今回のテーマは御幣(ごへい)と紙垂(しで)の違いについてです。神道の儀式で、白い紙がついた棒を、神官が振るのを見たことがある人も多いでしょう。あの道具全体が御幣で、棒についている紙が紙垂と呼ばれている。
もともと御幣は神への捧げものを指し、時代が下るにつれて棒の先に貴重品を挟んで捧げるようになったんです。それが今のようなスタイルになった経緯を、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

御幣と紙垂の違いをざっくり解説

まず最初に、御幣と紙垂の違いについてざっくり説明します。御幣とは古い言葉で神への捧げものを意味し、大昔は食べ物や農工具などの貴重品が捧げものとして用いられていました。

また紙垂は御幣や注連縄につける、独特の形に折り畳まれた紙のことで、色や折り方によって意味が異なります。御幣と紙垂は神道において重要な役割を果たしますが、その歴史や種類や用途などには大きく異なっているので注意が必要です。以下で詳しく見ていきましょう。

御幣:神への捧げもの

御幣は、神への捧げものである幣帛(へいはく)の一種で、代表的なものとして挙げられるのは稲・農工具・鏡・玉などです。奈良時代から平安時代にかけて、幣帛の一種として折り畳んだ布を串に挿んで捧げる形式が登場し、「幣挿木」と呼ばれたこれが御幣へと発展していくことになりました。

室町時代から江戸時代には布にかわって紙が用いられるようになり、細長く折った紙を両側へ垂らすスタイルも見られるようになります。これが次項で解説する「紙垂」の起源です。

紙垂:御幣につける紙

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紙垂は、御幣に付随する紙のことです。発祥は、奈良時代から平安時代にかけて登場した、折り畳んだ布を串(棒)に挿んで捧げると言うやり方でした。昔は、神聖性を表すために木の皮の繊維である木綿や麻も串に挿んで垂らしたと言われています。室町時代から江戸時代にかけて、布にかわって紙が用いられるようになったものが紙垂の原型です。

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御幣と紙垂の歴史の違いは?

ここまでで、御幣と紙垂の概要を解説しました。次に両者の歴史を見ていきましょう。はるか古代から御幣は日本に存在しており、神への奉納や祭祀に使われてきました。また、それ自体が本尊とされることも少なくありません。その御幣に紙垂を使うのは中世以降に発生したやり方で、その場合は穢れを祓う効果があるとされています。ただ、それ以前にも注連縄などで使われていました。

御幣:古代から存在した

御幣の歴史は、古墳時代から現代に至るまで長く続いています。古墳時代には、先にも述べた通り鉄製の武器や農工具のほか、最先端の織布技術を用いた布類などが奉納されました。これらの品々は、神々の霊魂が宿る依り代や象徴でもあったと言えるでしょう。

現在でも、地鎮祭や安全祈願祭などで御幣が使われることがあります。これは、もともと神様への感謝や敬意を表す捧げ物であった御幣が、日本史や文化の中で変化しながらも受け継がれてきた痕跡であると言えるでしょう。

紙垂:中世以降に発生した

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紙垂を御幣につける習慣は、先にも述べた通り中世以降に発生したと考えられています。室町時代から江戸時代にかけて御幣に紙が用いられるようになったのが起源です。

紙垂の断ち方や折り方にはいくつかの流派や形式があり、主なものに吉田流・白川流・伊勢流があります。注連縄の場合は、縄目に等間隔で挟んで付けますが、垂らす枚数については特に明確なルールはありません。二枚垂らすのを「二垂」、三枚垂らすのを「三垂」、四枚垂らすのを「四垂」と呼びます。

もしも神社を訪れたり神式の儀式を目にする機会があったら、紙垂の形や大きさに注意してみて下さい。

御幣と紙垂の種類は?

ここまでで、御幣と紙垂の歴史を解説しました。次に、両者の種類を見ていきましょう。御幣は武器・玉・鏡などさまざまなものがありますが、どれもその時代の貴重品だったことは共通しています。例えば現代でも、農村でこうした儀式を行う場合は、季節の旬の農産物が捧げられることが少なくありません。

紙垂は色や切れ込みの有無、折り方によりさまざまな種類があり、その種類によっていくつかの流派も存在していますが、神事の清浄や尊厳を表すものであることは同じです。

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御幣:武器・玉・鏡など

御幣の種類は、時代や文化によって変化してきました。奈良時代から平安時代にかけては、貴重品だった「布」が奉納されていたのが「紙」へと変化していったのも、紙がその時代の貴重品だったからに他なりません。

さすがに現代は、武器や玉や鏡などを神様に捧げることはなく、紙垂を挿した御幣そのものを奉納したりします。このように、御幣やそれを使った神への捧げものの習慣は、神への感謝や敬意を表す儀式として受け継がれていると言えるでしょう。現代なら何が捧げられるか考えるのも面白いかも知れません。

紙垂:色や折りごとに数種類ある

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紙垂の断ち方や折り方にはいくつかの流派や形式があり、主なものが先にも紹介した吉田流・白川流・伊勢流です。それぞれ、切り込みを入れるかどうかや折る回数などが異なっています。また、紙垂の色にも意味があるのが興味深いところです。例えば白色は清浄無垢を表し、赤色は生命力や活力を表します。また、金色は神聖さや豊かさを表すでしょう。

御幣と紙垂の用途の違いは?

