらに氷の層が重なっていくと「樹氷」となるでしょう。

樹氷は氷と雪が何層にも重なってできるので、樹木に何層もの氷がまとわりついた様は、巨大な不定形の「モンスター」のように感じられるでしょう。

樹氷:白く覆われる

樹氷は羽毛状や海老の尻尾状になることが多く、枝や葉の形を残したまま白く覆われます。意外ともろく、手で触ると簡単に崩れてしまうでしょう。特に蔵王では樹氷が高さ10メートル以上にもなることもあり、風上側に向かって伸びた樹氷が重なり合って怪物のような形を作るのです。

樹氷は雪や風の中に増えた水分が枝や葉にぶつかり、凍ることで着氷し、さらに着氷した氷の隙間に吹雪などが入り込みます。そこへさらに雪がくっつき、風上に向かって成長して……といったステップを繰り返す中で、形状も決まっていくことになるでしょう。

霧氷:花びらや葉っぱの形など

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霧氷の形状は、水分量や気泡の含有率によって異なります。水分量が多くて気泡を多く含むと、白色で脆い樹氷になりますし、反対だと半透明で硬い粗氷となるでしょう。

また、霧氷は粒同士が融合して大きな氷の塊を形成することもあります。この場合、塊の中心部は空洞になっていることが多く、花びらや葉っぱのような形に見えることも珍しくありません。さらに、風の影響で樹木の一方向だけに付着すれば違った形状となり、霧氷はさまざまな形に変化することが分かるでしょう。

霧氷の形状を科学的・数学的に解析する研究も行われており、例えば、霧氷の成長過程を微分方程式や数値シミュレーションでモデル化するなどの研究などがあります。

樹氷と霧氷ができる条件は?

ここまでで、樹氷と霧氷の特徴や色、そして硬さの違いを解説しました。次に、樹氷と霧氷ができる条件の違いを見ていきましょう。

樹氷は、マイナス5度以下の低温の状況で、雪や霧が木に付着して凍ることでできます。そのため、高山や北国など寒冷な地域で多く見られるでしょう。一方、霧氷はマイナス2~10度の温度差がある場所で水滴が木に付着して凍ることでできるため、夜間や早朝など、日中よりも気温が下がる季節などに見られます。

樹氷:マイナス5度以下の気温

樹氷ができる条件は、気温がマイナス5度以下で、風が強く湿度が高い場所です。そうして付着した氷の結晶は白色不透明で、山形県や青森県ではアオモリトドマツという針葉樹がいわば樹氷の「本体」となります。厳しい冷え込みと毎秒10メートルを超す強い西風が続くと、アオモリトドマツの森は一気に樹氷の森となるのです。

\次のページで「霧氷:マイナス2~10度の温度差」を解説!/

霧氷:マイナス2~10度の温度差

霧氷の発生条件は、一般的には「氷点下であること」と「湿度が高いこと」だとされます。具体的には気温がマイナス2~10度の間に霧氷は発生しやすく、空気中の水蒸気が凍結するのです。この状態がさらに長く続き、加えて激しい吹雪にさらされると、霧氷がいわば膨らむように「成長」して樹氷となります。

樹氷と霧氷が有名な場所は?

ここまでで樹氷と霧氷について、特徴や外観、そしてできる条件の違いを解説しました。最後に、樹氷・霧氷が有名な場所や観光地について見ていきましょう。

樹氷は蔵王などの高山地帯や、もしくは北海道などの寒冷地域に多く分布しており、冬季に観光客を魅了してくれます。一方、霧氷は乗鞍高原などの中山地帯や長野県などの内陸地域に多く分布しており、秋から春にかけて観賞できるでしょう。

樹氷:蔵王山など

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樹氷が有名な観光地はいくつかありますが、山形・宮城にまたがる蔵王山のものは多くの人に知られています。この、蔵王の樹氷は山形県の重要な観光資源のひとつで、「スノーモンスター」「アイスモンスター」などと呼ばれているのは前述の通りです。

また、青森県の八甲田山で見られる樹氷も有名で、特にアオモリトドマツにできる樹氷は巨大で幻想的な姿だと言えるでしょう。こちらの樹氷の見頃は1月から2月にかけてで、八甲田ロープウェーで鑑賞することが可能です。

ただし、樹氷が見られるのは冬季間に限られるため、悪天候だと観賞できないことも珍しくありません。観光に行く場合は事前に天気や気温の情報をチェックしておきましょう。

霧氷:乗鞍高原など

乗鞍高原は、日本百名山の一つである乗鞍岳の山麓に広がる高原で、冬季は雪上車やスノーシューで霧氷が鑑賞可能です。霧氷は山頂付近のダケカンバやミズナラなどの樹木に付着し、風によってさまざまな形に変化します。

次に北海道の更別村で見られる霧氷は、猿別川の水面から立ち上る水蒸気が氷となり草木に付着するものです。マイナス20度以下の早朝という状況でしか見られない幻想的な世界を味わえるでしょう 。

そして裏磐梯は、福島県の磐梯山の西側に広がる自然豊かなエリアです。霧氷は五色沼や磐梯吾妻スカイライン沿いの樹木に付着し、青空や湖面とのコントラストが人気。夜間はライトアップされて幻想的な雰囲気を堪能できます。

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霧氷が付着した樹木が樹氷になる

霧氷は、空気中の水分が過冷却されて樹木に付着し、まるで氷の花のような形になる現象です。これが樹木に付着すると樹氷と呼ばれますが、樹木全体に氷が付着して「氷だるま」のような形になったものを樹氷と呼ぶこともあります。

山形・宮城県の県境にある蔵王山は樹氷が有名で、冬季は大量の樹氷が並んでいる光景が見られるでしょう。これらは「スノーモンスター」という異名でも有名ですが、近年は温暖化の影響で減少しつつあります。

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簡単でわかりやすい!樹氷と霧氷の違いは?特徴や発生条件・有名な観光地も雑学好きライターが詳しく解説

樹氷と霧氷の形の違いは?

ここまでで、樹氷と霧氷の違いを解説しました。次に、双方の形の違いを見ていきましょう。霧氷は花のような形になって、まるで樹木に白い花が咲いたように見えます。そこへ吹雪などが加わって、霧氷の上にさらに氷の層が重なっていくと「樹氷」となるでしょう。

樹氷は氷と雪が何層にも重なってできるので、樹木に何層もの氷がまとわりついた様は、巨大な不定形の「モンスター」のように感じられるでしょう。

樹氷:白く覆われる

樹氷は羽毛状や海老の尻尾状になることが多く、枝や葉の形を残したまま白く覆われます。意外ともろく、手で触ると簡単に崩れてしまうでしょう。特に蔵王では樹氷が高さ10メートル以上にもなることもあり、風上側に向かって伸びた樹氷が重なり合って怪物のような形を作るのです。

樹氷は雪や風の中に増えた水分が枝や葉にぶつかり、凍ることで着氷し、さらに着氷した氷の隙間に吹雪などが入り込みます。そこへさらに雪がくっつき、風上に向かって成長して……といったステップを繰り返す中で、形状も決まっていくことになるでしょう。

霧氷:花びらや葉っぱの形など

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霧氷の形状は、水分量や気泡の含有率によって異なります。水分量が多くて気泡を多く含むと、白色で脆い樹氷になりますし、反対だと半透明で硬い粗氷となるでしょう。

また、霧氷は粒同士が融合して大きな氷の塊を形成することもあります。この場合、塊の中心部は空洞になっていることが多く、花びらや葉っぱのような形に見えることも珍しくありません。さらに、風の影響で樹木の一方向だけに付着すれば違った形状となり、霧氷はさまざまな形に変化することが分かるでしょう。

霧氷の形状を科学的・数学的に解析する研究も行われており、例えば、霧氷の成長過程を微分方程式や数値シミュレーションでモデル化するなどの研究などがあります。

樹氷と霧氷ができる条件は?

ここまでで、樹氷と霧氷の特徴や色、そして硬さの違いを解説しました。次に、樹氷と霧氷ができる条件の違いを見ていきましょう。

樹氷は、マイナス5度以下の低温の状況で、雪や霧が木に付着して凍ることでできます。そのため、高山や北国など寒冷な地域で多く見られるでしょう。一方、霧氷はマイナス2~10度の温度差がある場所で水滴が木に付着して凍ることでできるため、夜間や早朝など、日中よりも気温が下がる季節などに見られます。

樹氷:マイナス5度以下の気温

樹氷ができる条件は、気温がマイナス5度以下で、風が強く湿度が高い場所です。そうして付着した氷の結晶は白色不透明で、山形県や青森県ではアオモリトドマツという針葉樹がいわば樹氷の「本体」となります。厳しい冷え込みと毎秒10メートルを超す強い西風が続くと、アオモリトドマツの森は一気に樹氷の森となるのです。

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