ここまでで、御幣と紙垂の種類を解説しました。次に、両者の用途を見ていきましょう。御幣は捧げものとして祭壇や社殿に奉納されたり、依代として祭具や人形に付けられたりします。また、御神体として直接祀られることもあるでしょう。

一方、紙垂は穢れ祓いとして鳥居や注連縄に付けられたり、象徴として祭礼や行事に使われたりします。御幣自体が捧げものとしての用途があるのに対し、紙垂は捧げものの内容物そのものです。

紙垂については、捧げものの他にも、神から祝福された証として使われることもあります。その代表的な例が相撲の横綱が土俵入りする際に、綱につけられる紙垂です。これが付くことで、横綱の格式と神からの祝福が表現されます。

御幣:捧げもの・依代・御神体

御幣には、主に以下の三つの用途があります。まず神への奉納物として、神社や神棚に供えるのが最もオーソドックスな用途だと言えるでしょう。お祓いやお清めなどの神事では、御幣を振って周囲の穢れを取り除いたり、清浄な空間を作ったりします。

そして神様の依代として使われることも珍しくありません。依代とは神様が宿る物や場所のことですが、注連縄や社殿などがそれにあたります。例えば地鎮祭では、建物の四隅に御幣を立てて、その土地に宿る神様を招き寄せたり鎮めたりするでしょう。

さらに御幣もまた、御神体の一種として扱われることがあります。例えば有名な出雲大社では、本殿に鎮座する大国主命は「白い紙垂」そのものです。

紙垂:穢れ祓い・象徴

紙垂には、主に以下の二つの用途があります。まず「穢れ祓い」です。先述の通り紙垂には邪気などを祓う力があるとされています。

もうひとつは「奉納物の象徴として」です。かつてはその時代ごとの貴重品が捧げられましたが、現代はそうした貴重品の象徴として、かわりに紙垂を使って神への感謝や敬意を表明する形になっています。

こうした形で紙垂が使われている身近な例としては、お正月に飾る鏡餅が挙げられるでしょう。二段重ねの餅に柊や橙と一緒に紙垂をつけますが、これは神への奉納物としての意味があります。

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御幣は神式の儀式の用具・捧げもので、紙垂は御幣に挟まれた紙のこと

御幣は神道の儀式で使われる道具で、木の棒などが使われます。もともとは神への捧げものを指す言葉でした。御幣に差し込まれている、特殊な形に折り畳まれた紙が紙垂で、古くはここに、人間にとって貴重品だった布類などを挟んで捧げものとしていました。

現代は、神道のお祓いの儀式などで、神主などが用いる道具として目にすることが多いです。よってお祓いの道具というイメージが強いですが、本来は紙垂を含めた御幣全体が神への捧げものでした。

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雑学

簡単でわかりやすい!御幣と紙垂の違いは?歴史・種類・用途も雑学好きライターが詳しく解説

今回のテーマは御幣(ごへい)と紙垂(しで)の違いについてです。神道の儀式で、白い紙がついた棒を、神官が振るのを見たことがある人も多いでしょう。あの道具全体が御幣で、棒についている紙が紙垂と呼ばれている。
もともと御幣は神への捧げものを指し、時代が下るにつれて棒の先に貴重品を挟んで捧げるようになったんです。それが今のようなスタイルになった経緯を、雑学好きライター・ねぼけねこと一緒に解説していきます。

ライター/ねぼけねこ

法学部出身。某大組織での文書作成・広報部門での業務に10年以上従事し、IT・プログラミング分野の歴史にも詳しい。

御幣と紙垂の違いをざっくり解説

まず最初に、御幣と紙垂の違いについてざっくり説明します。御幣とは古い言葉で神への捧げものを意味し、大昔は食べ物や農工具などの貴重品が捧げものとして用いられていました。

また紙垂は御幣や注連縄につける、独特の形に折り畳まれた紙のことで、色や折り方によって意味が異なります。御幣と紙垂は神道において重要な役割を果たしますが、その歴史や種類や用途などには大きく異なっているので注意が必要です。以下で詳しく見ていきましょう。

御幣:神への捧げもの

御幣は、神への捧げものである幣帛(へいはく)の一種で、代表的なものとして挙げられるのは稲・農工具・鏡・玉などです。奈良時代から平安時代にかけて、幣帛の一種として折り畳んだ布を串に挿んで捧げる形式が登場し、「幣挿木」と呼ばれたこれが御幣へと発展していくことになりました。

室町時代から江戸時代には布にかわって紙が用いられるようになり、細長く折った紙を両側へ垂らすスタイルも見られるようになります。これが次項で解説する「紙垂」の起源です。

紙垂:御幣につける紙

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紙垂は、御幣に付随する紙のことです。発祥は、奈良時代から平安時代にかけて登場した、折り畳んだ布を串(棒)に挿んで捧げると言うやり方でした。昔は、神聖性を表すために木の皮の繊維である木綿や麻も串に挿んで垂らしたと言われています。室町時代から江戸時代にかけて、布にかわって紙が用いられるようになったものが紙垂の原型です。

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